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116.やっぱり、なんか憎めないのよね

いよいよ明日、風の国ミュランから光の国へと出発する。それに伴い、このガーファンク城は、必要最低限の人数を残し解散となる。


「あ、シェリーさんとダンカンさん」


その為、お城の皆に今後の説明を先程終え解散となったが、背を向け退出しようとしている二人を呼び止めた。


「あの、何か粗相をしてしまいましたでしょうか?」


おずおずと上目遣いの三編みのメイドさんって、好きな人にはたまらないわよね。


「ユラ様、失礼ながら夕食の支度が」


ガッチリとした騎士のような体格だけど副料理長であるダンカンさんは困ったように眉毛がハの字の状態である。優しげなのにガタイがイイ。これも好きな人はいるだろう。


「直ぐに終わる話よ。できればお願いしたくてね。あ、これはサービス」


二人にクリスタルのような小さな石を一欠片、革紐に通しただけのネックレスを差し出した。


「ん、とって」


左右に突き出したそれらを戸惑うように見る二人に早くしなさいと圧をかければ、それぞれ手を伸ばしてくれた。


「で、単刀直入に言うと出発時間を半日くらいずらして報告してくれないかな? 大幅にとは言わない」

「あの」

「何を仰っているのか」


いかにも二人は訳がわかりません顔である。


「その初々しい表情や戸惑いの演技は素晴らしいけど、省いていいわよ。貴方達の長、陛下に私はこの世界を征する気はないとも言っておいてもらえるかな?」


ただ、あの男なら本人の意思は関係なく利用される場合もあるとか言いそうか。


「そうね、殺られたらではなく、殺られる前に殺る。今の私はソレができると追加して」


二人が握りしめたままの物を見て説明していなかった事に気づき、ざっと伝える。


「そのネックレスの石は保険よ。攻撃力はないけど魔術、また物理的・精神への攻撃に対して防げる。期間は約一年よ」


まぁ、私に密偵がバレたからって拷問とかしないとは思うけど。


「いつから」

「ん?」

「いつからご存知で?」


砕けた口調になったダンカンさんは、頬をポリポリと掻いている。なんか可愛いわね。


「わりと最初から」


履歴書もどきを書かせて面接した時に、なんだかアンバランスだと感じたのが最初か。ちなみに彼の隣にいるシェリーさんも同じ理由である。


「お人好し過ぎてとても不愉快です」


シェリーちゃんは、可愛い顔してなかなかのバッサリ系である。


「なんとでも言っていいわよ。ただ、私は縁が出来た人達はできる限り守りたいだけ」

「偽善だなぁ」


ダンカンさんも呆れている顔だ。


「とある人に言われたわ。アレもこれも助けたいなんて無理だと」


分かっているのよ。


「頭では理解できるけど、なんか癪じゃない。だから手が届く場所までは必ず護る」


今は、両手に収まる範囲、まだそれだけが精一杯だ。


「時をずらして報告するっていうのは何か目的が?」


二人共真面目な顔しちゃってるけど。


「なんとなくかな。監視されているのもストレスなのよ。だから嫌がらせよ」


あのポーカーフェイスをほんの少し崩してみたい。


「あとは、単に美味しいお菓子を作ってくれて毎朝花を飾ってくれたお礼を言いたかったから」


今度は、ポカーンとしている。二人共、中々の美人とイケメンなのに口が開きっぱなしなのが残念である。


「予定では、またこのガーファンクに戻るから。その時にはよろしく。あ、今は時間ないから無理だけど手合わせお願いしようかな」


メイドと菓子職人の戦闘スタイルなんて気になるわ〜!


「じゃ、それだけ。呼び止めてごめんね」


解散っと歩きだせば。


「今夜はデザートにパイを出しますから〜」

「お茶は渋味が強い茶葉に致します」


だから、なんか憎めないんだよねぇ。


「大きくカットしてね〜! お茶は二杯目はミルクいれて飲むからよろしく〜!」


ああ、また太りそう。


「城内を走るか?」

「勝手に心を読まないでよ」


通路で壁に寄りかかっていたラジに大真面目に聞かれた。


「お腹に視線を送るな!」


失礼な奴ばっかりだ!


だがしかし、ちょっとポッコリしてきたような。


「……お酒とか賭けて競争しない?」

「走る意味があるのか? それに最近飲み過ぎだ」


イライラッ


「やっぱり走らない!」


おかんな騎士は嫌いだ!



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