第81話 七十二時間の猶予
旧第七航路の接続先から認証要求が届いてから、すでに二時間が経過していた。HM-417の航路管理室では、アイリスとガルムが過去の記録を照合し、リアとエリアスが認証形式の解析を進めている。正面画面には、接続先から送られてきた信号の構造と、残り時間を示す表示が並んでいた。
《認証待機期限:69時間42分》
《接続先:旧第七航路補助施設》
《通航機能:未開放》
《認証状態:保留》
「……これ、時間が減っていくのを見ると焦るね」
ユウが呟くと、セラが隣から答えた。
「だからといって、急いで認証するわけにはいかない。相手が何を要求しているのか分からない以上、慎重に進めるべきだ」
「分かってるって。でも、せっかく見つけた航路だからね」
ユウは画面を見つめた。旧第七航路の先には、YD-09で発見した大型古代艦の建造に関係する施設が存在する可能性がある。中央接合構造の手がかりが見つかれば、長期的な建造計画を大きく前進させられるかもしれない。もっとも、現時点では施設が実在することすら確認できていなかった。
「先生、何か分かりました?」
ユウが尋ねると、エリアスは端末から顔を上げた。
「要求されている認証形式については、少し分かった。これは一般的な船舶識別ではない。航路管理者が設備に対して操作権限を証明するためのものらしい」
「……つまり、パスワードみたいなもの?」
「大雑把に言えばな。ただし、単純な識別番号ではない。管理権限、設備の状態、接続先の情報を相互に確認する仕組みだ」
リアが隣から説明を補足した。
「だから、適当な認証情報を送っても通らないの。しかも、間違った情報を何度も送ると、接続先が通信を遮断する可能性もあるみたい」
「……それは困るね」
ユウが苦笑すると、アイリスが応じた。
『艦長、現在のところ認証情報の送信は行っていません。受信した要求を解析している段階です』
「うん。そのまま慎重にお願い」
セラは星図を表示した。
「ところで、認証できたとして、その先はどうなる?」
アイリスが答えた。
『認証が成立すれば、接続先の設備状態を照会できる可能性があります。ただし、通航機能が開放されるとは限りません』
「……認証できても、行けるとは限らないわけか」
『はい。航路の安全性を確認できなければ、通航は推奨できません』
ユウは頷いた。以前なら、とりあえず接続してみようと言っていたかもしれない。しかし今は、危険な賭けをしてまで急ぐ必要はない。大型古代艦の建造は、何年もかかる計画なのだから。
*
解析開始からさらに三時間後。リアが突然、声を上げた。
「……あっ! 先生、これ見て!」
エリアスが顔を向ける。
「どうした?」
「認証要求の中に、古い施設管理権限の識別子が残ってるんです。これ、YD-09の管理記録にも似た形式があるんですよ!」
リアは二つの資料を並べた。一方は旧航路接続先から受信した認証要求。もう一方は、YD-09の古代施設管理記録だった。
「……確かに、構造は似ているな」
エリアスが呟いた。
「でも、識別番号そのものは一致していません」
リアが頷く。
「はい。ただ、認証方式は同じ系統だと思うんです。つまり、ガルムが持っている管理権限を利用すれば、少なくとも一部の照会には応答できるかもしれません」
ユウは期待を込めて顔を上げた。
「……ガルム、どう?」
ガルムの表示が起動した。
『現在の管理権限を照合します』
しばらくして、結果が表示された。
『YD-09の管理権限と、接続先設備の要求形式には共通部分が確認されました。ただし、管理対象が異なるため、そのまま認証情報として使用することはできません』
「……やっぱり駄目か」
ユウが少し肩を落とすと、ガルムが続けた。
『ただし、施設間の状態照会に使用される共通認証手順は確認できました。限定的な情報交換であれば、実施可能な見込みです』
リアが嬉しそうに顔を上げた。
「……ほら! やっぱり!」
エリアスは腕を組んだ。
「待て。状態照会と管理権限の認証は別だ。相手の設備がこちらを信用しても、通航を許可するとは限らん」
「分かってますって!」
リアは頷いたが、その表情は明るかった。
セラが尋ねた。
「状態照会だけなら、安全性の問題は少ないのか?」
ガルムが答えた。
『通信内容を施設状態の照会に限定し、管理命令や通航要求を送信しなければ、設備側への影響は限定的と考えられます。ただし、相手側の動作を完全に保証することはできません』
エリアスが頷いた。
「なら、まずはそれを試す価値がある。通信を監視し、予期しない要求が来たら即座に切断できるようにしておこう」
ユウはセラへ顔を向けた。
「……やってみる?」
セラは少し考えてから頷いた。
「限定的な状態照会なら許可する。ただし、接続操作は行わない。異常があれば即座に通信を切る」
「了解!」
ユウは笑顔で頷いた。
*
旧第七航路への状態照会は、中継基地の航路管理設備を通して実施された。ガルムは接続先への通信内容を最小限に制限し、アイリスが送受信データを監視している。
《旧航路接続先/状態照会》
《共通認証手順:開始》
《管理操作権限:要求しない》
《通航機能:停止状態を維持》
ユウたちは画面を見つめていた。数秒後、接続先から応答が届いた。
《施設状態照会:受理》
《施設識別情報:部分開示》
《設備稼働状態:制限運用》
《管理主体:不明》
「……おお、返ってきた!」
ユウが声を上げると、リアも嬉しそうに頷いた。
「やった! 共通認証が通った!」
アイリスが解析を続けた。
『接続先設備の状態情報を受信しています。施設分類は航路接続補助拠点、管理系統は独立型です』
セラが尋ねた。
「航路設備は生きているのか?」
『一部は稼働しています。ただし、接続先の誘導設備に複数の異常が記録されています』
画面に新しい情報が表示された。
《航路接続設備:待機状態》
《誘導制御設備:部分障害》
《接続先安全確認:未完了》
《有人艦通航許可:不可》
ユウは少しだけ肩を落とした。
「……やっぱり、すぐには行けないか」
エリアスが頷いた。
「当然だ。むしろ、通航を禁止する仕組みが残っていてよかった。壊れた設備に無理やり接続される方が危険だからな」
リアは別の項目を確認していた。
「……でも、これ見てください」
画面の隅に、一つの情報が表示されている。
《接続先施設/補助通信系統》
《外部観測情報:保存あり》
《最終記録更新:不明》
「……観測情報?」
ユウが尋ねると、リアが頷いた。
「うん。航路を開かなくても、接続先の周辺情報を取得できるかもしれない」
セラがアイリスへ尋ねた。
「情報の読み取りは可能か?」
『共通認証で公開されている範囲に限れば、可能です。ただし、記録の一部は破損しています』
「じゃあ、読めるところだけお願い」
ユウが答えると、アイリスが解析を開始した。しばらくして、立体星図に新しい地点が表示された。
《旧航路補助施設/周辺観測記録》
《資材集積拠点候補:二件》
《小型補給施設候補:一件》
《大型構造物反応:一件》
ユウは目を見開いた。
「……大型構造物?」
リアも画面を覗き込んだ。
「……先生、これって」
エリアスは慎重に記録を確認した。
「まだ何とも言えん。小惑星や放棄された大型設備かもしれない。だが、位置情報が残っているなら調べる価値はある」
アイリスが補足した。
『大型構造物反応は、RS-12の推定位置に比較的近い領域で記録されています。ただし、観測記録の年代が不明なため、現在も存在するかは分かりません』
ユウは少し考えた。
「……もしかして、資材集積拠点そのものだったりする?」
『可能性はあります』
セラは星図を見つめた。
「少なくとも、探索候補は絞れたな」
ユウは頷いた。時間制限のある認証要求は、まだ解決していない。しかし、無理に航路を開かなくても、新しい情報を得ることができた。それだけでも、大きな前進だった。
*
その日の夕方、HM-417では資源事業に関する新しい報告が行われていた。オルガは精製金属の継続供給契約に合わせ、試験ラインの稼働計画を見直していた。月間十五トンの供給は現在の設備でも可能だが、他の製造作業と電力使用が重なると、生産に遅れが生じる可能性がある。
「……じゃあ、やっぱり設備を増やした方がいいのかな?」
ユウが尋ねると、オルガは首を振った。
「現時点では、まだ早いと考えています。まずは二か月程度、現在の設備で安定供給できることを確認したいです」
ハンナも頷いた。
「大型艦の研究開発費も必要ですから、設備投資の優先順位を整理するべきです。現在の資金状況で四十万Crを一度に投入するのは勧めません」
ユウは苦笑した。
「……分かってる。いきなり全部やろうとは思ってないよ」
オルガは少し笑った。
「ただし、少額で実施できる改善はあります」
新しい資料が表示された。
《精製事業/第一段階改善案》
《原料搬送設備の自動化:18,000Cr》
《選別工程の効率化:12,000Cr》
《品質検査装置の追加:9,000Cr》
《合計:39,000Cr》
「……四万弱か」
ユウは資料を確認した。
「これでどのくらい変わるの?」
「生産量そのものは大きく増えませんが、作業時間と不良率の削減が期待できます。月間十五トンの安定供給には効果的です」
ハンナが収支計算を表示した。
「この改善によって、契約数量を維持しながら人件費と再検査費用を抑えられる見込みです。ただし、投資回収には数か月かかります」
ユウは頷いた。
「……それなら、やってみようか。大きな設備を増やす前に、今ある設備をちゃんと使えるようにしたいし」
オルガは嬉しそうに頷いた。
「ありがとうございます。では、改善計画を進めます」
会議を終えると、ユウは少しだけ満足そうに息を吐いた。以前なら、収益を増やすためには大きな設備を導入するしかないと思っていただろう。だが、実際には小さな改善を積み重ねることでも、事業を成長させられる。それは艦隊の運用にも似ていた。新しい艦を増やすだけでなく、今ある艦の性能を引き出し、乗員の能力を高めることが重要なのだ。
*
翌日。ユウはノード・セブンの商業区画で、リーネと待ち合わせをしていた。今日の目的は、以前から約束していた仕事抜きの外出だった。リーネが選んだのは、宇宙港の外縁に設けられた展望施設。巨大な観測窓から艦艇の発着を眺められるだけでなく、施設内には飲食店や小さな展示区画もあるという。
「……ちょっと早く着きすぎたかな」
ユウは端末で時刻を確認した。約束の時間までは、まだ十五分ほどある。いつもなら何か仕事の資料でも確認するところだが、今日はアイリスに念を押され、業務用の端末は持ってきていなかった。
『艦長、現在の予定に遅延はありません』
「……いや、早すぎるくらいなんだけど」
『約束の十五分前です。適切な到着時刻と考えられます』
「そうかな?」
『少なくとも、遅刻するよりは望ましいでしょう』
ユウは小さく笑った。そのとき、背後から声がした。
「ユウさん!」
振り向くと、リーネがこちらへ歩いてきていた。今日はいつもの商談用の服装ではなく、淡い色のワンピースに薄手の上着を合わせている。髪も普段とは少し違う形にまとめられ、落ち着いた雰囲気の中に柔らかさが感じられた。
「……あ、リーネ!」
ユウは思わず笑顔になった。
「こんにちは。お待たせしましたか?」
「いや、俺もさっき来たところだよ」
リーネは少し安心したように微笑んだ。
「よかったです。今日はよろしくお願いしますね」
「うん。こちらこそ!」
二人は並んで展望施設へ向かった。入口には大きな案内表示があり、宇宙港の歴史や艦艇の発着を紹介する展示が並んでいる。ユウは早速、一隻の大型輸送艦の模型に目を向けた。
「……おお、これ結構古い型式だね」
リーネが小さく笑った。
「ふふ。やっぱり船が気になりますか?」
「……あっ」
ユウは少し照れくさそうに笑った。
「いや、今日は仕事の話はしないって決めてたんだけど」
「船を見るのは、お仕事ではないでしょう?」
リーネは楽しそうに答えた。
「それに、私もユウさんがどんなものを好きなのか、もっと知りたいですから」
ユウは少しだけ驚いた。
「……そっか。じゃあ、ちょっとだけ説明してもいい?」
「もちろんです」
ユウは嬉しそうに模型を指差した。
「この輸送艦、船体の横に大きな貨物区画があるでしょ? これ、積み荷によって内部構造を変えられるようになってるんだよ。今の船でも似た考え方はあるけど、この型式は特に……」
話し始めてから数分後、ユウはふと我に返った。
「……あれ? 俺、めっちゃ喋ってない?」
リーネは笑った。
「はい。でも、とても楽しそうですよ」
「……退屈じゃない?」
「全然。むしろ、もっと聞いてみたいです」
ユウは少し照れくさそうに笑った。
「……ありがとう」
それから二人は、模型や展示を眺めながら、ゆっくりと施設内を歩いた。
*
展望区画へ到着すると、目の前には広大な宇宙港が広がっていた。巨大な観測窓の向こうでは、大型輸送船がゆっくりと係留区画を離れ、小型の連絡艇がその周囲を行き交っている。遠くにはノード・セブンの外壁が伸び、さらにその向こうには無数の星々が輝いていた。
「……すごい景色だね」
ユウが呟くと、リーネも頷いた。
「はい。私も初めて来ましたけど、想像以上です」
二人は窓際の席に座り、飲み物を注文した。しばらくは、目の前を通過する船を眺めながら、他愛のない話をしていた。
「……そういえば、リーネって休みの日は何してるの?」
ユウが尋ねると、リーネは少し考えた。
「そうですね。買い物に行ったり、本を読んだり……あとは、仕事の資料を確認してしまうことも多いですね」
「……それ、俺とあんまり変わらないかも」
ユウが笑うと、リーネも小さく笑った。
「ユウさんも、お休みの日に艦の資料を見ていそうですものね」
「……否定できないなあ」
リーネは少しだけ首を傾げた。
「でも、今日はお仕事を忘れてもいいんですよ」
「うん。そうだね」
ユウは頷いた。そのあと、二人は好きな食べ物や、行ってみたい場所について話した。リーネは商業施設の多い星系で育ったため、自然の多い惑星へ旅行することに憧れているという。
「……自然の多い惑星か。いいね」
ユウは少し考えた。
「そういうところなら、俺も行ってみたいな」
リーネが顔を上げた。
「……本当ですか?」
「うん。宇宙船に乗るのも好きだけど、たまには地上でゆっくりするのもいいかも」
リーネは少し嬉しそうに微笑んだ。
「……それなら、いつか一緒に行けたらいいですね」
ユウは自然に頷いた。
「うん。行こうよ」
リーネは一瞬だけ目を見開いた。
「……え?」
「え? 何か変だった?」
「……いえ」
リーネは少しだけ頬を赤らめた。
「……嬉しいです」
ユウは彼女の表情を見て、なんとなく自分まで照れくさくなった。以前なら、何も考えずに返していただろう。だが、最近はリーネが自分へ向ける視線や、何気ない言葉の意味が、少しずつ気になるようになっていた。
*
夕方になり、二人は展望施設をあとにした。商業区画には柔らかな照明が灯り、昼間とは違う落ち着いた雰囲気になっている。
「……今日は楽しかったね」
ユウが言うと、リーネは嬉しそうに頷いた。
「はい。私も、とても楽しかったです」
二人はしばらく並んで歩いた。やがて、リーネが少しだけ歩く速度を落とした。
「……ユウさん」
「ん?」
「今日は、お誘いいただいてありがとうございました」
「いや、こちらこそ。リーネが行きたい場所を考えてくれたおかげだよ」
リーネは微笑んだ。
「……また、お誘いしてもいいですか?」
ユウは少し驚いた。
「もちろん! 俺もまた行きたいと思ってたし」
リーネは安心したように笑った。
「……よかった」
少しだけ沈黙が流れた。そのとき、ユウはふと、リーネの手が自分のすぐ近くにあることに気づいた。普段なら気にしない距離だった。だが、今日はなぜか、そのことが妙に意識された。ユウが何か言おうとしたとき、リーネが先に口を開いた。
「……ユウさん」
「……うん?」
「また、こうして二人で過ごせると嬉しいです」
ユウは彼女を見た。リーネは少しだけ恥ずかしそうにしていたが、まっすぐこちらを見つめている。ユウはゆっくりと頷いた。
「……うん。俺も、リーネと一緒にいると楽しいよ」
リーネの表情が明るくなった。
「……ありがとうございます」
二人は自然に笑い合った。連絡艇の発着区画へ到着するまで、ユウはいつもより少しだけ、別れの時間が惜しく感じられた。
*
その夜、HM-417へ戻ったユウは、アストライアの艦長室でアイリスから報告を受けていた。
『艦長、お帰りなさい。予定されていた外出は問題なく終了しましたか?』
「うん。すごく楽しかったよ」
『それは何よりです』
ユウは椅子に座り、少しだけ笑った。
「……リーネって、仕事してるときと普段で結構違うんだね」
『どのような点でしょうか?』
「なんていうか、仕事のときはすごくしっかりしてるけど、普段はもっと柔らかい感じかな」
『観察内容を確認しました』
「……いや、記録しなくていいからね?」
『承知しました』
ユウは苦笑した。そのとき、航路管理室から通信が入った。
『艦長、旧第七航路の認証要求について、新しい解析結果が出ました』
ガルムの声だった。
「……おっ、何か分かった?」
『はい。認証要求の残り時間は約三十二時間です。現在の共通認証を利用して、接続先設備の一部情報を追加取得できました』
ユウは端末を開いた。画面には、接続先施設の管理情報が表示されている。
《旧第七航路補助施設》
《管理権限:一部照合完了》
《通航設備:安全確認未完了》
《遠隔観測情報:取得可能》
「……なるほど。まだ通れないんだね」
『はい。ただし、追加で取得した情報に、重要な記録が含まれています』
ガルムは別の資料を表示した。
《施設内保管記録》
《輸送用設備:複数》
《大型構造物:保管履歴あり》
《最終搬出記録:欠損》
ユウは目を見開いた。
「……これ、もしかして」
『YD-09の大型艦建造計画に関連する資材が、接続先施設、またはその周辺に保管されていた可能性があります』
ユウは思わず身を乗り出した。
「……じゃあ、中央接合構造も?」
『現時点では確認できません。ただし、同時期の大型構造物輸送記録が存在するため、調査対象として優先度が高いと判断します』
ユウは少し考えた。旧第七航路の先には、資材集積拠点が存在していた可能性がある。そして、その施設には大型構造物の保管履歴が残されていた。まだ確証はない。だが、少しずつ手がかりが増えている。
「……よし。明日、みんなと相談しよう」
『了解しました』
ユウは端末を閉じ、椅子にもたれかかった。今日はリーネと過ごす時間を楽しみ、基地へ戻れば古代航路の新しい情報が待っていた。仕事も、仲間との関係も、少しずつ変わってきている。
「……なんか、最近楽しいことが多いな」
ユウが呟くと、アイリスが応じた。
『艦長、現在の活動計画は以前より大幅に増加しています。負担についても考慮する必要があります』
「……それは分かってる。でも、みんながいるから何とかなるよ」
『その点については同意します』
ユウは笑った。
そして翌朝。旧第七航路の接続先から、これまでとは異なる通信が届いた。
《認証待機期限:残り30時間》
《接続先設備より追加通知》
《遠隔観測装置:起動可能》
《外部観測要求:受理待機中》
ユウは画面を見つめた。
「……遠隔観測装置?」
アイリスが答えた。
『はい。接続先施設の外部観測装置を、一時的に使用できる可能性があります』
「……ってことは」
『現地へ行かずに、接続先周辺の現在の状況を確認できるかもしれません』
ユウは思わず笑顔になった。
「……それ、めちゃくちゃ助かるじゃん!」
失われた古代航路の先。その様子を、初めて確かめられるかもしれない。ユウたちは、慎重に次の調査へ進もうとしていた。




