130.迷いなし
「穴を開ける一択しかないわよ」
最近、結論を出すのに時間がかかる私にしては珍しくも即答したので変な間が空いた。
「もうジメジメと暗闇は無理だから。それに落ちてくるなら防げばよいし」
この世界は、魔法があるんだから。
「こんな時こそ、魔法の出番でしょ。風、思いっきりいっちゃっていいわよ! 日頃の鬱憤はらしなさいよ!」
大人しい子ほど苛々を溜めちゃうじゃない? 我儘な火を宥めたりしてくれる君には感謝している。
「えー、光は瓦礫が降ってきた場合の防御ね。君だけでは不安だから土も出来る?」
なんせ天然な光である。備えあれば憂いなし。
「で、ラジ達は、荒ぶる人達がいたらやっつけ係ね」
「「……やっつけ係」」
ラジとナウル君の声が揃った。私、ちなみに復唱してとは言ってないからね。
「じゃ、早速だけどやってみよう!」
「元気だな」
モーさん、違うんだって。
「暗い空間、病みそうだから」
イレギュラーな出来事もある程度は慣れてきたはずなんだけど。
「私、多分この閉鎖的空間にいると確実におかしくなる」
一時間後か二時間後か。いや一日くらいは保つかもしれない。
そんくらいしか待てないのよ。
「すぐ出られる。ラウル」
「はい!」
すれ違う時、ラジが頭をポンポンされた。
こういう時、ラジや皆は、私に何も言わない。駄目な奴って文句を言えばいいのに。
「リアンヌ、落石に備え援護してくれ。ユラ、防御とコレが邪魔だ」
「うわっ」
「ギュイッ!」
ラジは、テキパキと指示を出しながら、頭に張り付いていた子ワニを乱暴に剥がすと私にぶん投げてきた。
「ギュー!」
「何よ!受け止めてあげたんだからお礼を言うべきでしょ!」
何で、そんな不服そうな態度なわけ?
「やはり食料に」
「遊ぶのは後だ、行くぞ」
遊んでないと反論しようとしたけど、ピリピリとした空気がこっちにも伝わり仕方なく諦めた。
「覚えてなさいよ」
「ギ!ギッ!」
反抗的な鳴き方をし、尾をブンブン振る憎たらしい子ワニを横に抱え、防御の膜を張った。
「ゆっくりでいい」
「はい!」
一気にドッカーンを想定してた私は、ナウル君が小さく穴を開け、それを徐々にラジが崩していき広げていくという慎重さに意外性を感じつつ落下してくる岩をある時は粉々にし、ある時は遠くへ飛ばしていくという事を暫く繰り返して、飽きてきたなと思った頃。
「光だ」
眩しい光が私たちを照らしてきて。それは良いけど、なんか暖かいというか暑くない?
「手に足を掛けろ」
頭上に穴を開けたので、補助してもらい、なんとか穴から半身を出せば。
「えっ!地面から人よー!」
「ヒッ!だれぇ!」
「キャー!!」
湯けむり漂う、お風呂場だった。
カコーン──。
私の脳内にそんな音がしたのは言うまでもない。




