123.なにやら難しくなってきたぞ
「乗せてくれた事には感謝する。だが、内輪の事には口を挟まないでもらいたい」
切り捨てるような発言はカッコイイけど。
「まだガキねぇ」
「──なんだと?」
「どうぞ。熱いですよ。マイン様もよろしければ」
「あら、良い香り」
ナウル君が、怒り爆発みたいなマイン君の目の前にも珈琲を置いていく。ちょっと気がそれたわね。
「まず、神器に頼る時点で貴方達の国内での立場はかなり弱い。偶然なのか知らないけど運良く私達を見つけてあわよくば、このカブちゃんの中で神器を奪おうというくらい焦っている」
眠る直前まで君の視線は私ではなく私の腕に注がれていた。それは今も。
「フルーレちゃん、さっき言いかけていた続きを教えてもらえる?」
珈琲カップを包むようにしていた手があからさまに揺れた。
「姉上、部外者に」
「この方は、部外者ではありません」
「な、姉上?」
弟は、どうやら姉に弱いようね。見た目はフルーレちゃんのが断然、繊細に見えるんだけど。
「ユラ様。弟は、膨大な魔力を保持しておりますが、その力は身体の許容を超えており暴走した際にはとても危険な存在なのです。また私は、王族の中では一番魔力が少ない。ですが、現在王家の血を受け継いでいるのは私達のみ」
「姉上」
「私達は、幼い頃から王家の恥と呼ばれていました。ですが、火の国が動き出す前に生き残った者達をまとめ上げないと王家どころかシャイエの民が消えてしまう」
フルーレちゃんの話で、そういえば光に戦を仕掛けたのは火の国だったと思い出す。
「やっぱり労働力目的で連れて行かれたりしている人がいる?」
「あぁ。シャイエにいるのは年寄りと子供がほとんどだ」
ここまで話をしていて、私は気づいてしまった。
「ただ、何か闇に対抗できるヒントがないかなってだけで軽い気持ちでここまで来たんだけど」
その捕虜になっている人達も何とかしないとな雰囲気になってきた。
「私は、ただの会社員なのに」
深刻そうな王女様の前では口にできないが、心の中では面倒くさいと愚痴れば光が話しかけてきた。
『火の国へ行くのですか?』
「いや、ちょっとそこまでみたいな軽い口調やめてくんない?」
こういう時の光って、ほんと他人事なのよね。
「あー、もう!しょうがないな。マイン君も座りなさいよ。話しが長くなるから。ナウル君、なんか食べ物出してー。甘いのね。あと珈琲もおかわりするから用意お願い。リアンヌさんとラジ達も座って。ノアは、癒やしだから私の膝ね」
「キュイ!」
ノアを呼べば即、返事をし飛び乗ってきた。可愛いヤツめ。
「さて、一個ずつ片付けていくわよ」
人数が多いほど、良い案もでるかもしれないもの。
こういう時、一人じゃなくて良かったとつくづく思うゆらだった。




