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琉璃の出生の秘密が発覚しました!!どこまで極める!?刹那ピンチ!!

 翌日、憔悴しょうすいした妹のモクランと共に、姿を見せたカラン。




 昨日、義理の妹である夫の妹のシャーロットと話をした。

 彼女は、


「自分は、ショーンが成人するまで仮の当主となりましょう。亡命先にこちらを選んだのは、本当に申し訳ないのですが……」


まだ幼いのに、少女は義理の姉を見る。


「でも、大丈夫ですよ。姉上!!私達は負けません!!きっと、いえ、必ず国を取り戻して見せます!!そして、ハウリス兄上に!!」

「そうね……ありがとう。でも、モクランと子供達は……」


 不安げにかげる表情、そして妹を抱き締めているのは、


「申し訳ありません!!私のせいです……」


と、土下座して謝罪を始めるのを抑える為である。


 元々カレンは気性がはっきりとしているものの、妹のモクラン、穏和でおっとりしている。

 泣き続けるモクランは、かなり参っている。

 誰かが傍にいないと命を断つ恐れがあると、医師に教わった。

 その事を前もって聞いており、カレンだけでなくモクランも自分の姉だと慕っているシャーロットは、怒りに瞳を吊り上げ、


「何を言われます!!モクラン姉上も、ジュンにギョクランも、何の罪に問えるのです?モクラン姉上は姉上と亡くなった兄上と同じ被害者です!!私はあの男をけして許しません!!」


実の兄であるクーデターの首謀者のチューティスと、モクランを騙していたシュールに対し宣言をする。


「私は世界に宣言します。現在のトウリャンは国ではないと。本当の当主は現在は私、そして次の王はショーンだと!!」




 今日も、同じ言葉で宣言したシャーロットに、


「ですが確か、トウリャンは、当主は未成年でも結婚していることが前提では?シャーロット様は、婚約者もいない。お年も、まだ15才ではありませんでしたか?」


今回、ロウディーンに頼まれた瑾瑜きんゆは文学研究者とは表向きで、裏では策略を練り、幾つもの独裁者を位から引きずり下ろしたり、裏で軍事兵器を売りさばき戦場を生み出しては人々を苦しめる者や国の財政を破壊したり、戦に巻き込まれた人々に、執筆活動や仕事で得た収入を弱き、苦しむ立場の人々への援助に当てている。

 自分が個人でやるよりも、ロウディーンを間に挟むことにより、ロウディーンのブルーデール国の権威が上がり、発言権や、次に当主となる弟のりょうに強い力を持たせられる。

 自分自身はしがない(自分ではそう思っている)学者で、弟を助けられない。

 しかし、ロウディーンを利用させて貰うことにより、ロウディーンにも貸しを作ることが出来る。

 ロウディーンもそれに乗ることで、一旦苦しくも悲しい家族の暗殺、妹が殺害されていたことにより、乱れた国内を落ち着かせた上に、トウリャン国の人々に、国に対して全面的に味方となることで有利になる。


 シャーロットは瑾瑜きんゆの指摘にはっとする。


「で、ですが、私には……」


 元々長兄を尊敬し、長兄のように文武両道をと腕を磨いていた少女は、15才になるのだが恋人がいない。

 それに、美貌の義理の姉を見ている為、適度な筋肉のついた自分が恥ずかしいのだ。


「あぁ、いるじゃないの」


 カレンは思い出したように、周囲に座っていたハウリスに着いて、国を脱出した重臣達の最も後ろ、母と共に何とか逃げ出した少年に声をかける。


「リョウ殿」

「は、はい!!」


 母は、この国の重臣ヴァーセルの三女ルゥルゥと共に、次期王となるショーンやモクランの双子の子供達を、子明しめいの母の優凜ゆうりんと面倒を見ていた。

 リョウの母のローザは、おっとりとした優凜よりも、やんちゃで頑固な4人の息子を育てている肝っ玉母さんである。

 リョウは長男で、弟達はヴァーセルの子供達と遊んでいる。


「リョウ殿?貴方、婚約されていて?」


 突然の言葉にキョトンとし、素直に、


「おりません。うちの父も母も、そう言う所ははっきりと『自分で探してこい!!出来ないのなら、アホと呼ぶ!!』『そんなことすらできない軟弱者は、家にはいらないわね、おーほほほ』と二人で大爆笑してましたので」

「あいつらならやるな……」


父の同僚達は頷く。


「それに、私ははっきりいって、そういうことに疎いらしくて、弟達にバカにされます。で、父に一度だけ、どんな女性がいいのかと言われたので、『強い信念をもち、それでいて優しく、人に気配りの出来る人です』と言いました」

「あら、じゃぁ、余計にお願いするわ」

「はい?」


 首を傾げる。


「えと、何をでしょうか?」

「シャーロットの夫になって頂戴。貴方はシャーロットと仲が良いでしょう?貴方達なら大丈夫よ」

「はぁ?シャーロット様と……どういうことでしょう?」


 リョウの頭の中には『?』マークが踊っている。


「それはいいですなぁ……ハウリス様が生きておられたら、そして、ソウが生きておったら……喜ぶでしょう」

「特にソウはあれでいて、大泣きしますな」


 周囲は頷く。


「で、でも!!姉上!!皆さん!!リョウ兄上にご迷惑でしょう!?」

「迷惑?あ、私に、あのトウリャン国に侵入し、暗殺してこいと!?行きます!!」


 生真面目に変な方向に言ってのけたリョウに、周囲は脱力する。


 そうだった。

 このリョウは、武術バカな父親以上のボケである。


「違うわ!!ド阿呆!!」

「カラン様の話を聞かぬか!!」

「す、すみません……と言うか……!!」


 リョウの指先をたどった人々は絶句する。

 昔は、先代王になるハウリスの学友で親友だった者……そして、裏切り者!!


「何をしに来たの!!どうやって!!」

「警備は手薄ですし、そうでした。この国の公主妃に公子、公女を殺したのは、ハウリスから命令を受けた私ですから」


 フフフ……腕を組み微笑んだシュールに、


「何ですって!?私のハウリスはそんなことをしないわ!!」

「おや?そうなのですか?では、どうして、この国の後継者はどうなるのでしょうね?家は断絶ですね」

「おやおや、人の国を心配して戴かなくとも結構ですよ。私の後継者はもう決まっていますし?」


微笑みつつ姿を見せたロウディーンとりょう


「私の後継者は、この亮です」

「あぁ、自分の妹と公表していながら、本当は娘だったディアーナ姫の娘の婚約者か」

「おや?隠していた訳ではないんですけどね?皆が隠してくれていただけですよ。私の最初の恋人は結婚を約束していたのですが心臓が悪く、自分が王妃になってはと結婚を固辞したんです。でも、お腹には子供がいて、難産の末にディアーナが生まれました。彼女の命と引き換えに生まれた娘のことを、亡くなった妻は知っていましたよ」


 ロウディーンは微笑む。


「結婚して、余り日をおかず子供が次々に生まれ、ディアーナも分け隔てなく育ててくれました。しかし、ディアーナはあの黒河によって殺され、妻と子供達も失い……嘆く私を慰めてくれた、弟のように可愛がっていたハウリスを……裏切るとは、人の風下にもおけない!!」

「そうですか……まぁ、貴方と話していても仕方がない。モクラン。来なさい」


 姉の腕の中で、ビクッとする。


「お前は私の妻だ。一応形ばかりは、他国の王女を正妻としているが、私にはお前しかいない」


 俯き黙り込むモクランに、ニッコリと不気味な笑いを作る男に、


「モクラン様。この男の妻と言う人は子供を身ごもっています」

「!?」

「な、何を言う!!」

「本当のことでしょう?それに」


亮は、男を蹴り飛ばす。


「貴方は、モクラン様を再び利用する為に、子供達を連れ去ろうとしていましたね?ご安心下さい、カラン様、モクラン様。姉達と弟と、子明先輩達のお陰で、皆ご無事です」

「亮どの!!」


 そのようなことが起こっていたとは露知らず、会議を催していた自分達に愕然とする。

 ロウディーンは優しく、


「ご安心を。一度はあっても二度は有り得ません。この男は、情報を黒河から掴んだのですよ」

「何だと!?」


顔色を変える瑾瑜。

 あの男のえげつなさを知り尽くしている為である。

 腕を組んだシュールは、にやっと、


「黒河殿が、自分の娘を誘拐したと国際警察に訴えたとか?大丈夫ですか?」

「そちらこそ大丈夫かな?そんな曖昧あいまいな情報に踊らされるとは、愚かさを暴露しているだけですよ。リフォーン?」

「はい」


シュールよりはわずかに高い青年は、後ろにスーツ姿の十数人の男達を連れて現れる。


「遅くなりました。殿下。安全な所に移って戴いております」

「良くできました。それと、琉璃りゅうりについて、解っている範囲内で語りなさい」

「はい」


 リフォーンは頭を下げると、


「琉璃姫の遺伝子鑑定を行いました。母上の遺髪と、黒河の毛髪と姫の切り揃えた際に戴いていた毛髪で……結果は、母親の確率は99,99%。父親は0%でした」

「はぁ!?」


シュールは呆気に取られる。

 黒河には何度もくどいように、自分の子供だと言われ続けていたのだろう。

 リフォーンは告げる。


「そして、別の人物との遺伝子鑑定を行った所、その人物との可能性が高いことが解りました」

「で、その人物は?」

「私です」


 やれやれと呆れ返るロウディーンの周囲では、ざわつく。


「何で言わなかったのかなぁ?リフォーン。私が反対すると思った?」

「いえ、殿下ではなく、父がウザかっただけです。姫を追いかけ回し、怯える程……というよりも、あれはストーカーすれすれで、長兄の奥方もこっちは悪意ギリギリ……その上、近づいてきた黒河に姫の秘密……殿下ご一家と私ども側近にしか伝えてはならぬ隠し通路を伝え、侵入したあの男に……」


 唇を噛み顔を背ける。

 元恋人として、言いがたいことだったのだろう。


「……姫は公表すると脅され、それは絶対に困ると……殿下にご迷惑はかけられないと……私は何度も止めましたが……姫は……」

「で、どうするの?リフォーン」

「……私は、姫に瓜二つの琉璃姫の傍でいるだけで、満足です。まだ幼い姫に、実の父親が誰かなどと教えることは、今、光来こうらい様の娘として愛情を受けて育っている姫にとって、迷惑以外の何者でもないと思います。ですので……」


 項垂れるリフォーンに、ロウディーンは、


「まぁ、その件は後で。さて、逃げようと目論むアホを取っ捕まえて下さいね。国際警察の方々。私の妻子に、このリフォーンの長兄の妻、他数人の女官に侍従が命を落としたのです。宜しくお願い致します」


シュールは押さえ込まれ、そのまま引き出されたのだった。

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