132.美少女(少年)現る
「ユラ様。長居をしても無意味です。手短にいきましょう」
リアンヌさん、目が笑ってないから半分本気だろうな。流石に縫われるのは可哀想である。
「異論なし。で、お姉様方」
「アタシ達に聞いたって何も出やしないよ!」
そうだそうだと再び騒ぎ出したので、人型の光の脇腹を肘で小突く。
『…神官達は何処にいますか? この上は祈りの場なはずです。しかし、ヒトの気配が全く感じられません』
「あら、そんな事もわかっちまうのかい? やはり神の気配を持つ方は違うねぇ〜。それにしてもアンタ、ホント良い男だねぇ」
オバチャン、私と態度が違いすぎなんだけど。
『確か、書物もこの塔の中に保管されてますよね』
おぉ、光がマトモな事を聞いている!
生長した我が子を見るようだ。いや、子や夫も、彼氏すらいないけどね!
「特に荒らす気はないんですよ。ただ、闇について何かヒントがないかなと思って立ち寄ったんです」
「アンタ、正気かい?」
あれ?
怖いものなんてなさそうな熟女達の空気が一気に緊張感へと変わった。
「仲が良くないのは承知ですけど」
「話す事なんてないさね!」
後退りして手を前に出し拒絶し始めた彼女達に近づこうとしたら。
シュッ
しゅって何?
「ぎゃあああ!」
「痛いょお!」
おば様達の悲鳴と床にいくつも転がった…手。
「うるさいなぁ」
声がした方に目を向ければ崩れた塀にフードを深く被った少女がちょこんと座っていた。
「あ!先に手当をしないと!」
「前から死んでるじゃない。見ればわかるでしょ。ほら」
少女が黒く細い棒切れを痛みで転げ回るおば様達に一振りした瞬間、彼女達は散り散りに飛んだ。
「え、飛ぶ?」
いや、おば様は飛んだついでに消えてしまった。
あんなに賑やかだったのに、いきなりの静寂さが逆に不安になる。しかも、この女の子は。
「そう、おばさんの予想通り闇の民よ」
首をふるりと振り自らフードを外した子の顔が露わになる。
「美少女…いや少年?」
「まだ両性だからどっちでも。悩んでるんだよねぇ。服とかは女の子のがアレンジしがいがあるわよね」
真黒な髪を赤いサテンのリボンでポニーテルにした美少女(仮)は、しょっぱなからぶっ飛んでいるようだ。
「あ、アンタ、私が殺しそこねた奴だ。あれ?前よりなんか太った?ひ弱なくせに図太いよねぇ」
「訂正だ。クソ生意気な君の性格をお姉さんが鍛え直してあげよう!」
子供だからって、言って良い事と悪い事があるんだからね。
「美少女、まずは降りてきなさい」
殺しそこねたって、私をよね。いつのかしら。しかし、やはり太ってしまったか。体重計はないけど着ている服のボタンが少々キツくなっているのは気づいている。
でも、人に指摘されると苛々が倍増するのは何故だろうか。
「君の呼び名は、ひねくれ美少女ちゃんね」
顔が可愛いのは認めてあげよう。
「おばさん、頭の中大丈夫?」
「お姉様とお呼び」
まず、ここ大事だから。
ナウル君「また強烈なの出てきちゃいましたよ」
リアンヌ「言葉の使い方を教えないと」
モヴブン「あの持っている魔法具は興味深い」
ラジウス「ハァ」また変な奴が増えた。
「ちょっと、皆!緊張感なくない!?」
「「貴方が無さすぎなんですよ」」
え、私?




