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行く当てのない少女

「ったく、しくじったぜ」

 俺は九時半ぐらいにバイトを終わらせて家に帰った。そして遅めの夕食を作ろうと冷蔵庫の中身を見た。しかし……

「まっさか、冷蔵庫の中身が空だったなんてなぁ」

 そう、冷蔵庫の中には何もなかった。いや~、すっかり失念してたよ。昨日の夕食で冷蔵庫の中身使い切ってたんだよね。さすがにこの時間では近くのスーパーはもうしまっちゃってるよなぁ……

 ということで、仕方ないからコンビニで何か買ってくることにしましたbyオレ

「ファミニーマード」という行き付けのコンビニで夕食を適当に買い(おにぎりとサンドイッチ、おまけにドリンク)、そのまま帰ろうとした。……うん、帰ろうとしたんだけど、

「ん?」

 その途中の公園、そこで気になるもの……いや、人を見つけた。その公園のブランコにその少女は座っていた。少女の髪は非常に長く色は銀、いや、光を反射してそう見えているだけで実際は白髪なんだろう。

(それにしても、綺麗な髪だな)

 今彼女が座っているブランコの座面よりも長いその髪は公園の外灯に照らされていて銀に見え、それでいて照らされていない部分は白に見える。そんな見事なコントラストを生み出している。

(というか、もう午後十時だぞ。さすがに危ないだろう)

 そう思い少女に声をかけようと近づく。

 しかし、少女は俺が目の前に来ても何も反応しない。ただ、なにかぶつぶつとつぶやいてるだけだ。

 そこで次のステップ!声をかけた。

「おーい」

 俺がそういうと少女は黒い瞳で俺を捉えた瞬間「うわあっ」と声を上げた。やっぱ、俺に気づいてなかったのか。……俺って影薄いのかな。

「えっ、と。……君、誰?」

 俺の存在に気づいた少女は恐る恐るという風に俺に問いかける。まあ確かに、こんな時間に声をかけられたら警戒するよな。まあ、あまり話す必要もなしに、ここは注意するだけにしておこう。

「俺のことなんかより、こんな時間に外にいるなんて危ないだろ。すぐに家に帰ったほうがいい」

「うん、そうだね」

「いや、分かってるんだったらっとっとと帰ったほうが「でもだめなの」……ん?なんで?」

 俺がそう聞くと少女はとんでもないことを言い放った。

「僕、ね……家出、してきちゃったんだ」

 ……だってさ、どうする、奥さん?


「ふうん、なるほどねぇ」

 さっき、なぜ少女が家出したのかと言う素朴な疑問を俺もブランコに座りながらぶつけてみた。んで、それを要約すると、

「僕、昔この町に住んでたんだ。それでこの町には僕の幼馴染がいるんだけど久しぶりに会いたいなって思ったの。だけど僕のお父さんがそれを許してくれなくて、だからお母さんに協力してもらって家出をしてきたんだ。だけど、そこから行く当てがなくて……だからこの公園にいたんだ」

 と言うことになる。あとこの少女、僕っ娘だよ。そして明美と同じくらいの美少女だ。スタイルもこの少女のほうが胸が大きいくらいしか違わない。

「それじゃあ、これからどうするんだ?」

「うーん、まだ決まってない、けど……」

 そういった彼女は俺の手元を何度もちら見する。そして俺の手元にはコンビニで買った食べ物が。

 と、その時。 

  ぐう~

 と少女の腹がなった。

「はうっ!」

「ぷっ!くくっ!」

「ちょっ!笑わないでよぉ」

「ははっ、悪い悪い」

「うぅ~」

 少女は頬を膨らませながら俺を睨み付ける。そんなことをしてもちっとも怖くない。むしろ可愛い。まあ、この少女を見捨てる気にもならないのである提案を口に出す。

「なあ……一緒に食べるか?」


「あの、ありがとう」

 少女に恵んだおにぎりが彼女の手元からなくなって少し、俺は少女にそういわれた。ちなみに、少女がおにぎりを食べている間、俺はサンドイッチを食ってた。

「いや別に、これぐらいどうってことないよ」

 そういうと彼女は「そう、でもありがとう」と言った。

「ああそれと、お前今金持ってる?」

 と聞くと「二万円くらい」と少女は言った。

「だったら駅のところに安くてサービスの良いホテルを知ってるぞ。どうする?行くか?」

 そういうと少女は胸元を隠すようにしてこう言い放つ。

「……それって、ラブホテル、じゃないよね?」

 その言葉に俺は噴き出した。少女は困惑したようにこっちを見ている。

 そんな少女の問いに、俺は笑いをこらえながら答える。

「いや……ぷっ……違うぞ。第一、なんでそう思う?」

 そう聞くと彼女はやや恥ずかしそうにこう言った。

「だ、だって男の人ってこういう風に女の人を誘うって僕のお母さん言ってたから」

 その言葉に俺はさらに笑った。何教えちゃってんのお母さん。


「あの、今日は本当にありがとう。初対面の人にこんなに優しくされたの初めてだよ」

 ホテルの前で少女は俺にそう言った。

「いや、俺がただ、困ったやつを見捨てられない奴だっただけだよ」

 「それじゃあ」といって家に帰ろうとした俺。「あの」と呼ばれて振り返った。

「えっと……名前、教えてくれる?」

「あー、そういえば名乗ってなかったな。俺は青野 空だ」

「えっ……」

 彼女は俺の名前を聞くと一瞬、目を見開いた。

「……どうかしたか?」

「あっ、ううん。なんでもない。……えっと、青野君。僕の名前も言ったほうが良い?」

「……いや、いいよ」

「そう。それじゃあもしまた会ったとき、そのときに僕の名前を教えるよ」

「また会ったときに、か……そうだな。それじゃあもしまた会ったとき、その時に名前を教えてもらうよ」

 こうして、おれと少女は別れた(別に恋人とかじゃないよ……これ蛇足かな?)



 午後十一時半、私は彼に教えてもらったホテルのベッドの上でつぶやく。

「青野 空、かぁ。……なんか、運命感じちゃうな」

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