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勇者?魔王?いいえ村人です。  作者: 蒼伊悠
序章
14/27

おまけ1 帰還

この話はおまけ的なものですね。次から主人公達は人間の街にいってるのでその間の出来事的なやつです。


 灰色の鱗に発達した二本の前足、地上戦に特化した竜種の一種である地竜。


 初めて地竜に出会った時は殺されかけた。こちらの攻撃は硬い防御力に阻まれて一切通じない。


 仕方ないと内面から攻撃して怯んでいる間に逃亡した。

 勝てない相手からは逃げまくった。生きるためにだ。



 1ヶ月もの間、ひたすら生きぬいた。

 モンスターの肉に食らいつき泥水を啜って喉を潤した。

 夜寝ることもままならず気づいたら短い時間でも休息を取れるようになっていた。


 そんな生活を続けている中で、地竜は何度も何度も襲ってきた。


 勝てないから逃げた。逃げて逃げて逃げまくった。


 だが、それも今日までだ。


 目の前にいる地竜に視線をむける。

 

 「燐火、雷華行くぞ」

 『うん! カイト! 今日こそあいつを殺そう』

 『ご主人様、油断はいけませんよ』

 頼もしく成長してくれた二人に魔力を渡す。


 「【雷化炎槍】」

 出現させた炎に雷電を纏わせる。

 それをただ目の前の地竜へと射出する。


 この技を地竜は見たことがない。最後に襲ってきた二週間前にはこの技はまだ未完成だった。


 だから、初見の技を己の鱗に絶対の自信を抱いている地竜がかわそうとしないのは分かっている。


 炎の槍は地竜に至る。


 『グオォォォ!!!』

 地竜は悲鳴をあげる。

 だが、遅い。炎の槍には雷の属性も付与されている。

 外側は熱し続けられて内側には雷電が走る。


 この技は当たった時点でアウトな技なのだ。


 槍に纏わせている電撃は散らない。

 炎の槍が残っている限りずっと効果を持続させる。


 痛みで悲鳴をあげ続ける地竜に向かっていく。

 地竜を貫く事は現状では残念ながらできない。

 ならば、ひたすら衝撃を与えて体内から壊すしかない。


 痛みに悲鳴をあげて俺に気づく事が出来ない地竜を思い切り拳で叩きつける。


 「ち、硬いな」

 衝撃が対して伝わってないのが拳から伝わってくる。

 ならばと、跳躍し地竜の頭へと拳骨の要領で拳を突きおろす。狙いは眉間。


 「【雷拳】」

 雷電を纏わせた拳で衝撃と雷を体内へと広がらせていく。

 一発では足りない。何発も何発も前足が発達がしているが故に頭に飛び乗った俺に対処できない地竜をひたすら殴打し続ける。


 何れだけ殴り続けたのだろう、気づけば地竜の頭が頭を垂れるように下がっていく。

 地竜はそのまま頭から地面に倒れる。

 度重なる雷電により絶命していた。



 「よし、これならそろそろ戻れる」

 竜種の地竜を倒せたのなら自分の中である程度満足はできる。

 課題も見つけたが、1ヶ月の成果としては上々だろう。


 「後は最後に課題をクリアしていけば帰れるな」

 地竜の尻尾を握り引きずっていく。最近見つけた水場で地竜の解体をしたかった。



 




 「ふーむ、はよ戻ってこんかの」

 洞窟内で人形状態のファフニールは退屈そうに呟いた。

 灰人を魔の森へと落としてから早3ヶ月、ファフニールは退屈していた。


 これは、ファフニールにとっても意外な程長い期間灰人が戻って来ないからだった。

 ファフニールの予想では一月もすれば灰人は戻ってくるの踏んでいた。


 しかし、蓋を開けてみれば3ヶ月もの間灰人は戻ってこない。

 ただ、死んだとは思っていない。灰人に加護を与えたファフニールは灰人の存在を確かに感じていた。


 それに、灰人ならば生き抜けると思っていたからこそファフニールは魔の森へと突き落とした。


 灰人を落としたのは森の中でもモンスターのレベルが低い箇所だった。実際は己の体の強化具合を見謝った灰人によって予定の地点からずれた為、初日から地竜がいる場所まで移動する事になっしまったが、それでもファフニールの見立てでは魔の森において灰人は厳しいながらも絶対に生き抜けないという事は無いほどの実力を灰人は持ってると判断していた。


 なんせ、灰人は初邂逅の時、確かにファフニールにダメージを与えた事実がある。


 竜種の頂点である龍のファフニールに対してダメージを与えた事実がある。



 それなのに灰人は戻ってきていない。その事に無事と分かりつつもファフニールは不安になっていた。


 灰人がいなければ自分はもうあの美味なるものを食べれなくなってしまうとファフニールらしい事で不安を抱いていた。



 「あやつは面白いからな。死なすのは惜しい。ふむ、致し方ない、我から顔を見せてやるか!!!」


 3ヶ月も生きているならご褒美に顔位見せてやるのも妻としての責務かとファフニールは決める。


 ついでに新たな植物を灰人に作ってもらってもそれはあくまでついでだともファフニールは心の中で思っていた。


 ファフニールが灰人に会いに行くと決心した時、ファフニールは自分に近づいてくる気配を察知した。


 その存在を感知したファフニールは頬を緩める。



 「あやつめ、やっと帰ってきおったな」



 


 


 


 「そういや、帰るのどれくらいぶりだっけ」

 俺は空を飛びながら燐火と雷華に尋ねる。

 毎日戦闘を繰り返していたら日付感覚が狂っていた。


 『うーーん、わかんない!! そんなことより! はやく帰ろー!!』

 『ご主人様、3ヶ月は経っていますよ』

 

 「おー、もうそんな経ってたか~」

 3ヶ月の間に光の玉から人間の姿になった二人は俺の周りを暢気に回っている。妖精とも云うべきサイズの二人は意外な事にファフニールに対して好意を持っているらしかった。


 どうやら死にそうな俺を助けたのがファフニールだと認識していたらしい。

 俺を殺しかけたのもファフニールなのだが、それは生物として戦闘は仕方ないとの事だった。


 

 そんな事考えている間にも洞窟の入り口へとたどり着いた。

 

 「ファフニールのやつはいるのかな」

 洞窟の入り口についたがファフニールの姿は見当たらない。

 ファフニールなら俺の存在はとっくに感知している筈だ。


 「いないなら、折角だし、折角だし俺が手料理でも振る舞いますかね」

 設備がないであろうが簡単な料理位ならば作れるはずだ。

 そう思って洞窟に入ろうとすると、此方に飛来してくるものがあった。


 ……あれは、尖った石か。


 「お迎えないと思ったらとんだイタズラしてくるな」

 飛来してきた先が尖った石を見切ってよける。

 面倒くさい事に一つではなくて幾つも幾つも石は飛んでくる。

 

 全部避ける事は簡単だ。

 だが、いちいち避けるのでは正直面倒くさい。



 「【炎爪】」

 腕に炎の爪を纏わせて腕を薙ぐ。

 一薙ぎで飛んできた石は全て弾かれる。



 「ほう、よくぞ見きったな。しっかりと鍛練に励んできたようじゃの」

 快活に笑いながら歩いて来たのは漆黒の龍ファフニールだ。

 久しぶりに顔を見ると懐かしさと嬉しさが沸いてくる。

 顔を合わせた時間は多くないのに不思議だ。



 「どうじゃ、成果の程は」

 「さぁ? 頑張ったと思うけど如何せん俺は世間知らずだからな」

 半年前のクラスメイトよりは強いと断言出来るがソフィアさん達やこの世界の住民の実力がどれ程なのかは把握していない。


 眼鏡男がゴブリンを瞬殺した時の芸当は同じ様に出来る事くらいの実力はついたと思っているが。


 「胸を張るがよいわ! お主が生きてきた3ヶ月は生半可な物ではないはずじゃ。お主は間違いなく強くなっておる。流石我の夫じゃ」

 

 すっかり忘れていた。そういえばファフニールは俺と夫婦になると言っていたのだった。


 

 「それより、ほれ! 我に渡すものがあるじゃろ」

 ほれ、とファフニールは手を差し出してくる。

 何の事だと惚ける事はしない。戻って来るときに要求させるのはわかっていた。俺は森で生活している間に育てた作物を差し出す。


 俺が渡した赤い果実をファフニールはじろじろと見る。


 「これは、なんなんじゃ?」

 「それはベリーナイトといって夜の間に実をつける果実だ。甘酸っぱくて美味しいぞ」

 幸い時間は3ヶ月もあった。時間をかけて育てる作物等にも手を出せる事もできた。

 それに、魔の森には様々な効能がある植物等もあったから色々と研究しまくってた。3ヶ月も時間がかかったのもそれが一つの理由だったりする。



 「ふむ、では食してみるとしよう」

 ファフニールは真っ赤に熟した果実を薄ピンクの小さな唇をめいいっぱい開いて一口で含む。


 一噛みで口内を果汁で溢れさせるとファフニールの瞳がキラキラと輝く。


 「なんじゃ~これは、甘くて酸っぱくて美味しいのじゃ~」

 頬に手を添えて蕩けたように口をニヤニヤと弛ませる。


 「カイトぉ~、お主本当にすごいのじゃ~。我、もうこんなの食べたらお主なしでは生きていけないのじゃあ~」

 しなを作ったファフニールがもたれ掛かってくる。

 農民になれば龍を使役出来るんですね。と現実逃避気味に考える。鼻孔をくすぐるファフニールの臭いには気づかない不利をする。



 3ヶ月間森で生死をかけた生活をしてれば自然と色々と溜まるものはあるわけで、こんな幼い少女にさえ女を感じてしまう。


 このままではまずい。


 「ん? お主劣情を催しておるのか?」

 背が低いくせに俺の頭を撫でて繰る。

 やばい、モンスターが溢れる日常に頭を撫でる優しさは胸に染みてしまう。


 急に体から力が抜けそうになってくる。


 「よいんじゃぞ。今のお主を見れば一生懸命頑張ったのは伝わってくるのじゃ、いいこじゃの。ご褒美をあげるのじゃ。我に身を任せるのじゃ」


 小さいくせに慈愛に溢れる微笑みを浮かべたファフニールは俺の手を握って洞窟の中へと引っ張っていく。


 

本日後2話あげたいけど眠いー!!

おまけがもう1話と、二章の1話投稿しようと思ってます。


感想、評価、ブクマお待ちしております。

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