一人目・ゴトウ
ピロロロ…
「ん?誰だ?」
ゴトウは携帯を開いた。画面に"メール1件"の表示が出ている。
『アト、ミッカ』
半角文字でこれだけ。何の事やら…
「誰だよ、これ…?」
送信先のアドレスを見る…
「!?」
『3333333333』
おかしい。こんなドメインも無いアドレスから送るなんて不可能だろう…
「イタズラにしちゃあよくよく手が込んでるな…」
取り敢えず、何が『あと三日』なのかも分からないし大方オタッキーの無差別なイタズラだろう。そう思って、ゴトウは気にも留めなかった。
―翌日―
ピロロロ…
「ん?またか…?」
開いた画面には、
『アト、フツカ』
…流石に薄気味悪くなってきた…
「ケンなら何か分かるかもな…」
バイト先の後輩で携帯好きのケンなら、このメールを知ってるかもしれない。
明日、ケンにこいつを見せてみよう。案外、ヤツのイタズラかもしれないな。
この夜が、ゴトウの最期の安息となった…
朝、目覚めると同時にゴトウは携帯を開いた。
特に何も無い。
「ったく、気にし過ぎだってな…」
自嘲気味に呟いた刹那。
ピロロロ…
「ん?またかよ…?」
何気なくメールを表示させると…
ゴトウの全身は総毛立ち、携帯を落とした。
身体は動かず、視線だけが床を這う。
『キョウガ、メイニチ』
今日、俺は…死ぬ、いや、殺される――!?ゴトウは携帯を手に取り、ケンに電話をかけた。
やや寝ぼけ声で電話に出たケンにゴトウは叫んだ。
「ケン、俺…メールに殺される…!」
未だ寝ぼけていたケンにも分かる程、その声は切迫していた。
「ゴトウ先輩…?どうしたんスか!?…取り敢えず落ち着いて下さいっスよ。」
ケンの声に少し落ち着きを取り戻したゴトウは、ケンを近くのファミレスに呼び出した。
「これっスか…」
ケンも初めて見るメール…だが、半角文字の無機質さが妙に気になった。
「俺はどうなるんだろう…死ぬのか…?」
ゴトウの呟きに応えて…
ピロロロ…
「…!?」
「…きた…」
恐る恐るメールを開く。
『アト、ニジュップン』
無機質な半角文字が画面に列んでいた。
ゴトウの中の『何か』が弾けた。ゴトウは立ち上がるやいなや、店を飛び出して走り出す。
「あ…せ、先輩!?」
会計を済ませてケンも慌てて後を追う。
市街地を少し離れた橋の上でゴトウは肩で大きく息をしながら立っていた。
「先輩、落ち着いて下さいよ…こんなのただのイタズラですよ!」
ゴトウには、ケンの声も届いていないようだった。
「死ぬ…俺は死ぬ…」
ただそれだけを繰り返す姿に、ケンの恐怖も膨らんできてしまった。
ピロロロ…ピロロロ…
「…!!」
心は『止めろ』と警鐘を鳴らしている。だが、手は動き、メール画面を映す。
『オワリハ、クビククリ』
ケンは無言で携帯を投げ捨て、ゴトウを見た。
「何だ、お前ら…来るな…来るなあぁぁっ!!」
突然、ゴトウが周りを見渡しながら叫んだ。だが、周りにはケンしか居ない。
尚も虚空に向かって叫びながら、ゴトウは橋げたの方へ後退っていく。
「来るな…頼むから…来ないで下さい……」
泣き叫びながら、ゴトウは身体をのけ反らせた。
「あ、先輩、危な…!!」
ケンが声をかけた瞬間。
ゴトウの身体が揺れ、橋げたから落ちた。
「先輩っ!?」
ケンは駆け寄り、川を見下ろした。だが、ゴトウの姿は見えない。沈む程の深さなんて、この川にはない…そう思った瞬間、ケンは思いだした。
「『オワリハ』………」
ケンは、真下を見た。
「先輩っ!?」
ゴトウは、橋げたのボルトにパーカーのフードでぶら下がっていた。
足を伝う尿が、既にゴトウが事切れている事をケンに伝えていた…




