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33話 魔術競技祭~剣術編〜

 午後からの競技はトーナメント方式の試合であった。4チームそれぞれ先鋒、中堅、大将を決め、計3試合行う決闘方式の試合。制限時間は1時間。その間に相手を倒すか、フィールドから場外させるかが勝負を決める。


 試合で用いられる武器は、各々が用意する正真正銘の本物の武器である。

 当然、そんな自前を持っていないレンは、渋々運営から借りることにした。もちろんかっこよさげな剣である。


 初戦は、先鋒をセナ。中堅をソラ。大将をアーマの布陣で挑み、見事に勝利を納めた。


 現段階で、レン達【ジェイド】は優勝候補として注目されており、一躍有名となっていた。

 しかし、エルトによると、【レベルド】と呼ばれるチーム。そのチームが苦戦を強いられるであろう敵と言っており、まず間違いなく決勝まで上がってくると言っていた。どうやらエルトにとって、そして【ジェイド】にとってのライバルらしい。

 そして問題のあっという間に時間は過ぎ、決勝戦がやってきた。


 観客の声援が今まで以上にわき上がり、闘技場内は熱気に包まれていた。


 レン達はフィールド内の所定のエリアに集まり、【レベルド】のメンバーであろう人達も用意されたエリア内に集まっている。


 選手一同が集まったことを確認した司会者は、マイクを片手に持ち、今まで以上の声量で声を張り上げた。


「さぁ!皆様お待ちかねの決勝戦を始めたいと思いまぁーーす!!」


 その声に合わせ、会場中がさらに沸く。


「そしてぇ!決勝戦の試合表はこちらだぁ!!」


 司会者が指したモニターに文字が映し出された。


 ****************


 先鋒

 リヒト・アルテミラVSローガン・プライド


 中堅

 ミサキ・レン   VSウィバー・ワイルズ


 大将

 アーマ・ライト  VSステラ・エリヌス 


 ****************


 試合の組み合わせ表が公開され、選手合わせ観客共々、皆が盛り上がり始めた。


 先鋒と中堅は初戦で試合に出ていなかったメンバーを選出し、大将戦では、【ジェイド】で一番の実力のアーマを採用した。初戦でのアーマの戦いぶりからしても、今日は絶好調のようだ。


 すると、向こうのエリアから、【レベルド】のメンバーが近寄ってきた。


「やぁ。久しぶりですね。エルト。元気そうでなにより。」

「ふんっ。試合前にお話とは、随分余裕じゃねぇかよレクシベル。いいか!最近俺の所より、受講生が多いからって調子のってんじゃねぇよ!」


 この会話ですぐに察した。レクシベルは違うだろうが、エルトにとっては犬猿の仲なのだろうことが。


「私はあなたと喧嘩したい訳ではないのですよ。」


 レクシベルはため息交じりに苦笑いを見せた。


 エルトは「ふんっ」と鼻を鳴らすとレクシベルに背を向けてエリアへ戻って行く。

 その背中に、レン達もついて行った。


 ♢


 初戦が始まる少し前、準備をしているリヒトは不安な表情を見せていた。


「ローガン・プライド…….か。」


 ポツリとつぶやいたその言葉にレンは反応した。


「知り合いか?」


 珍しく沈黙しているリヒト。


「いや、もしかすると知ってる人かもしれない。でも、人違いって可能性も……。」


 どうやら相手選手の名前に知り合いらしき人がいるようだ。


「まぁ、あれだ。気にしてても仕方ないだろ。思い切りやってこいよ!」

「そだな。よし!行ってくるぜ!」


 励ましが効いたのだろか。リヒトは吹っ切れた顔をしてフィールドへ向かった。


「さぁ!両選手出揃ったところで、先鋒戦を始めたいと思いまーす!」


 ついに魔術競技祭決勝戦の試合が開始された。


 リヒトの相手であるローガン・プライドは、未だに黒フードを付けたままの状態で対峙している。

 対するリヒトはいつもの構えを獲らず、ただじっとローガンを見つめる。


「人違いだったら申し訳ないけど、あんたもしかして――」


 そう言った直後。

 突然リヒトの眼前にローガンの姿が現れた。ローガンは回し蹴りを繰り出し、その勢いは頭を吹き飛ばすであろう威力。


「くっ!」


 とっさに反応したリヒトは頭をかがめて攻撃を回避。そしてローガンとの距離を取ると、構えの姿勢をとる。


「龍騎拳『回旋』だな。」


 その動き。そして攻撃のパターン。それは間違いなく、リヒトが使う龍騎拳そのもの。いや、それ以上の威力と威圧。

 リヒトは目の前で繰り出された技が自らの実力よりも上のものと感じた。そして、それが出来るのはこの世でただ1人。


「やっぱりあんた。師匠だろ。」

「ふっふっふ。お~。そうじゃわい。やっと気づいたかぇ。」


 そう言いながらローガンは、深く被っていたフードをゆっくり脱ぎ始めた。

 暗い影から現れたのは同い年ぐらいの青年の顔。背丈や服装もリヒトとほとんど変わらない青年だ。その中で唯一の違和感はそのしゃべり方だ。


「最初見たときは全くの別人だったから、分かんなかったぜ。一体誰の身体なんだ?それは?」

「ふむ。リヒトよ。龍は何百年も生きる。龍騎の拳とはすなわち、龍の力を身に宿し術を行う。簡単に言うとわしは、肉体を若がえらえせた。」

「んなアホな!」


 会場中が同じツッコミをした気がする。


「はぁ。まぁ師匠が出来るって言うならそうなんだろう。でも一体どうしてこの場に?普段山にこもりっぱなしの師匠が外に出てくるなんて。」

「なぁに。愛しの弟子がどの程度強くなったかを確認しようと思ってな。しっかし、人よりも弱く振る舞うとは、いささか骨が折れる作業じゃったわ。」


 ローガンはポキポキと首を回し、疲れを表した。

 確かにローガンほどの実力者がその力の半分以上を抑制して試合に臨んだり等は、難しいことなのかもしれない。


 そこまでして弟子の成長を観察しに来た我が師に、全力で挑まなければ弟子として失礼な行為である。


 するとローガンは、佇むリヒトに向かって言葉を発した。


「リヒト。全力で来ることを勧めるぞ。じゃないと、わしが狩るぞぉ?」


 ローガンは、両手で地面を勢いよくえぐり取った。そして、抉られた土は宙で3つに別れ、それぞれが龍の形を作り出した。


 3匹の龍達は創作者であるローガンの周りを滑るように飛び回り、まるで生きているかのよう。


「龍騎拳『裏の型 琥竜こりゅう』」

「……。」


 ローガンは余裕の笑みでリヒトを見返す。



「あれは、魔法か何かなのか?」


 フィールド上で起こった出来事を見ていたレンは、隣に立つアーマに問いかけた。


「いや、魔力を感じないから。多分違う。あれは掬い取った砂に震動を与えて、形を形成してるんだと思う。」

「なんだそれ。めちゃくちゃ器用じゃねーか。」


 桁外れで奇想天外の技に驚きを隠せない。中でも一番に驚いていたのは、相手チームのメンバー達だ。

 誰もが、ローガンの実力を見抜けなかったということだろうか。


「お前にこの技を見せるのは初めてじゃったの。まぁ、見せたところでわしには勝てんがな。」

「へっ、そうでもねぇぜ師匠。」



 拳術の激しい攻防が繰り広げられる。

 互いに拳を受け流し、カウンターを狙う。そしてそのカウンターを捌き、隙を狙う。

 この攻防戦が何度も何度も繰り返され、観客も選手達も片時も目が離せない戦いだ。


「リヒトが押されてるなぁ。」


 戦況を見たエルトは、リヒトが苦戦していることを察した。端から見ると、同等の戦いの様に見えているが、実際はそうではないらしい。


「くっ、」


 ローガンのラッシュを受けるリヒトは、だんだんと身体がついていかなくなっていることに気づいた。

 身体の疲労か。そう思ったが多分違うだろう。ローガンのスピードが増しているのだ。


「どうした?捌き手が遅くなってきたぞぇ?ほらっ!」

「ぐはっ!」


 一瞬ラッシュを止めたローガンは、そこから身体を回転させ、回し蹴りを腹に決めた。


 フィールドの端まで飛ばされるリヒトは、危うく場外負けをくらうところで体勢を立て直した。


「くっそ、強ぇな。」

「当たり前じゃ。免許皆伝を許したお前とはいえど、師が弟子に遅れをとることなどあり得はせぬ。龍騎拳はその一つ一つの技を磨き上げることにより、日々進化するのじゃからのぉ。」


 ローガンは「ほっほっほっ」と笑った。


 リヒトは顔の汚れを払うと、再び構えを見せる。

 たぶん勝てない。そう、これは誰にでも分かる負け試合だ。

 そう思った。


 だが。それでどうした?だからって諦めるのか?いいや違う!負けと決まっていたとしても戦う。それが男だ。それがリヒト・アルテミラだ!


「良い目つきじゃな。それはつまり、戦いの行方を悟った訳だの。」


 ローガンは暖かい目で目の前のリヒトを見つめる。その眼光に映るのは、今のリヒト。そしてかつてのリヒトの姿。


 ついこの間までは強くなる事しか頭にない少年だった。だが、それが多くの仲間と出会い、会話を交え、拳を交え、共に生活を送り、心の色を変えたのだな。


 幼く両親を亡くし、親の代わりをしていたローガンの瞳は、紛れもない父親のそれだ。本物にはなれずとも、彼の支えとなれるならと努力した彼の傑作であろう。


「では、わしもその覚悟に応えねばならぬというわけじゃのぉ。」


 ローガンは今までの構えとは別の体勢をとった。


 リヒトはそれを知っている。 


『龍騎拳 奥義の型 獅子猪決ししとけつ』 

 龍騎拳に太古から伝わるという絶対的な奥義技である。


 それを師匠が見せるということは、これで勝敗をつけるという意思表示のようなもの。


「…これで終わらせるってわけだ。なら!」


 リヒトもまた、獅子猪決ししとけつの構えをとる。


 無音の時間。

 

 互いに意識を集中させ、相手の見せる一瞬の隙をうかがっているのだ。それは相手によって何時間もかかることがあり、強ければ強いほどそれに該当する。

 ましてや相手は龍騎拳の現継承者であり、年齢不明のもはや生ける伝説だ。その相手から隙を見いだすのは至難の業ではない。


 だが、それは思っていたよりも意外な形で現れた。


 一瞬ではあるが、ローガンの構える腕が落ちたのだ。小さい物だが、それは集中が切れたという合図。リヒトはそう思い、得意技である『縮地』を使い、超高速で間合いを詰めた。


 いける!そう思った時、ローガンの頬が少し上がるのが見えた。


「っ!」


 すると、彼の一歩手前に配置されていた土が龍の形と成り、リヒトの身体に巻き付き、勢いを完全に殺した。加えて、束縛状態で動けない。


「これは、最初の!」

「いつの間にか消えていたのを忘れとったじゃろぉ?その土龍は、一秒間に何兆回もの震動を与える事によって出来ておる。わしとの攻防戦の時は、わしが震動を与えていない時間じゃ。そして、奥義の構えでお前を誘い、わしがわざと見せた隙にお前が釣られ、今の場所に来る瞬間に再び姿を現し、お前を縛るように作ったんじゃ。」

「全部読んでたってことか…。」


 ローガンの恐ろしいまでの戦況把握能力に為す術などない。リヒトはため息を吐き、負けを認めた。


「じゃが、お前はこの負けを恥じるべきではないぞ。お前は充分にその力量を上げ、わしとここまで渡り合ったんじゃ。それは誇りを持って、仲間の元へ戻るとよいぞ。」


 そして。


「お前の立派なまでの戦いぶりに称賛を称え、奥義で敗を下そうぞ。」


 そう言ってローガンは人差し指を立て、隙だらけのリヒトの胸元に当てた。 


獅子猪決ししとけつ


 一応覚悟はしていた。基本スパルタ指導だったローガンであるから、この状態でも容赦ない攻撃をしてくるだろうと考え、準備していたが、それでもダメだった。

 獅子猪決ししとけつは強力な連撃を繰り出す大技であり、相手に攻撃させたという事を気づかせないことも出来る技だ。

 通常ラッシュであれば両手で行うものかもしれないが、ここまで常識外れの師匠であれば、指1本でリヒトを数十メートル離れた【ジェイド】のエリアまで吹き飛ばす程の威力を放てるのだろう。 


「がふっ」


 唯一出た声は、壁に激突したときに出たものだけだ。


 そのままリヒトは、意識を失った。

 そのリヒトを確認した司会者は、慌ててマイクを持ち、声を上げる。


「しょ、勝者!【レベルド】のローガン・プライド!!」


 ローガンは注目の的を浴びながら、エリアへ戻っていった。

 戻った先で、教官であるレクシベルに訳を説明し、皆はそれに納得した様子だ。


 反則級ではあったが、これでレン達【ジェイド】は一敗。勝負の命運は中堅であるレンに託された。 


 ♢


 そして中堅戦が始まろうとしていた。


 レンは支度終え、フィールドへ向かった。

 フィールドには既に相手チームのウィバー・ワイルズが準備体操をしながら待っていた。


「よろしく、ミサキ君。君は何の剣術を使うのかな?僕はね、この両手剣を使うんだ。」


 ウィバーはまるで試合のことなど関係なしにレンに話しかける。


 正直言うと集中している今の状況で、ここまでフレンドリーに話しかけられると心身的に揺れるからやめて欲しい。

 しかし、逆を言うとそこまで落ち着きを保てるウィバーに対して少し感心している所もある。 


「俺の剣術は多分言っても分からないと思うから、実戦で体感してくれ。」


 それを聞いたウィバーは、何とも嬉しそうな歓喜の表情を作り出し、うなずいた。


「うん。そうすることにするよ。お互い頑張ろうね。」


 ウィバーは言葉を残して背を向け、レンと距離を取った。


「それでは中堅戦!始めぇ!!」 

「行くよっ!」


 初手でウィバーは勢いよく飛び出すと、レンとの間合いを一気に詰めた。

 対してレンは剣を前に構えたまま動かず、冷静を表している。


(動かない?って事はギリギリまで接近して攻撃を仕掛けてくるか。それともただ怖じ気づいているだけか。いや、後者はないかな。)


 ウィバーは攻撃範囲内まで近づく、そして2つの剣線を大きく開くように剣を振るった。


(さて。どう出る?)


「御崎流 円弧治水えんこちすい


 迫る2つの剣に対してレンは剣の側面を利用し、1本目の攻撃を凌いだ。だが、このままだともう1本別角度から迫る剣線の餌食になる。レンは弾いた剣の威力をそのままに、上空で弧を描くと、もう片方の剣を弾いた。これぞレンの新技『御崎流 円弧治水』である。


「なるほど。回避技か。剣の側面を使うなんて、考えたことも無かったよ。」

「これでも伊達に数年間は“剣士”やってたもんでな。色々叩き込まれてるんだよ。」 


 弾かれた勢いで後ろに下がったウィバーは、自らの剣に付いた摩擦跡を確認すると、感心するようにレンを見た。


「君の実力はまぁまぁ分かったよ。僕が本気を出さないといけないって事もね!」


 今度は息つく暇も無い2剣の猛攻が始まった。


 レンはただ攻撃を受けるのみで反撃しない。否。早すぎる程の猛攻に反撃の隙が無い。今は『治水』で何とか攻撃を凌いでいる状態であり、このままだといつか圧されてしまう。というのがレンの本音である。


(早い。しかも一撃一撃がしっかり急所を狙ってる。1本でも弾けないと致命傷だな。)


 何とか回避しつつもウィバーの攻撃。防御。レンの攻撃。防御の繰り返しで一向に勝負の行方が見えなくなった。

 レンは御崎流の「桃花とうか」、「椿花ちんか」を駆使し、極力大技を使わずに勝負を進めている。

 時間制限があるとはいえど、長期戦になったときに、最後は大技で決めたいという思いがある。


 だが、終わらぬと思えていた剣の殴り合いだったが、あるところで形勢が崩れた。


(そこっ!)


 先程のように猛攻を受けていたレンだったが、不意に弱まったその隙をレンは逃がしはしなかった。剣を大きく振るい、ウィバーの両手を大きく弾かせる。


「くっ!」

「御崎流 六花りっか


 無防備状態の正面に六角形の点を付き、最後の一撃を中心で穿つ。 


「ぐはっ!」


 そのまま後方へ飛ばされ、形勢は一気に逆転。レンは己の実力を見せつけるように、剣先をウィバーへ向けた。

 確信は出来ないが、勝機の風がレンに吹いた気がした。


 よろよろと立ち上がるウィバーはふらつく足取りのもと、両手剣を拾い上げ構えた。 


(決める気だな。なら、こっちも全力で行かないとな。)


 レンは模擬ではあるが、剣を鞘に収める様な構えを取る。そして腰を低く落とすとそこから静かに間合いを見る。


 どこから舞ってきたのだろうか、焦げ茶色に枯れた落ち葉が2人の間にハラリと静かに降り立った。


 ザッ!

 ザッ! 


「両宗剣 獅子乱舞ししらんぶ


 ほぼ同時に蹴り出した2人は息つく間もなく秒後に対峙した。ウィバーは荒れる風のような剣線の嵐を作り出し、レンは未だ剣を抜かず突進する。 


(今だ!)


 猛風の間をすり抜ける燕の如くに、一瞬にレンはウィバーの眼前に姿を出した。 


「御崎流奥義 凌霄花のうぜんかずら」 


 1撃目 頭部

 2撃目 胸部

 3撃目……失敗


(くそっ!縮地までは良かったのに….。浅かった、失敗か….!)


 相手とのすれ違いざまに3連撃を繰り出すこの奥義は、いわば突進技と連続技の複合である。決まればダメージが大きいのだが、レンはこの技を成功させたことは一度も無い。


 このままでは体勢を直されて後ろを狙われる。

 そう思って無理矢理の体勢から振り返る。しかしウィバーは半分気を失った状態で通りすぎるレンを細目で見ていた。


 ドサッ


 砂埃で視界が悪いフィールド上で、誰かが地面に倒れる音が聞こえた。


 * 


「すまん。大丈夫か?」


 奥義同士の衝突が終わり、数秒後、地面に横たわるウィバーにレンは掛けより声を掛けた。


「はぁ、はぁ、負けたよ。君の勝ちだ。」


  小さいながらもしっかりとした声でウィバーは言うと、横になった状態から両手を挙げ、降参のポーズをとる。


「まさか、あの乱撃を抜かれるとはね。恐れ入ったよ。」

「そんなことないさ。あれだって縮地が無かったら今頃、俺は細切れだっての。」

「へへへっ。」


 肩を貸し合う2人を見て司会がマイクを持ち、声を上げる。


「中堅戦、勝者は、ミサキレン!!」


 ウィバーを抱えるレンは小さく息を吐き、勝利を実感する。その横に立つウィバーは暖かい視線をレンに送り、賞賛をみせる。これは互いの実力を認め合っている証拠である。


「良い戦いだったよ。ありがとう。」

「あぁ、こちらこそだ。久しぶりにあんなマジになったぜ。」


 彼との出会いがどのように繋がるか分からない。だが、ここに1人、良きライバルがまた出来た気がしたことだ。


 ♢

 残るは大将戦のみとなった。


 エルトの選抜により、大将はアーマが選ばれている。もちろんそれはチーム全員の意見一致によるものだ。


「よしっ!行ってくるよ!」

「あぁ!任せたぜアーマ!俺らの頑張りを無駄にしないでくれよな!」


 気合を入れたアーマにリヒトが応える。


 初戦でリヒトが負けてしまい、続いてレンが勝利した。この大将戦に彼らの優勝がかかっているのだ。もちろんその分プレッシャーは大きいだろうが、アーマは気にしないだろう。むしろ闘志を燃やしている様に見える。


「頼んだぜ。アーマ。」


 レンもまたアーマに声を掛け、アーマはフィールドへ向かった。


 相手チームの大将はステラ・エリヌス。アーマと競い合ってるという言わばライバルだ。


 普段むだに強いアーマと互角に戦いをするというステラとあれば、この大将戦はとても白熱した試合になるとレンは思っていた。


 フィールド上で向かい合う2人。


「今日こそ決着を付けよう!アーマ!」

「望むところさ!僕だって負けられないんだからね!」


 いよいよ試合が始まる。


「さぁ!ついに始まります、大将戦!その白熱するであろう戦いの前に、剣術系の優勝チームに与えられる優勝賞品をお見せしたいと思いまぁす!」


 余興だろうか。司会者が後方を指すと、そこには美しく飾られた大きなネックレスが。


 中央には大きな黒いダイヤモンドが嵌められ、それを守るようにと金でできた飾りが付けられている。普段は見ることの無い、古代の品のようだ。


「すげぇ。綺麗だ。あんなのが優勝賞品なのかよ。」


 その美しさに唖然のレンはすぐさまフィールドに立つアーマへ視線を向けた。


 だがーーー


「アーマ?」


 何だろうか。何かが違う気する。

 それがなんの違和感なのか説明出来ない。だが、そこに立つアーマに感じるそれは、まるで違った。


 そう。まるで、魔獣に感じるそれの様で……。


「……っ!!」

黒池くろいけ


 その瞬間。フィールド上に暗黒の闇が広がった。


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