~プロローグ~
~プロローグ~
……。
目を開けると、辺り一面真っ白な世界だった。
空も地面も境界がなく、ただ白だけがどこまでも続いている。
(ここは……。どこだ?)
突然、豪快な笑い声が響いた。
「カーッカッカッカッ!」
振り向くと、白髪白髭の老人が立っていた。
立派な杖を手にし、その両脇には二人の天使が控えている。
老人は穏やかな笑みを浮かべた。
「和田幸。君は死んだんじゃ。」
「……。」
「……え?」
頭が真っ白になる。
老人は隣に立つ天使へ視線を向けた。
「お供天使。」
「はい。」
天使が軽く一礼すると、空中へ手をかざす。
淡い光が集まり、一枚の半透明な資料が映し出された。
【対象者、和田幸】
年齢・三十一歳
職業・コンピューターエンジニア
死因・事故死(死因は不明。とにかく事故)
趣味・神話、遺跡巡り、プロレス観戦、アニメ鑑賞、ガンプラ製作。
「うむ。」
「さて、本題じゃ。」
その一言で空気が変わった。
「君にはこれから四十九日間、アトランティスで過ごしてもらう。」
「四十九日間の旅を終えたあと、お主は三つの道から一つを選ぶことになる。」
「一つ、新たな世界へ転生。いわゆる異世界転生じゃな。年齢職業は転生時にある程度固定されると思うとよい。」
「アトランティスは1つの異世界を終えた転生者の保養地でもあるぞ。」
「二つ、アトランティスへ永住。この場合、お主は老いることも死ぬこともない。 永遠の時をアトランティスで生きることになる。
これを選ぶ者は少ないがな………」
「三つ、魂としての役目を終え、静かに消滅。生というのは本来そういうものじゃ。生まれては消える。草木が枯れて土に帰るのと同じじゃな。」
俺は恐る恐る尋ねた。
「皆さん、どれを選ぶんですか?」
創造神は静かに答える。
「昔から最も多いのは消滅じゃ。人生を全うし、満足して眠りたいと願う者が多い。」
「転生を選ぶ者は、ごく一部じゃった。」
「……じゃった?」
お供天使が一歩前へ出る。
「近年、その割合が大きく変化しております。地球で異世界転生作品が流行した影響で、転生希望者が急増しております。」
「現在、天界は大変混雑しております………」
「……え?」
「それが原因なんですか?」
創造神は頭を掻きながら笑った。
「カーッカッカッカッ!」
「儂も予想外じゃった!」
「では、四十九日間の旅を楽しんでくるがよい。」
俺は慌てて一歩前へ出る。
「ちょっと待ってください!」
「俺、異世界なんて行きたくないです! 闘いとか無理で!」
「消滅だって……まだやりたいことが……。」
「それにアトランティスって? まだ聞きたいことがたくさん……!」
創造神は豪快に笑った。
「カーッカッカッカッ!」
「ワープじゃ! あとはあやつに任せるとするわ。」
「えっ、ちょっ……!」
「……まだ……聞きたいことが……!」
・・・。
幸の姿は、その部屋から消えた。
静寂が戻る。
創造神は杖を肩に担ぎ、小さく笑った。
「さて、あやつなら上手く案内してくれるじゃろ。」
「はい、ポセイドン様なら安心かと。」
天使が静かに答える。
創造神は部屋の奥へ歩き出した。
その先には、硝子窓で隔てられたもう一つの部屋がある。
そこには壁一面を埋め尽くす巨大なモニターが並び、それぞれに異なる世界の景色が映し出されていた。
幸はまだ、その部屋の存在を知らない。




