誰かのメッセージ
長期休みに入ったミドルとススムは、建築現場でバイトに勤しんでいた。仕事が無いと訴える声がある一方で、人手が足りないと困窮する業界もある。この現況を変えられるのはコンサルタントではなく、コンストラクトだ。
「えっほ、えっほ」
エネルギーがあり余っているミドルには、適材適所だ。
「あんまり飛ばすなよ~」
ススムは相棒が心配になった。
「坊主、あぶない!」
荷揚げのワイヤーが切れ、I 形鋼が落下してきた。いくらすばしこいミドルでも、逃げる間も無かった。ほんの一瞬の出来事である。
「ミドル!」
一目散に駆け寄るススム。
「はあはあ・・・」
すんでのところで助かった。あと3歩も動いていたら、直撃していただろう。さすがに血の気が引いている。
「よかった・・・」
無事を確認して安堵する雲水一門。
棟梁に身を心配され、帰るように促された。いつもは平気ですと言うミドルも、生きた心地がしなかった。
帰路、ミドルは普段使わない頭で悶々と思考を巡らせた。
武道を志す自分にとって、いつ死んでも悔いの無いようにとの覚悟はあるつもりだった。しかし、今回は戦いの最中の出来事ではない。さっきまで他愛の無い会話をしていたススムと、別れを告げるまもなく事切れるところだったのだ。
死んでいてもおかしくなかった。この天と地ほどの差を分けるのは、一体なんなのか? ミドルは創造主からの警告のように感じた。命なんてとっくに捨てたと思っていたミドルだが、いざ死が押し寄せるとこんなにも怯えるのだなと我が身を恥じた。
「そういや最近我が物顔で、怖いもの知らずなとこがあったかもしれない」
思い当たる節はありまくりなミドル。創造主にとって、思い上がった人間を絶命させることなど、微塵の躊躇もない。
「ミドル・・・!」
ウィルがボロボロ涙を流して待っていた。あんなに強気のウィルが、である。
「ヒッショー、あんまり心配させちゃ駄目なんだよ」
キョー子の頬にも、うっすら水跡があった。
「ごめんごめん。俺さ、頑張る方向性を間違えてた気がする。頭も冷えすぎなくらい冷えたし、もう一度考えを改めるよ」
こけること自体が悪いのではない。問題は、そこから立ち上がろうとしないことである。




