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鈴木一族の陰謀  作者: 仲山凜太郎
8/13

【8・大公開! これが鈴木一族だ】

 夜の構内を鈴木一族のリムジンが音もなく走る。中にいる鈴木喬太にも、まったく揺れは感じられなかった。外の景色が動いていなければ、この車が走っていることも気がつかないだろう。

 だが、今の喬太は外を見る余裕はなかった。ただ、目の前の鈴木弦間に神経を集中させている。

「俺と先輩を拉致するのか。選挙の中、式典実行委員会の生徒が二人行方不明になったら問題になるぞ。俺はともかく、先輩は班長クラスなんだ」

「急病で休むことになる」

「誰かがお見舞いに来る」

「これから投票日まで式典実行委員会はますます忙しくなる。誰かをおいて眠っていると言えば無理に部屋に押し入ることはできん。ましてや佐藤一族は、病気の仲間を引っ張り出すぐらいなら、そいつの分まで自分ががんばろうと考える」

 喬太は言葉が続かない。その通りだと思った。

 後ろを見ると、拘束された佐藤花崗と鈴木真が乗っている車がついてきていた。

「お前は鈴木一族というものがわかっておらん。鈴木一族がどれほどのものかを知れば、お前は喜んで仲間になるだろう。今までの行為を恥じることになる」

 弦間は語る。

「偉人と呼ばれているものたちも、鈴木の偉大さは理解していた。例えばブッダは生まれてすぐに『天上天下鈴木独尊』と」

「言ってない」

 弦間に聞いても時間の無駄と思った喬太は、説明を紅葉に求める。

「鈴木一族って何だ?」

 それが全ての中心に思えた。まずこれを理解しないと始まらないと喬太は思えた。

「どうして名字が同じってだけで一つの集団になれるんだ? 鈴木一族だけじゃない。高橋一族とか、田中一族とか、みんな本気にしか見えない。どうしてみんな本気になれる?」

 問われた紅葉は困ったように眼鏡を何度も直す。

「何だと言われても……」

 頭の中で整理しているのか、言葉を選んでいるのか、口を開くまで少し間があった。

「世の中では特定の条件を満たすもの同士でグループを作るというのはよくあります。学校でも同じクラスで、同じクラブでといった感じでひとつのグループが作られています。他にも同窓会とか郷土会、世界レベルで言えば、日本人とかアメリカ人、中国人というくくりも同じ。

 グループを作る条件も様々。生まれた国が同じ、学校のクラスが同じ、趣味が同じ、みんな一生懸命になって他人との共通項を探してはそれで一つのグループを作る。最近では、名前の音が同じと言うだけで町をあげて外国の政治家を応援した例があります」

「そして、鈴木の名字を持つ人が集まり、作られたのが鈴木一族だ」

 弦間が胸を張る。

「我々鈴木一族の目的は、全国の鈴木を束ねて日本最大最強の集団になること。他の一族も、目的は知らないが似たようなものだろう」

「馬鹿も百万人集まればひとつの思想になる、か。中には名字が同じってだけで勝手に一族に組み入れられて迷惑がっている人もいるだろうけど。

 それで、今回の選挙で鈴木一族は会長になって学園を支配しようとしているだけなのか?」

「支配ではない、指導だ。しかし、一番の目的は場の空気発生マシンの実験だ。マシンの効果が投票行為にどの程度現れるのか。それを見極めるための実験。そして、この選挙で得られたデータを基に、マシンをさらに改良・強化して本番に使う」

「本番って?」

「国政選挙」

 思わず喬太は息を呑んだ。繁華街で、駅前で弦間たちが街頭演説する姿が目に浮かぶ。

「国政選挙にあれを使うのか? 洒落にならない」

「洒落ではない。これが成功した暁には全国会議員が鈴木になる。国会議員だけではない。都道府県知事も鈴木。市長区長も鈴木。大小を問わず議員は全員鈴木。他にもスポーツでも全員鈴木のチームが生まれ、毎年独走で優勝する。芸術の大会でも入選するのは常に鈴木、会社でも取締役クラスは全員鈴木、警察官は全員鈴木、自衛隊でもある一定以上の階級は全て鈴木。小説、コミック、ドラマや映画の主人公はみんな鈴木。

 とにかく鈴木、鈴木、鈴木。するとどうなるか。

 鈴木という名字は、名字以上の力を持つ。鈴木は自分が鈴木であることに誇りを持ち、鈴木でないものは劣等感を抱く。鈴木は選ばれた存在の証になり、周囲も鈴木を特別な存在として見るようになる。誰もが無意識のうちに、鈴木は自分たちより格が上と思うようになる」

「そんなことがあるわけ無いだろう。有名人が自分と同じ名字だからって、それで自分が偉くなったり、強くなったりする訳じゃない」

「そうかな」

 明らかに馬鹿にする笑みが喬太に向けられる。

「喬太さん、考えて。親が自分の子供に名前をつけるとき、有名人や憧れの人、好きな小説や漫画のキャラの名前をもらうのは良くあること。どうしてだと思います? 同じ名前をつけることによって、その人と繋がりを持たせたいから。同じ名前にすることによって、その人のパワーが少しでも宿るんじゃないかと思っているんです。そんな時、人の上に立つ人がみんな鈴木という名字だったら?」

 その説明に喬太は言葉が出てこなかった。そんな馬鹿なことがと思っても、もしもそれが実際に起こったらどうなるか。名字は勝手に変えることはできない。ならば、弦間の言うとおり、既に鈴木の名字を持つ人を、自分よりも格上の存在として無意識に認めてしまうだろう。

「そんな都合よくいくのか。いくら場の空気が協力でも、周囲に流されない人間はいるぞ」

 喬太の言葉に弦間が頷いた。

「場の空気に逆らっても自分を貫く奴はいつでも、どこでもいる。だが、そういう奴はいつも少数派だ。多数決が基本の民主主義国家では何の力もない。民主主義では、少数派の意見が通って多数意見が退けられるなんて事はあり得ない。

 さらに言えば、全ての問題に対して強い信念を持つ人もいない。持っているのは自分が興味を持っている問題だけ。それ以外は、みんな場の空気で決める。そんなものだ」

「けど」

「まだ分からないのか、愚か者め!」

 業を煮やした弦間が怒鳴った。

「いいかよく聞け、場の空気発生マシンとは『その他大勢を全て味方にする』装置なのだ。

 名も無き一般人、その他大勢でひとくくりにされる奴ら。だがな、選挙においてはこの名もなき一般人が最大の力を持つのだ。それを味方に出来ると言うことは、民主主義において神となることを意味する。そう、この装置が完全になった時、我が鈴木一族は神となって世界中の民主国家を支配することができるのだ」

「支配って……」

 落ち着いていた喬太の気持ちは一瞬で崩れた。

「駄目だ、やっぱりわかんねえ。いい加減にしろよ。ふざけてんじゃねえよ!」

 頭を抱えてうずくまる喬太。

「だからお前はアホなのだぁ!」

「兄様!」

 紅葉が叫んだ。彼女には珍しい、怒りを隠さない叫び。

「触るなよ!」

 心配げに差し出された紅葉の手を喬太ははたいた。車内に甲高い音が響く。

「お前だって鈴木一族だろうが。だいたい、お前と関わってからろくな事が起こらねえ。物を餌にさんざんつきまといやがって、式典実行委員になってやっと解放されたと思ったら、鈴木一族だなんだのとやってきては場の空気発生マシン?! もう、訳がわかんねえ!

 そりゃあ俺ん家はお前らんとこみたいに金持ちじゃないよ。自分の小遣いもバイトで稼がなきゃならない。でも、そんなに悪くなかった。次はどんなバイトしよう、どこでバイトしよう。金が入ったら何に使おう。何の変哲のない生活だったかもしれないけど、結構楽しかった。

 それがここに来てから、いつも何かに追い立てられる感じだ。何かから逃げている感じでちっとも楽しくない! みんなお前のせいだ!」

 一方的な喬太の言葉に、紅葉は無言で叩かれた手をさすっていた。うなだれてずっとさすっていた。喬太の言葉に反論もしない。

「お前に血を分けたおかげで滅茶苦茶だ。こんなんだったら、血なんぞ分けるんじゃなかった。無視してバイトしてれば良かった」

 さすがにこの叫びには紅葉の表情が曇った。

 途端、喬太はわめきながら車の壁に頭をぶつけ始めた。何度も何度も何度も。ああは言ったが、彼自身わかっている。紅葉は悪くない。だが、何かわめかずにはいられなかった。身勝手だと思われようが、腹にたまったマイナスの力を吐き出さずにはいられない。

「紅葉、わかったか。これがこいつだ。何の大義も理解できない。鈴木の名字を持っていても、人としては最下層ランクだ」

 しかし紅葉の喬太を見る目に変化はない。それに気がつかないのか、

「わかったら、帰り次第プログラムの続きに入れ。明後日の討論会までには、第二プログラムを完成させる」

 その言葉に喬太の動きが止まった。なんだそれはと言いたげに振り返る。

「最も強力な場の空気は何だと思う?」

 弦間が語る。

「それは排除の空気だ。今までは鈴木一族はすばらしいという場の空気を作ってきたが、今度のは違う。高橋一族、渡辺一族、山田一族はうさんくさい。信用できないという場の空気だ」

 田中一族が入っていないのは、最初から眼中にないからか。

「これらの場の空気が浸透すれば、鈴木一族の完全勝利は間違いない。奴らが何を言っても生徒たちはうさんくさく感じる。どんな政策を掲げてもただの人気取りとしかうつらない。今まで鈴木一族はいいという空気に抵抗を感じていた奴らも、他の一族よりはマシだという消去法で我らを選ぶようになる。このような排除、否定の空気がどれほど強力か。現実の選挙を見てもわかるだろう。こいつに入れたいという力より、こいつには入れたくないという力の方が常に強い。

 そして一度その空気に飲まれ、奴らを悪く言ったり手を上げたりすればそれで終わり。自分のその行動を正当化するには、奴らが悪いという場の空気を受け入れるしかない。我々が何もしなくても、皆が我らを守ってくれる」

「てめぇ!」

 喬太が弦間に飛びかかる。が、体と心のダメージはその動きを大きく鈍らせた。弦間の蹴りがカウンターで決まる。喬太の体が反対側の壁に激突しようというとき、とっさに紅葉が彼の後ろに飛び込んで彼の体を受け止めた。

「紅葉!?」

「喬太さん」

 言って紅葉は喬太を抱きしめる。彼の後頭部に紅葉に胸の膨らみが密着し、柔らかな体臭が彼の鼻に届いた。

「あなたがどう思おうと、私はあなたの血を受けてよかったと思っています」

 喬太は自分の頬を支える彼女の手を取った。花崗と違い、ずっと華奢で小さな手。

 妹の様子に弦間は歯ぎしりした。今は何を言っても無駄らしい。弦間にとって紅葉の処分をどうするかは頭の痛い問題だった。選挙候補でも人気が高く、場の空気発生マシン開発スタッフの一人、そしてなによりかわいい妹である紅葉を重い処罰を与えるなどできなかった。しかし、喬太につこうと敵意をむき出し始めた彼女をほったらかしにすることもできない。

「見えたぞ」

 弦間が視線を窓の外に向けた。

「あれが鈴木一族の総本山、鈴木家だ」

 窓の外を指さす。その方向を見た喬太が

「なんだありゃ!?」

 月と町の明かりに照らされて、正八面体を組み合わせた建物が立っていた。天井部ではパラボラアンテナが回転し、正八面体の接合部分には滑走路らしきものが何本も飛び出している。個人の家と言うより、どう見ても昭和の特撮ヒーロー番組に出てくる基地だ。近くに立っている十階建てぐらいのマンションが小さく見える。

「なんか、二つに割れてスーパー鈴木ロボとか出てきそうだな」

 いきなり弦間が喬太の胸ぐらをつかみ

「貴様、なぜスーパー鈴木ロボの存在を知っている?! 紅葉から聞いたのか」

「本当に作ってんのかよ! 冗談だろ」

「私は冗談は嫌いだ」

 喬太が真顔の弦間から紅葉へ視線を向けると

「冗談だったらどんなにいいか。スーパー鈴木ロボの制作予算があれば、もっといろいろなことができるのに」

 言いながら紅葉の指が絨毯の上ではじく。あたかもそこにソロバンがあるかのように。喬太は少しほっとした。と同時に罪悪感がどっと沸いてきた。自分はさっき何を言ったのだろうか。

 紅葉は相変わらず絨毯の上で空気のソロバンを指をはじいている。

(ソロパンを弾いていると落ち着くの。変かな?)

 紅葉の言葉を思い出した。

(そうだ。落ち着け。今の俺は敵に捕らわれているんだ。こんな時こそ落ち着かないと……)

 喬太達の乗った車は、鈴木家の地下駐車場に滑り込む。

 学校の校庭ほどもある駐車場の一番奥に車を止めると、柱の陰から何十人というメイドと執事が現れ、整列、扉までの通路を作り上げる。それだけでも驚いた喬太だが、彼らの顔を見てさらに驚いた。無理もない。執事同士、メイド同士がみんな同じ顔なのだから。

「何なんだこいつら?」

「鈴木一族特製アンドロイド・メイド七式、通称『鈴娘(スズムスメ)』と執事五式、通称『木君(モックン)』だ」

 先に車から降りた弦間が胸を張った。

「アンドロイド?」

 執事やメイド達はどう見ても人間にしか見えない。こうして同じ顔が並んでいるから異様に見えるが、一人一人バラバラに動いていれば、何とも思わなかったろう。

「気をつけてください。このアンドロイドには各種格闘機能もつけてあります。プロの格闘家並みに戦えます」

 紅葉が忠告する。

「警備員も兼ねているって事か」

 後ろに止まったもう一台の車から花崗と真が数人の鈴木一族に連れられて降りてくる。それを見て喬太は驚いた。二人もぐったりとして、抵抗どころか、満足に歩くことすらできない。

「二人に何をした?!」

「ちょっと薬を打っただけだ。体に害はない」

「何のために?」

 紅葉が弦間に厳しい視線を向けた。

「花崗先輩はともかく、真は兄様にやられて満足に動けなかった。薬はもちろん、見張りすらいらないぐらい」

 弦間は二人を一瞥すらしない。

「おい、先輩をどこに連れて行くんだ!?」

 自分が車の中で話している間、花崗は彼らの手によって抵抗力を奪われていたのだ。彼女がああなっているのは、喬太自身の責任に思えた。

 追いかけようとする喬太と紅葉を鈴娘たちが捕まえ、そのままエレベーターの方へ引きずっていく。

「安心しろ。彼女に変なことはさせん。特に聖人には」

 悔しいことだが、今、喬太にできるのは弦間の言葉を信じることだけだった。


 喬太と弦間、紅葉は地下の駐車場からエレベーターに乗り込んだ。鈴娘と木君が一体ずつ同伴している。

 弦間が黙って十八階のボタンを押した。見ると三十三階までボタンがある。

「個人の家にしちゃ、無駄にでかいな」

 上がるエレベーターのモーター音に浸りながら、喬太が率直な感想を言った。

「ここは鈴木一族が世界に君臨するための基地でもある。これでも狭いぐらいだ」

「だろうな。地下で巨大ロボを作っているぐらいだからな」

 現在位置を示すボタンが十階を超えると、いきなり開放感に溢れた。振り返ると、背後が壁から夜景になっている。

 周囲の町並みから生えている光。遠くに見える御代氏学園の校舎の光。校舎の周りの森には光がないため、町と校舎は別の存在に見える。

「見てみろ。学園がまるで俗世間から超越した楽園のようだろう」

「そうか、俺には世間から隔離した離れ小島に見えるぞ」

「相違の違いだな。あの美しさが分からぬとは」

「あたしは」

 紅葉が視線を上げる。

「島で喬太さんと見た星空の方がずっと綺麗だと思う」

 喬太もつられて見上げる。島に比べて空気が汚れているのか、晴れているのにあまり星が見えない。

「確かに、綺麗だったな」

 あの日の空、台風の目の中で見た星空は、満天の名にふさわしい光のパレードだった。

「紅葉……さっきはごめん」

 見上げたままの喬太に、紅葉が返事代わりにそっと寄り添う。あまりにも自然すぎて、喬太も拒否するような態度を見せなかった。

「いい加減にしろ!」

 弦間が紅葉と喬太を無理矢理引き離す。

「紅葉、これ以上私の神経を逆なでするな。本当にお前を裏切り者として扱うことになる」

「だったらさっさとしたらどう。あたしに言われただけの真より、彼をそそのかしたあたしの罰が軽い方がおかしいんですから」

 弦間が唸る。明らかに今までとは違う紅葉に困惑している。それが喬太には愉快だった。

「ところで、俺はこれからどうなるんだ? コンクリート詰めにして海の底か。それともバッタの改造人間にでもされるのか、だったら脳改造前に脱出してやる」

「さっきも言ったように、投票日までここにいてもらう。投票結果が出る頃には、お前も鈴木一族の強大さを知って、抵抗する気もなくなっているだろう」

「抵抗する気がなくなるとしたら、鈴木一族が強大だからじゃなくてあまりにも馬鹿馬鹿しいからだろう」

 ちょうど十八階に到着する。軽いチャイムと共にエレベーターが止まると、扉が開く。

 扉の前には、鈴木大洋が立っていた。

「ようこそ、鈴木一族の城へ」

「理事長」

 転校初日以来の対面だった。だが、理事長に対する喬太の印象は大きく変わっていた。あの頃のように、真摯に接する気はなくなっている。

「理事長が、鈴木一族の真の族長ですか」

「その通り。幹部クラスが数人いるが、みんな学園の外で活動している」

「なるほど、要するに、弦間は族長と言ってもただの御代氏学園高等部担当ってことか」

 鼻で笑う喬太を弦間がじろりと睨みつけた。その様子に大洋が

「面倒なことになっているようだな。だからこの時期、転校生は入れたくなかったんだが」

 うれしそうに笑った。不思議と、彼はこの事態を歓迎するようだ。

「入れなきゃ良かったんだ」

「そうもいかない。君を迎え入れることが紅葉が会計に立候補する条件だったからな」

 それは喬太にとって初耳だった。

「まぁ、投票日までのんびりしていればいい。外出は許可できないが、それ以外は不満のない生活を約束するよ。真にも手荒なことはしない。ところで、夕食はまだかね」

「晩飯前に捕まったんで。……腹が減っていると力が出ない」

 タイミングよく、喬太の腹の虫がなった。思わず大洋が笑い出す。

「すぐに用意させよう。何か希望はあるかな?」

「豚骨ラーメン。花崗先輩には肉野菜炒めをたっぷり乗せた湯麺で」

 途端、大洋の表情が曇る。

「君だけではないのか?」

「先輩が一人、薬物で自由を奪われている」

 その言葉に、大洋は弦間を睨みつけた。よほど心外なことらしい。

「弦間、何度も言ったはずだ。味方を大事にするのはどんな独裁者や下衆な人間もしている。心の大きさは味方ではなく敵対者をどう扱うかで決まるのだ。戦争において、捕虜がきちんと人間扱いされたため、敵に対する憎しみが薄らいだ、逆に好意を持ったという例はいくらでもある」

「しかし父上、かつて天下を取ったのは敵に塩を送った上杉謙信ではありません。敵を兵糧攻めにした豊臣秀吉です。江戸幕府が三百年以上続いたのは、敵となるかも知れない諸大名を徹底的に締め付けたからです。敵は徹底的にたたくのが勝利の原則。それに奴は佐藤一族で、場の空気発生マシンのことを知りました。明後日の討論会は私の勝利を確定させるための大事な場。不安要素は出来る限り排除しておきたいのです。

 命と貞操の保証はいたします」

 弦間の額に冷や汗が流れるのを喬太は見た。先ほどまで偉そうにしていたのが嘘のように真っ青になっている。

 出された食事は豚骨ラーメンではなく、懐石料理だった。しかし、懐石料理など食べたことのない喬太にもわかるほど素材、調理法共に素晴らしいものだった。口に入れた途端とろけた肉、生きていた頃泳いでいた海の香りを感じさせる魚、大地の息吹が体に染み渡るような野菜。思わず自分が置かれた状況を忘れてしまうほどだった。

 喬太の中で繰り広げられている美味と嫌悪の戦いが一段落した頃、大洋が切り出した。

「ところで喬太君、学園には慣れたかね」

「学園には慣れました。それ以外のことではまだ慣れてません」

「まあ、うちの学園の生徒たちは特殊だから。しかも、一番大変な時期に転校時期が重なってしまったからね」

 大洋が鈴娘の一体を呼んで、食後の飲み物を持ってくるよう指示する。

「君は式典実行委員会に入ったそうだが、どうしてかな?」

「じっとしていると頭が破裂しそうだったんで。それに、ここなら選挙が終わるまでは忙しくて悩む暇もない上、いろいろと情報も入ってくるだろうし。そして何より、特定の勢力に引き回されることもなさそうでした」

 その答えに大洋は満足したらしく大きく頷いた。

「なるほど、安心したよ」

「何がです?」

「君の判断が正しいと見るかは人によって違うだろうが。少なくとも、君が考えるだけでなく、行動することを惜しまない人間であることは分かる。紅葉は小さな頃からずっと数字を相手にしてきた。だから、男を見る目はどうかと思っていたが、少なくとも君に関しては正しかったようだ」

「父様、まだ疑っていたんですか」

 紅葉が不機嫌な声を出した。

「親としては当然だと思うが。委員会に入ってからの働きぶりも聞いている。きつい仕事にも不満を言わず、着実にこなす。失敗もあるが、転校してきたばかりと言うことも考慮すれば、十分許容範囲だ。もう少し遊び心が欲しいところだが、そこまで望むのは贅沢だろう」

「それではお父様」

「私は口を出さないことにしよう。邪魔はしないかわりに協力もしない。しかし、その時には喜んで彼を鈴木一族の幹部候補として迎えよう」

 紅葉の顔が明るくなり、弦間の顔が青くなった。

「父上、紅葉の裏切りに対する処分は」

「ない」

 きっぱりと言い放つ。

「それはお前の管理不足だ。下の裏切り要因の多くは、上の怠慢にあるものだ。紅葉が我慢できないほど、お前のやり方に問題があったのだろう」

「あの、何の話ですか? どうして俺が幹部候補に? その時にはって、どんな時?」

 予想がつかないでもなかったが、一応確認する。

「喬太さん……分かっているくせに」

 紅葉が恥ずかしげな視線を向けてきた。間違いない。喬太は自分の予感が的中しているのは確信した。

(やべぇ、いつの間にかバッドエンドルートに入っている!)

 思わず叫ぼうとするのを、ぐっとこらえる喬太。ここは鈴木家、鈴木一族の本拠地なのだ。そして花崗が囚われている。ここで自分が下手な動きをしたら、瞬間、バッドエンド確定だ。

(落ち着け。先輩を助けるまで、下手に暴れても良いことないぞ)

 ぐっとこらえて拳を固める。

「ところで、理事長は今回の選挙についてどう思っているんです?」

 不安を隠しつつ質問する。花崗のことは気になるものの、理事長であり、鈴木一族の長を前にしているのだ。聞きたいことは山ほどあった。

「面白い、実に面白い。これまでも一族同士の争いはあったが、表立った舞台で正面切っての対決は初めてだ。しかも佐藤をのぞく五大一族対決。見応えがあるぞ」

 文句を言おうとする喬太を制し、わかっていると言いたげに大洋は言葉を続ける。

「念のため言っておくが、今回の選挙で私は中立だよ。もちろん、我が鈴木一族が勝利すれば嬉しいが、負けたとしてもそれはしょうがない」

「なぜです……なぜだ!?」

「人生の本番は社会に出てからだと考えているからさ。学生でいるうちは、様々な経験を積んで欲しい。敗北もまた一つの経験だ」

「父上!」

 弦間が不満の声を上げたが、大洋はそんな彼の反応すら楽しんでいるように見える。

「だったら、場の空気発生マシンの使用を止めさせるべきだ。あれは違反行為だ!」

「そうかな。あのマシンは弦間たちの研究成果だ。それに、あれは選挙違反には当たらないと私は考えるね」

「あれは一種の洗脳マシンじゃないか」

「洗脳と呼ぶには無理がある。君たちがそれを証明している」

「俺たちが?」

「そうだ。あれはあくまで場の空気を作るだけだ。その気になれば誰でもあのマシンの効果を跳ね返すことが出来る。現に、君のように強い意思を持つ者たちには効果がない。自分の考えをしっかり持っている人には効果がないものを洗脳と呼ぶのかね。

 あのマシンの効果に踊らされる者がいるとすれば、それは何となく生きている連中だ。私はね、そういう若者が大っ嫌いなんだ。若者はね、多少跳ねっ返りで、危なっかしいぐらいでちょうど良い。了見が狭くても、目の前の問題に正面から挑み、結論を出し、それに従い行動する。それが若さというものだ。場の空気なんか知るか、俺は俺だ。そうでなくては。

 もちろん、場の空気と自分の考えが一致することもあるから、場の空気に従う人を全て否定は出来ない。そこのところは誤解しないように」

 語る大洋に、喬太は相手を間違えていることを悟った。彼は本当に傍観者に徹する気だ。弦間に対して協力も妨害もしない。

 どんな偉そうなことを言っても、動く気のない奴に頼ったら負けだ。

「花崗先輩に会わせて欲しい」

 食事が終わると大洋に申し出る。ダメ元のつもりだったが、

「いいだろう。ついでに家の中を簡単に案内してあげたまえ」

 あっさり認められる。大洋は、あくまでも喬太を捕虜としてではなく、客人として見ているようだ。

「父上、それは危険です」

 弦間がいらだちの表情を見せるのが、手に取るように分かった。

「いいじゃないか。彼はまだ鈴木一族のことが分かっていない。不完全な情報からは不完全な結論しか出せないものだ」

 大洋は弦間の不満に答えるように言った。

 理由はともかく、内部の様子を見られるのは喬太にとってありがたい。花崗のいる場所や脱出ルートの下見にもなる。しかし弦間は首を横に振り

「それらは選挙の終わったあとでもできること。むしろ、選挙が終わるまではこれ以上余計な情報をこいつに与えるべきではありません。それよりも、鈴木喬太と佐藤花崗の欠席届の受理をお願いします」

「いいだろう。投票日まででいいんだな」

 大洋が出て行くと、弦間はにんまりとして笑みを喬太に向けた。

「残念だったな。下見ができなくて」

 喬太のもくろみは見破られていた。

「心配しなくても、討論会の後に会わせてやる。その頃にはあの女は自分も鈴木一族の仲間にしてくれと泣いて頼むだろう」

 喬太が立ち上がり、その勢いで椅子が倒れて乾いた音を立てた。

「先輩に何をした?」

「するのはこれからだ。安心しろ、私は下品なやり口は嫌いだ。さっきも言ったように、命と貞操は保証する」

「上品なやり口も嫌いなくせに」

 弦間に飛びかかるよりも早く、二体の木君が喬太の左右の腕を捕まえてしまう。振りほどこうにもびくともしない。

「離しなさい!」

 紅葉の凜とした声が部屋に響いた。途端、木君がかしこまって喬太を自由にする。どうやら木君と鈴娘は鈴木一族の命令は絶対らしい。

「捕まえろ、優先だ」

 弦間が言うと、再び木君が喬太を捕まえる。今度は紅葉が離せと言っても離さない。

「無駄だ、お前より私の命令の方が優先順位が上だ」

 紅葉の両肩をしっかと捕まえ

「今回の選挙にはお前の力も必要だ。お前が協力する限り、喬太に乱暴はしないと約束する。選挙後にこいつが鈴木一族として働くことを誓えば、お前の恋人としても認めてやろう」

 紅葉が顔を上げた。

「本当だ。将棋みたいなものだ。手強い敵ほど、味方になれば頼もしい」

 紅葉は喬太と弦間を見比べ、

「わかりました。仕事に戻ります」

 それを聞いた途端、弦間が満面の笑みに変わり

「そうかそうか。今回のことは許してやる」

「真もお願い」

「わかっている。奴には十分な手当をする」

 紅葉を抱きしめ、満足そうに何度もうなずく。

 二人を見ながら、懸命に喬太は悔しそうなふりをした。彼は気がついていた。弦間に抱きしめられた紅葉の指が、ソロバンの珠を弾く仕草をしているのを。


 喬太は鈴娘の一体に二十階の客室に案内された。12畳ほどのリビングルーム。床にはシックな浅葱色の絨毯が敷き詰められ、応接セットに巨大なテレビ。壁際は一面のガラス張りで、窓越しに町の夜景が見える。

「捕虜を閉じこめるにしては豪華すぎないか」

「喬太様の希望は、弦間様の指示に反しない限り聞くように言いつけられております」

 鈴娘の笑顔は柔らかいが、その言葉には人間にあるべき感情が感じられない。そこまでの技術がないのか、そういう言い方をするようプログラムされているのかは喬太にはわからない。

「電話はこちらですが、直接外には通じません。受話器を取ると中央管理室につながりますから、何かご用がありましたらそちらへどうぞ。寝室はこちらになります」

 奥の扉を開けると真っ白なシーツで覆われたダブルベッド。バスルームに入れば、喬太が手足を大の字に広げられる大きさのバスタブがあり、トイレには小型テレビが付けられていた。

 案内する鈴娘を喬太は観察した。機械とは思えないなめらかな動き。

「君たちは警備用に格闘技のプログラムが組まれていると聞いたけど、具体的にはどの程度の強さなんだ?」

「お試しになりますか? 手加減についてはプログラムされておりませんが」

「遠慮しておく。一人にしてくれ」

「かしこまりました。お飲み物はご自由にどうぞ」

 コーヒーセットの乗ったワゴンを隅に止めると、鈴娘は一礼して部屋から出て行った。

 扉が閉まった途端、部屋は沈黙に包まれる。絨毯が厚いせいで足音すらしない。

 無音だ。

「気持ちが悪い」

 自然なら、誰もいなくても虫の声や風の音などがする。無音というのはあり得ない。

 喬太は扉のノブに手をかけた。回そうとするが、ノブはそれを固く拒否する。

「鍵なんかかけやがって、体の良い幽閉じゃないか」

 ソファに座る。柔らかなクッションが彼の尻を沈めた。ソファと言うより、高級羽布団に座っているようだ。

 携帯電話を見ると圏外表示になっている。建物か部屋に何か仕掛けがあって携帯電話を使えなくしているのだろう。これでは、他の委員に連絡できない。

「何とか先輩を助けないと」

 明後日の討論会で弦間の化けの皮をはがすことができれば計画をつぶすことができる。花崗とともにここを脱出できれば、紅葉もまた自分たちについてくれる。そうなれば自分たちにも勝機がある。

 そこまで考えて喬太は頭を抱えた。車の中で紅葉に吐いた言葉を思い出したのだ。

(紅葉……ごめん……)

 何度謝っても謝り足りない。

 それに気がついた。自分は紅葉を信用している。いや、どんな時でも紅葉は最後は自分についてきてくれると決めつけている。なんて厚かましいのか。自分は散々紅葉の好意を踏みにじる、目をそらしていながら、彼女はそれでも自分に向いているのが当たり前のことだとしている。

 たっぷり十分は頭を抱えていただろうか、顔を上げたとき、喬太はさっぱりとした顔つきになっていた。

「下手な考え休むに似たり」

 それは喬太の座右の銘だった。

「とにかく、情報を整理しないと」

 どれもこれもやらなければと焦ったら、結局どれも中途半端になってしまう。やることに優先順位を付けなければ。事の重要性と自分に出来ることを考えて。

 テレビをつけると十時のニュースをやっていた。盗聴対策にボリュームを大きくする。

「見ていろ、俺に対して、この程度の軟禁で済ませたことを後悔させてやる」

 喬太はポットのコーヒーをカップに注ぐと、電話の横にあるメモ帳とボールペンを使ってやるべき事を箇条書きにし始めた。


 鈴木家地下。第二研究室。

 聖人の報告を聞いた弦間が真っ青になった。

「ディスクが見つからないだと?!」

「別に一枚ぐらいいいでしょ。誰かが見つけたところで、怪しげなプログラムを開けるはずもないし。暗い中、男ばかりでうろついて腐女子に誤解されたらどうするんです。選挙に影響でますよ」

 選挙を持ち出されると弦間も強くは言えない。しかし、場の空気発生マシンのプログラムが万が一他の一族の手に入り、解析されたら。

 聖人を突き飛ばすように押しのけると、弦間は研究室を出て行く。行き先は地下の一番奥にある部屋。

 そこでは、密閉された部屋で捕らわれた花崗が大の字になって台に貼り付けにされていた。上着を脱がされ、目隠しと猿ぐつわをかけられ、頭にはヘッドホンがつけられている。

 部屋の外からガラス越しに彼女を見おろす弦間。

 花崗は苦しげにうめいている。

「さすがにすぐにはいかないか」

 彼女を閉じ込めている部屋は、鈴木一族にあこがれる場の空気でいっぱいだ。そして、彼女のつけているヘッドホンからは絶え間なく鈴木一族を賛美する言葉が流れ続けている。

 どんな嫌な相手からでも「愛している」と一万回言われればその気になる。それからヒントを得た弦間が考案した教育装置だ。ヘッドホンの形をしているが、実際は耳ではなく、振動を使って直接脳に語りかけている。たとえ無の極致でも防ぐことは出来ない。計算によると、二十四時間これを続けていればさしもの花崗も鈴木一族に従うのがいいと心が染まるはずだった。

 人の気配を感じて振り向くと、紅葉と真が立っていた。真は手当を終え、体のあちこちに湿布や絆創膏が見える。

「こんなやり方は嫌いです」

 ガラス越しに花崗を見て紅葉が言った。

「私も好きではない。しかし、好きなことしかしない奴は勝者にはなれん」

「兄様は選挙を始めてから変わりました。前はいくらか愛嬌が感じられたのに」

「人は変わるものだ。ましてや、人の上に立とうとするならばな。それよりも紅葉、お前もプログラム作業を手伝え。討論会も控えているし、忙しくなるぞ」

「今の兄様は嫌いです」

 出て行く紅葉と真を見つめる弦間は厳しく、寂しそうだった。

 寂しさを振り払うように

「ディスクが他の一族の手に渡った可能性もある。対策を立てなければ」

 腕を組み、考える弦間はどこかわざとらしかった。


 上へのエレベーターに乗り込むまで、紅葉と真は無言だった。

「喬太君、花崗先輩を助けにきますかね」

 エレベーターの扉が閉まり、二人っきりになると真が口を開く。

「来ます。絶対に来ます」

「紅葉はどうします?」

「え?」

 彼女の声が少しだけ大きくなった。

「どういう意味?」

「分からないふりは止めた方が良いです。僕は喬太君のことはよく知りません。けど、これから紅葉がしようとすることをすれば、きっと彼は紅葉の味方になる。もちろん僕も」

「真……」

 エレベーターが紅葉の部屋のある階に到着した。

 紅葉がおり、残った真に向かって

「ありがとう」

 手を振った。笑顔だった。真の前で始めて見せる顔だった。

 真が軽く一礼するその前で、エレベーターの扉が閉まる。途端、真が思いっきり扉を蹴った。扉はびくともしなかったが、大きな音をエレベーター内に響かせた。

「ちきしょう……」

 真は膝を抱えてその場にうずくまった。何年もそばにいながら引き出せなかった彼女の笑顔を、喬太は簡単に引き出せた。それが悔しかった。


 紅葉は降りていくエレベーターに背を向けると、毅然として自分の部屋に歩き出した。ソロバンを取り出し、歩きながら珠を弾く。ゆっくりと。そしてだんだん早く。

 廊下に彼女の珠を弾く音が響く。だんだん大きく、力強く。

 扉が開き、中に入る。扉が閉じると同時に、廊下に響いていた珠の音が消えた。


【次回更新予告】

鈴木喬太「さて、いよいよ次回から反撃開始だ。まずは花崗先輩を助けないと」

鈴木弦間「そううまくいくかな。この私を甘く見るな」

鈴木喬太「お前こそ俺を甘く見るなよ」

鈴木紅葉「お兄様も喬太さんも、鈴木一族しか見ないと……。次回更新『紅葉を抱きしめて』タイトルから期待できそう」

佐藤花崗「……鈴木バンザイ……」


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