10:神
短いです。
間話にしようかなとも思いましたがやめました。
一面真っ白い空間。
どこまでも果てしなく続くこの空間に生物は一匹たりともいない。
いるのは神と呼ばれるなにかだけだった。
『中々に面白い事態になっているようだ』
神は異世界を視ながら笑っていた。
下界に干渉できない神にとって、今回起きた、地球と異世界が繋がるのは偶々の事とはいえ、暇潰しにはもってこいの事案だった。
数千年から数万年の間に必ず一度は次元と次元同士は重なりゲートを作ってしまう。その際にバランスを取るための役割で産まれた神は今回の異世界へと赴く者達を思い浮かべる。
『今回の者達は、過去の者達と比較しても面白い』
彼等の存在が後にどう世界に及ぼすのか、この神は知らない。先を見通す権限を持っていない神は、だからこそ何でも送り出してしまう。
例え、世界を破滅させようと思惑している者がいたとしてもだ。
『おや、彼は一人になってしまったのか?』
神が視る先では、漆黒の龍の元に一人の少年が取り残された所だった。
御手洗灰人という名の少年は神にとって最も面白い者の一人であった。
神でさえも想像しなかった方法のスキルを御手洗灰人はしてみせた。
それが、村人スキルの一つ、農民スキルだった。
何処にでもありふれたスキル。
村人で畑作業に準ずる者の殆どが最終的には手にしているスキルを御手洗灰人は選んだ。
レベルを最高と云われている10まで上げても対した効力を発揮しないスキル。そもそも、村人で10までスキルレベルを上げるのはまず不可解である中でも、上げてもレベル1の勇者のスキルにスキルとしての強さも、稀少さも劣るスキルを御手洗灰人はある考えを元に取得した。
農民スキルには様々な効果がある。農民スキルを取得している者としていない者とで同じ作物を育てたとき、前者の方がほんの僅かだが美味しくできる。余程舌に肥えた者でないと分からない程の差異が生まれる。
レベル10の農民スキルとスキル無しであれば誰でも分かるほどの差異が生まれる。
何故なのか、人間には知られていない事実を神は知っている。
勿論同じ作物でも元々の個別個別で僅かな差異はある。
それに、加えて作物に適した天気等も理由の一つとしてある。
農民スキルが高い者になると自然が味方してくれる。
御手洗灰人はこの事に目をつけた。
自然が味方してくれるならば、自然エネルギーの塊である精霊も味方してくれるのではないか。
神はそれに賛同した。
世界には自然エネルギーが満ちている。精霊や自然に溢れている自然エネルギー。龍脈や霊脈と呼ばれる地上から地下に眠る自然エネルギーがある。植物が育つと共に地下の自然エネルギーが植物に宿る。
空間にただよう自然エネルギーは今まさに地下から昇ってくるであろう自然エネルギーを引き上げようとする性質がある。
だからこそ、高レベルの農民スキル保持者が作物を作る際には自然が味方する。自然エネルギーがうまく地下から吸いとる事ができた植物程美味しくなる傾向にあるからだ。そして、高レベルの者ほど効率よく吸いとる。
だから、農民スキルを極めていけば、自然エネルギーの塊である精霊を味方にする事は可能だと神は判断した。
神によって太鼓判を押された事で御手洗灰人は農民スキルを取得して異世界の地に降り立った。
そこから御手洗灰人は二人の精霊と出合っていた。
潜在的に雷属性と炎属性に適正のあった精霊。未だ自我が希薄で力を持たない精霊は引き寄せられるように御手洗灰人に出会った。
精霊を視る為の霊視。
「もしよければ俺と仲間にならないか? えーと、名前は?」
精霊と語り合う為の意志疎通スキル。
御手洗灰人は狙い通りに精霊と対話していた。
神はそれをただじっと視ていた。
ここまでは神も知っていた事だからだ。だが、この先に起きた事で神は虚をつかれた。
御手洗灰人に語りかけられた事で精霊二人の自我がはっきりとしたものになって、名が無いことを自ら御手洗灰人へと教えた。
「名前はがないのか……うーん、赤色と黄色だから、炎と雷をイメージして燐火と雷華とか?」
名前という指向性を与えた事で燐火と雷華と世界に固定され、二人の精霊が強力な属性を持った事が神の予想外の事であった。
神は追憶を終えて、現在に思考を戻す。
下界では御手洗灰人が龍の口に加えられて運ばれる所であった。
神はその状況をただ見つめる。
この先に起こりうる事をただ見届ける為に。
…………後に創造神により、農民スキルを転移者に取得させる事は禁止となった。
世界は地下に眠る自然エネルギーが植物と共に空間に漂い。動植物の亡骸と共に地下へと潜る。この循環によって成り立っていた。しかし、御手洗灰人と同じような能力を持つものがいたら循環のバランスが崩れてしまい世界に影響を及ぼす、もしくは世界そのものが壊滅する恐れがあると判断された。
だが、転移を担当するものは思った。この後に御手洗灰人と同じスキルを取得する者などいないと。
数あるチートと呼ばれるスキルがある中で、最弱スキルである農民スキルを____レベル100まで取得アホなど現れないと、神はそう思っていた。
間に合ったら22から23時までにはもう1話投稿します。




