あと…
ケンは、いわゆるフリーターと呼ばれる人種だ。
特に資格や特技も無く、他人に好かれも嫌われもしない、普通の若者という奴に入っている。
その彼が、酷く怯えた顔で私の店に入ってきた。
「…おやっさん」
彼は、私を『おやっさん』と呼ぶ。
…『私』は、居酒屋を営んでいる。彼は顔なじみで、よく仕事帰りに寄ってくれる。
「…どうした?ポカでもしてバイト先クビにでもなったのかぁ?」
私の軽口に答えず、ケンは携帯電話を私に見せた。
「………これ」
それは、受信メールのようだった。
『アト、ミッカ』
メールは、半角文字でこれだけ書かれていた。
「…イタズラか?これがどうかしたのか?」
ケンは、怯えきった顔で呟くように言った。
「これと同じメールが届いたバイト仲間が、死んだ」?死んだ…?メールで?
「偶然じゃないのか?」
私の一言は、さらにケンの恐怖をよんでしまったらしかった。
「三日後に、あいつは誰も居ない道端で焼死した…原因不明だった……」
ケンの話によると、そいつは黒焦げで、周りには火の気もなかったらしい。
「これを見て死んだ奴はもう三人いるんだ。俺も、あと三日の命なんだ…」
「どういう事なんだ?」
ケンは暫く黙って震えていたが、私を真っ直ぐに見つめて言った。
「おやっさん、助けてくれるか…?一緒に、助かる方法考えてくれるか?」…こいつは本気だ。私は頷きながら答えた。
「…先ずは、死んだ奴らについて聞かせてくれないか…その、"最期の三日"の出来事を」
ケンは頷いて、ぽつりぽつりと話し出した…