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婚約破棄の慰謝料として呪われた公爵領を貰ったら、公爵様が超絶美形な上に私の魔力で呪いも解けて、幸せすぎて死にそうです  作者: おーちゃん


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最終話

最終話 


 ラザフォード公爵領が、大陸で最も美しく、豊かな聖域と呼ばれるようになってから、数年の月日が流れた。

 私を無能と呼び、泥の中に突き落としたロセッティ王国のエリオット王子や、実家のバレンタイン伯爵、そして神聖オーギュスト帝国のステラ嬢たちの企みは、今や遠い過去の出来事となっていた。

 彼らは自らがまいた憎しみの種によって、それぞれの国で権威を失い、今は歴史の闇へと消え去っている。

 一方で、私たちが築き上げたこの領地は、私の浄化の光と、アルヴィン様の鉄壁の守護、そしてシルヴァンの精霊の加護によって、誰もがうらやむ理想郷へと進化を遂げていた。


「リリアーナ、まだ眠っているのか。あまりに寝顔が愛らしすぎて、このまま時を止めてしまいたくなるな」


 耳元で囁かれる甘く低い声に、私はゆっくりと瞳を開けた。

 視界に飛び込んできたのは、数年前と変わらぬ、いや、より一層深い慈しみを瞳に湛えたアルヴィン様の姿だった。


「おはようございます、アルヴィン様。時を止められては困りますわ。今日は、新しく完成した大聖堂の落成式ではありませんか」


 私が起き上がろうとすると、アルヴィン様は当然のように私の腰を抱き寄せ、そのまま胸の中に閉じ込めた。


「そんなものは中止だ。と言いたいところだが、君が何ヶ月もかけて準備してきたものだからな。だが、式典が終わったら、残りの時間はすべて私のものだ。一分一秒たりとも、君を誰の視線にも触れさせたくない」


「ふふ、相変わらずですわね、アルヴィン様」


 私が微笑んで彼の頬に触れると、バルコニーのカーテンが風に揺れ、銀色の光が部屋に舞い込んだ。


「主、公爵の朝の独占欲に付き合っていたら日が暮れちゃうよ。見て、街の人たちが君を待って、広場を花で埋め尽くしているんだ」


 シルヴァンが窓枠に腰掛け、軽やかに告げた。 彼の指先からは、祝福の光を宿した七色の花びらが溢れ出している。


「シルヴァン、あなたも準備はいい?」


「もちろんだよ。僕はこの領地のすべての草木を使って、君が歩く道を一番美しい緑で飾ってあげる。まあ、隣にいる不機嫌な死神公爵の魔圧で、花が萎れないように気をつけなきゃいけないけどね」


「貴様、祝いの席で消し飛ばされたいようだな」


 アルヴィン様が冷たく言い放つが、その声に以前のような殺気はない。二人は今や、私を守るという一点において、奇妙な信頼関係で結ばれていた。


 式典が始まると、領地中の人々が広場に集まり、私を歓声で迎えてくれた。

 以前に私を疑い、恐れていた人々も、今では心からの笑顔で私を私たちの聖女様と呼んでくれる。


「リリアーナ様、ありがとうございます。あなたのおかげで、この領地は生まれ変わりました」


「聖女様に救われたこの命、一生忘れません」


 老若男女、多くの人々が私に手を振り、花を投げてくれる。

 私はアルヴィン様のエスコートを受けながら、大聖堂へと続く道を一歩ずつ踏みしめた。

 私の足元からは、浄化の魔力に反応した白い百合が次々と咲き乱れ、シルヴァンが操る柔らかな風が、その香りを領地全体へと届けていく。


「リリアーナ。見ろ、これが君の創り上げた世界だ」


 アルヴィン様が、私の耳元で誇らしげにささやいた。


「君を追放した者たちは、君という光を失って滅びた。君の手を取り、君の光を信じた。その結果が、輝かしい景色だ。君を選んだ眼は、歴史上どの王よりも正しかったと言えるな」


「いいえ。私を信じて、守り続けてくださったアルヴィン様がいたからこそ、私は光り続けることができたのですわ」


 式典の最後、大聖堂の最上階にあるバルコニーに、私とアルヴィン様は立った。

 眼下には豊かな森、清らかな温泉の煙、そして幸せに満ちた人々の営みが広がっている。


「主、これからも僕はずっと君の影として、この大地から君を支え続けるよ。君が笑うたびに、この森はもっと強く、美しく成長するんだ」


 シルヴァンが私の肩に透き通るような精霊の加護を授け、風となって空へ舞い上がった。

 アルヴィン様は私の右手をとり、その指に嵌められた、あの新婚旅行で贈られた真珠の指輪に、誓いを立てるように口づけをした。


「リリアーナ。世界がどう変わろうとも、愛は変わらない。君が望むなら、いつまでも君を甘やかし、守り、愛し抜こう。君は光であり、すべてだ」


「はい、アルヴィン様。私も、永遠にあなたの隣で、この楽園を照らし続けますわ」


 私たちが寄り添い、領地を見渡すと、空にはシルヴァンの操る花吹雪と、アルヴィン様が魔法で描いた虹の架け橋が重なり合った。

 幸せすぎて、死にそう。絶望の淵にいた私に、誰かがそうささやいたなら、私はきっと笑い飛ばしていただろう。

 けれど今、私は確信している。愛されることを知り、人を愛することを知った私の人生は、これから先もずっと、この眩しい光の中で続いていくのだと。


「リリアーナ、愛している。さあ、今夜の祝宴が終わったら、今度こそ二人きりで」


「アルヴィン様、気が早すぎますわ」


 私の笑い声が、祝福の鐘の音と共に、どこまでも遠く、澄み渡る空へと響き渡っていった。


(完)

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