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118/132

118.私は、色恋に鈍いようです

「あ、丁度良いところに! なんか楽しい話とかしてよ」

「あるわけないじゃないですか」


通りかかったナウル君に声をかければ、この塩対応である。まぁ本来の調子が戻ってきたのか。


「小ワニ〜、そろそろ人型にならないの?」


ツーン


「いや、なんで思いっきり向きを変えるかな。ただ聞いただけじゃないの」


長椅子のような出っ張りに寝そべる小ワニに話を振れば、これまた冷たい反応。


そんなムカつく小ワニは、まだ人型の形をとれていない。ただし最近は目つきに知性を感じるので地下で会った時の姿になるのも時間の問題だろう。


「しっかし、色々ぶっ飛んでるわよね〜」


皆それぞれカブトムシの乗り物の中で過ごしている姿は、かなりリラックスしているのでそこは嬉しい誤算である。


「なんせ広いこと」


カブトムシの中は、有に大人5.6人が暮らせるのだ。しかも小さいながもトイレやお風呂付きの個室まである。中央の開けた場所は皆で食事や会話をするスペースにしているんだけど。


「マート君が、自慢げに歴代の王達が改良してきた種だとは言っていたけどさ。助かるけど、納得できないわ」


バスのサイズなら、中もその広さだろうという考えから切り替えができない私は、柔軟性がないのだろうか。


「私は、それよりもこの形態を選択したのが不思議だが。これは、飛ぶ生物だろう? 地中移動には適していないように思うのだが」


「モーさん、その通り。カブトムシは成長すると地上にでてくる夏の定番の虫よ」


種は、植えた人の影響を受けるとは教えてもらったけど、なんか違った。


「まぁ、かといって地中で生活する生き物って、モグラとミミズくらいしかぱっと思いつかないし」


モグラなんて子供の頃に小学校の行事の山登りの途中で目にしたくらいだ。しかも既にお亡くなり状態で、近づくのもなと遠目から見ただけ。


「ミミズに至っては、あの動きがどうもなぁ」


そうなるとカブトムシ、結構マシかもしれない。


「光のシャイエの地図を見ているのか。文字は読めないが、熱心だな」


モーさんが、近づいてきて台に広げてある紙切れを見ている。それには私の汚い字で書き足してきた日本語がアチラコチラに書かれている。


「こっちの世界の文字も書けるようになったんだけど、やっぱり母国語が楽でね」


「救世主と呼ばれる程の力を手にしても不安か」


だらしなく肘を付き窓に目を向けながら、モーさんの言葉をぼんやり考える。


「正直、不安しかないわよ。光の国の情報も数年前のものしかないし」


いや、未知の異世界だし。


「……でも、だから事前にできる限りの事はしておきたいかな。最悪な場合とそうじゃない場合とか」


頭の中だけではなく、やはり書くと整理がしやすいのよね。


「なんか、地下鉄みたい」


「同じ物が異界にもあるのか」


「ないわよ。ただ、決まった場所に停車する乗り物はあるわ。地下鉄って地下に作られた道があるんだけど、この閉鎖的な空間や時々見る光が似てる」


光る正体は、通過の駅などではなく、鉱石だとリアンヌさんに教えてもらったけどね。


「都心も嫌じゃなかったな。色んな人がいて、田舎より人間関係は淡白かもしれないけど。あのザワザワとした感じを珈琲やお酒を飲みながら、上から眺めているのも悪くない。あ、意味分かんないわよね。気にしないで」


隣に座ったモーさんが静か過ぎて窓から彼に視線を移せば、私と同じ窓の外を見ているようだ。


「私は、このような流れになるとは予想していなかった」

「敵だと知られて、シャイエに私達と行く事が?」


ウムと頷いているので合っているらしい。


「私は、悪くない選択肢だったと感じている」


やっと私の方を向いたモーさんは。


「先は読めないのも。それも、また面白い」


モーさんが笑った。決して爽やかではなくフッとした笑みだけど。よく観察するとモーさんは、無表情ながらも渋い良い男なのよ。


「ユラ様、お茶をどうぞ。モゥブン様も」

「ありがとうございます」

「すまない」


リアンヌさんが冷たいお茶とカヌレに似た焼き菓子を出してくれたのだが、この時、なんか違和感を感じた。


「ユラ、ちょっと来てくれないか。盤を見ると地上で開けてた場所を通過するようだが、休憩をとるか?」

「おー!外の空気を吸いたいわー!」


ラジに話しかけられ、私は、一瞬にして何かが心にひっかかったはずの事を忘れた。


実はこの後にモゥブンとリアンヌがくっつくのだが、この時のゆらは、まだ知るよしもなかった。










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