12日目~ピラミッドのUFO~
翌朝。
「ふぁぁ……。」
大きく欠伸をしながらテントの入口を開ける。
乾いた朝の風が頬を撫でた。
昨日は暗くてよく見えなかった景色が、朝日に照らされて姿を現す。
どこまでも続く砂漠。
澄み切った青空。
そして、その中央には巨大なピラミッドが静かにそびえ立っていた。
「……すげぇ。」
思わず息をのむ。
写真でも、テレビでも何度も見てきた。
けれど、本物は違う。
何千年もの時を越えて、ただそこに存在している。
「これが……エジプト。」
しばらく見惚れていると、遠くから元気な声が響いた。
「おーーーーい!」
砂漠の向こうから、小さな人影が勢いよく駆けてくる。
身長は俺の半分ほど。
筋肉質な体に、大きな荷物を軽々と担いでいる。
「ダ・ヴィンチがーー!」
近付くなり、大声で叫んだ。
「面白い人間がいるからーー!」
「ピラミッドへ行ってみろって言ったからーー!」
「来てみたぞーー!」
俺の目の前で立ち止まり、じっと顔を覗き込む。
「……お前かーー!?」
「第一声それ!?」
思わずツッコんでしまう。
「ダ・ヴィンチさん、何紹介してるんだよ……。」
「面白いぞーー!って言ってたぞーー!」
「だから来たぞーー!」
なるほど。
あの人、また余計なことを……。
俺は改めて目の前の小さな男を見る。
身長は俺の半分ほど。
がっしりとした体格。
どう見ても人間じゃない。
……ドワーフだ。
その時、ギュルルが空へ向かって鳴いた。
見上げると、ドワーフの後ろにはもう一頭の飛竜が待機していた。
「お前も飛竜で来たのか。」
「そうだぞーー!」
ふと疑問が浮かぶ。
「なぁ。」
「俺たちって、地球人からはどう見えてるんだ?」
AIWatchが静かに答える。
「認識阻害の影響により、飛竜は発光体として認識されマス。」
「発光体……?」
「未確認飛行物体として目撃される事例もアリマス。」
「……。」
「……。」
「UFOじゃん!!」
思わず叫んだ。
「うおおおーーー!!」
「謎が!!」
「また一つ世界の謎が繋がったぁーー!!」
「そのような見方もされてイマス。」
「いや、そういうことじゃない!」
「俺の中で今、オカルトと世界史が一本に繋がったんだよ!」
「幸サンのテンションが上昇してイマス。」
「当たり前だ!」
ドワーフは首をかしげる。
「よく分からんけどーー!」
「面白そうだぞーー!」
「お前はそれでいいのか!」
そんなやり取りをしていると、ドワーフが突然飛竜へ飛び乗った。
「いくぞーー!」
「え?」
「どこへ?」
「いけば分かるぞーー!」
「説明しろよ!」
結局、半ば強引に飛竜へ乗せられ、そのまま空へ飛び立った。
砂漠の上をしばらく飛び続ける。
やがて、一風変わった巨大な建造物が見えてきた。
飛竜はゆっくりと高度を下げ、砂漠へ降り立つ。
目の前には、六段に積み重なった巨大な石造建築。
「……これが。」
近くで見ると、その迫力に圧倒される。
「ジョセル王の階段ピラミッド……。」
「おれのご先祖ーー!」
ドワーフが胸を張る。
「イムホテプの友達ーー!」
「……え?」
思わず振り返る。
「今なんて言った?」
「イムホテプの友達だぞーー!」
「歴史上初めて名前が伝わる建築家とされる、あのイムホテプの!?」
「そうだぞーー!」
「マジでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
AIWatchが静かに補足する。
「イムホテプはジョセル王に仕えた建築家・宰相・医師として知られてイマス。」
「当時、王の墓は『マスタバ』と呼ばれる長方形の墓が一般的デシタ。」
「ジョセル王のため、そのマスタバを六段に積み重ねた建築が、この階段ピラミッドデス。」
「世界初の本格的なピラミッドとされてイマス。」
「うわぁ……。」
俺は思わず見上げた。
これが、始まり。
後の三大ピラミッドへと繋がる、人類最初の挑戦。
「よしーー!」
「登るぞーー!」
「えっ!? 登るの!?」
「いくぞーー!」
その日、俺たちは階段ピラミッドを登ったり降りたりしながら、何千年も前の技術に思いを馳せた。
気が付けば夕日が砂漠を赤く染めていた。
「酒持ってきたぞーー!」
ドワーフが大きな袋を掲げる。
「飲むぞーー!」
「えっ!?」
「俺、アトランティスに来て初めて酒飲むわ!」
「乾杯だぞーー!」
「アルコールノ過剰摂取ニハ注意シテクダサイ。」
「今日は無礼講だ!」
夕日に染まるジョセル王の階段ピラミッドを眺めながら、俺たちは夜遅くまで笑い合った。
そして。
俺は見事に酔いつぶれた。




