121.マイペースなメンバー達
「らしくないように感じるが」
私がステップで陣取っているせいでカブちゃんの中に入れないモーさんがボソリと呟いた。
「ナウル君には優しくてこの子達には冷たいって事?」
返事がないので正解らしい。
「慎重にもなるでしょ。カブちゃんに二人を乗せて、もし攻撃されたら?」
この後、数日間を地中で過ごすのだ。その際に狭い限られた空間で暴れられでもすれば負傷者が出る可能性は高い。また、とりあえず地上に出るとしても、そこが安全とは限らない。
一番は、乱闘騒ぎでカブちゃんが壊れたら困る。
「それに真面目に話をするなら本来の姿でお願いしたいかな」
私の言葉に二人の子供は手を繋ぎ目を閉じた。程なくして彼らから金色の煙が吹き出す。
それも、かなりの勢いで。
「ちょ、毒ガスとかじゃないわよね?!」
地の国での地下での出来事が蘇り、つい手で口と鼻を覆う。
『害はないですよ。むしろ癒やしの効果があります』
光が教えてくれるけど、安心はできない。しかも癒やしってどんなよ? モチベーションを上げてくれるとか? 最近、お酒しか楽しみがないんだけど。それをなんとかしてくれる?
「あ、飲まれない身体に強化されるとか!」
『解かれました。魔力の保持量はなかなかですね』
「今、サクッと無視したでしょ?!」
私と全く視線を合わせない光の肩にチョップをお見舞いするも、ダメージはゼロのようだ。仕方がないので光の視線の先を見た。
「お〜、双子なのね。あれ?あまり変わらない?」
金髪の金眼で顔は少しシュッとしたかな。
「先程より倍近く魔力が増えている」
モーさんが、ボソッと教えてくれるも魔力がないので相変わらず何も感じない。
「いや、モーさんは何を始めているの?」
「長引きそうだから」
彼はカブちゃんから漏れる明かりがより強い場所へと移動して何やらナイフで木を削っている。随分他人事な態度である。
「あの」
「ああ、ごめんね。元の姿も双子なのは分かったわ。それで用件は何かな? 残念だけど光の神器はあげないわよ?」
うっという表情のフルーレちゃん。可愛いけどこればかりは無理だなぁ。
「ソレは、我々の国の物だ」
マイン君は、フルーレちゃんとは対象的で前に数歩進み出てきた。なかなか良い目をしている。
「光はさ、まだ私がこの世界に来たばかりの時に冬の神から渡されたの。戦で敗れた国のだと言っていたかな」
話しながらも隣の光の様子を覗えば、いつもと変わらず、ボーッとして見える。
「ならば貸して頂けませんか? この場を通るという事は、シャイエに行かれるのですよね? シャイエに着いてから数日間、いえ、1日でもよいのです!」
必死さは伝わってきたけど。
「カブちゃんに乗せてあげて光を貸し出した私に何か利益があるの?」
「利益ですか?」
「そうよ」
がめつい私は、タダでは動かないわよ。
「それに貸し出したとして、その先は? 予想では国から逃げてきた感じよね? 誰が王になるかの争いに負けそうになってとか。初対面の怪しげ集団にわざわざ名前を明かす時点で利用意欲満々よね」
神器達も息抜きが必要かなと、人型になっていたし、気づく人はすぐに分かるのかな。
「まー、いいや。入って」
「え?」
双子は、見事にポカーンと口を開けている。最近よく見る光景だけど。
「そんな大きな口を開けてたら虫が入るわよ」
「……乗せてくれるのか?」
マイン君の言葉に中に入る扉に手をかけながら振り返り彼らを見下ろした。
「戻るという事は、王になると決めたのよね? ならば光の、シャイエに着くまでに私に見せて」
「な、何をお見せすればよいのでしょうか?」
双子の片われの女の子、フルーレちゃんが、じっと見つめてきた。
「今の君達には、ハッキリ言って自分が光の民なら命を掛けよう、付いていこうとは思えない」
美しく、弱々しい双子の若者。
「だから態度で、その口で私をその気にさせて」
味方に、力になりたくなるように。自分達には価値があると。
「なかなか難しい事を仰る」
リアンヌさんが、いつもとは違う低い声で小さく呟いたけど、なんか楽しそうですよ?
「出来た」
どうやらモーさんは、私が説明した箸を作ったようだ。膝の上には、花の柄を彫りこんだ匙まである。どんだけ器用なんだか。
というか皆、マイペース過ぎよ。
「まー、こんな感じの個性的メンバーだけど。どうぞ」
皆の戦闘能力は高いのに、締りのない終わりになったのは私のせいじゃないはず。




