第五話 新しい旅路(?)
「それでですね? あなた方がこの集落にいたのは。いやぁ、そうでしたか」
「そうなんです。まだまだこの世界は、わからないことだらけ。その中でも特に、この辺りは解明が全く進んでいませんから」
あんな大事が終わった数時間後。
私は――私たちはこの集落の長、フレデリクのもとへ来ていた。
「昨日は本当に、ご迷惑をおかけしました。あなた方がいなければ、この集落は今頃どうなっていたことか……」
フレデリクには、さっきまでにあった事——ルミの存在などは、結構隠しながら伝えていた。
……さすがにルミが本当の神であることは伝えないほうが良い案件だからなぁ
「いやいや、そんなそんな。私たちは、できることをやったまでです。——こんな世の中ですし、私たち能力者は影から世界を支え、解明していくことしか、できませんから」
それに、誰かを助けるのは、人として当然だろう。
「では、私たちはそろそろ。昨日今日でいろいろありましたし、報告書とか、書く量が増えちゃいましたから、王都に帰ります」
「本当に、有難うございました。近い未来、ここにも来ることになるでしょうから、言ってくだされば、宿などは、すぐに用意させます。こちらにも、顔を出していただきたく。……旅の話とか、聞きたいですから」
「(笑)。もちろんです。いろいろとお世話になりました」
「はい。では、また。…………華夏様ご一行がお帰りになられる。荷物を持ってきて差し上げろ」
「「「「了解いたしました」」」」
――——数時間後。
「……っぁ。つっかっれたぁ」
「今から報告書書かなきゃね……」
「僕も、いろいろまとめておかないとだな。これは何日かかるだろう……」
「俺は特にないから、言ってくれたら手伝うぜ」
「どんなことをするのじゃ? どんなことにも興味がわいてしまうのじゃ!」
場所は、華夏と沙羅、星那の家。――の華夏の部屋。
「君たちねぇ、自分の家とか部屋とかあるでしょう。なんでわざわざ私の部屋に全員集合してんのよ?」
「まぁまぁ。しっかし、本当にいろんなことがあったんだねぇ」
そういう彼女の名前は碧 あや。
星那の妹だ。
「お兄ちゃんは知らないけど、華夏がいるんだから大丈夫だとは思ってたけど……」
「あや? もっとお兄ちゃんもいたわってくれ……」
「まさか、本物のルミセリナ様に出会って契約しちゃうなんて」
「本当にそうだよ! 僕、どんな楽しいことがあったんだろうってワクワクしてたのに、なんかものすごく壮大なことになってるし」
そういう彼は淼無 維澱。
ちなみに沙羅の名字も淼無で、維澱の双子の姉だ。
「沙羅が出る前に、『なんか嫌な予感がする』って言ってたから、何か起きるんだろうなとは思ってたけど」
「皆さんの仕事を増やしてしまい、申し訳ございましぇん……」
……噛んだぁぁぁぁっ
「肝心なところでよく噛むわね、華夏。まあ詠唱で噛んでなかったからいいけど」
……はい。そうなんです。頑張りました。さすが沙羅さん、よくわかっていらっしゃる。
「まあ、そのおかげで場は和むからありがたいっちゃぁありがたいけどね」
「確かに。ファンクラブができるのもうなずける」
……なんとっ。ファンクラブ?! いつ、どこで?!
「ファンクラブなんてできてるの? 私なんかのファンクラブよりも星那とか沙羅とかのほうがいいじゃぁぁん」
「まあまあ。見てたらめっちゃ和むよねって意気投合した連合会の数名が勝手に始めたことだし、何も害はないと思うよ?」
「えぇぇぇぇぇぇ。でもぉ」
「は~い、話が脱線してるよ。各々さっさとやらなきゃ、次の仕事もあるんでしょ」
……そうでした。
「じゃあ、ちゃっちゃと終わらせますか」
「私は徹夜コースだなぁ。何日かかることか」
……自分で仕事、増やしちゃったし、ルミのことや、私のことは覚えてるうちにやっときたいし。
「それなら、我が紅茶でも入れてきてやろう。少しは疲れもとれるじゃろ」
「ルミ、有難う……みんな、頑張ろー」
「「「「「おーーー!」」」」」
――――二週間後。
「おわったぁぁ」
「お主……よくこの量をこんな短期間で終わらしたのぉ」
……そりゃあ、ねぇ。二週間の睡眠時間の合計が約5時間ですから。
「私の睡眠時間が犠牲になってくれたんだよ」
「そ、そうじゃったか……」
「華夏ーーー! そろそろ終わった頃合いでしょ。ハーブティー持ってきたわよぉ」
さっきまで庭でハーブをとっていたのだろう。沙羅がハーブティーを持ってきてくれた。
……沙羅、めっちゃ頭に葉っぱついてる……
「有難う、沙羅。にしてもさすがだね。ちょうど終わったところだよ」
我が家のハーブティーは絶品だ。華瑠が植物に詳しかったりするのもあるのだろうが、こういう植物の世話をするのが大好きなこの沙羅という者がここに住んでいるから。
ちなみに我が家で育てているハーブは約43種類だ。栄養素だの属性などを私と華瑠がいじってたら新しい品種ができちゃった――なんてことがあったから、もともとは10種類ほどしかなかったのに、今ではこの量。このハーブ園の範囲。
……と、まぁそのことはおいておこう。
「そういえば、華夏。華瑠と星那が早く会いたいって叫んでたよ」
「あぁ……めんどくさいことになりそう……」
「まぁまぁ。でも、あの妹大好き……いわゆるシスコンの華瑠と、パートナーと妹大好きな変態代表の星那だもの。そりゃあ、華夏のことも心配になるでしょ」
「シスコンと変態代表……ふふっ。確かに。この輪の中にいるからには、避けられないかぁ」
「そうよそうよ。さ、ハーブティー飲み終えたんならあいつらのとこ、顔出しに行ってあげて」
「華夏、部屋の片づけは任せるのじゃ。早く行ってやれい」
……なんとも使用人感のある神様でしょう。……まぁ、ルミらしいし、ありがたいからいいんだけど。
「ありがと。ルミ、沙羅。……じゃあ、そろそろ行ってくるよ」
「いってらっしゃい!」
……人が一人増えるだけで、こんなににぎやかになるんだなぁ
部屋を出てすぐ。廊下を歩いていたら、いつもより家がにぎやかなことに気が付いた。
華瑠は……なんか騒がしいからきっと星那も華瑠の部屋にいるのだろう。
華瑠の部屋のドアの目の前にある大きな窓の前に立って、深呼吸をした。山が近いからか、久々にしっかり空気を吸い込んだからか、いつもより、空気がおいしく感じた。
「これから、もっと楽しくなるぞぉ! 私も、頑張らなきゃね」
そう言って、華瑠の部屋のドアを開けた。
今まで以上に、明るく、爽やかで、窓から入ってくる、心地よい空気と同じように。華夏の心は晴れ晴れとしていた。
この先起こる、新たな魔法災害に、《《必然的に》》巻き込まれることに。
このことは、ルミだけが、知っていた。
教えようにも、教えられない。この運命からは、彼女は逃れることができない。彼女には……星の欠片には。
彼女は一体何者なのか。欠片の使命、能力……欠片となった、なってしまった理由とは。それが、この世界の理のほんの一部だとは、まだ、知ることはないだろう。
……華夏も、ルミも。
ただ、彼女はまだ、生きている。この世界のすべてに従い、抗って。そして、使命のすべてを成し遂げるまで、彼女は死なない。
――物語はまだ、始まったばかりなのだから。
遅くなってしまいましたが次の話が投稿できました!
続きも、お楽しみに~




