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114 .リアンヌとラジウス

「ラジウス様」


リアンヌは、ナウルの部屋からは死角になる場所で壁に背を預け気配を隠しながらも周囲を警戒している、かつての教え子でもある彼に声をかけた。


「また文句でも言いに来たのか?」


一見、表情に変化はないように見えるも、幼少期からみていたリアンヌにはお見通しであった。


「いいえ。一つ、お願いをしに」

「俺にか?」


ラジウスは、まるで不気味な生き物を発見したかのように眉間にシワを寄せた。以前はこのような些細な動きも見せなかった。


気高くも滅びた一族の末裔の子。


それが今やどうだろうか。

やはり、彼女の存在は大きい。


「あのお嬢さんが大事?」

「……分かっていて問うのはらしくないな」

「ならば、ラジウス・ノーア、いざという時は、お前が相手の息の根を止めなさい」


かつての師として命じた。彼女が本当の意味で手を汚す前に貴方が相手を切り捨てるのだと。


「無論、彼女が危ない場面で前に出させるつもりはない。だが、何故今になってそのような事を?」


違うのですよ。今ではなく出会った時に視えていた。まだ、彼女の未来は少し軌道が変化したのみ。


──否。


「多くの血が流れる未来は、未だに変わらない。だが、ひと欠片ほどでも変化がでているのは確か」


重要なのはそこではない。


「彼女が自分で無意識に決めている一線、人を殺めてはいけないというソレを超えてしまえば」


目がやっと合いましたね。


「──彼女は間違いなく壊れる」


ああ、でも。


「壊れたら、貴方と添い遂げられる可能性は高い」


戻るという思考さえなくなるだろう。


「ええ。ラジウス様は望んでおられない。勿論、彼女も」


そんな形で欲しいわけではないと今までの行動で充分すぎるほど理解できますよ。それにわたくしを睨みつけてもどうにもならない。


「光はまだいい。闇の国に入るときに気をつけなさい」


あそこは、自分さえ知らなかった心を知ることになる。


「強く自分を信じなさい」





***




距離をとりユラのいる部屋に視線をおいているとリアンヌが気配を消し目の前に現れた。小言でも言いに来たか。


「お前が息の根を止めなさい」


わかりきった事を言われた。


「間違いなく壊れる」


そんなのは近くにいれば予測はつく。壊れたら手に入る?馬鹿馬鹿しい。


まぁ、もしユラが壊れた時は、それはこの世界が崩壊する時でもあるだろう。


今のユラは神器と一体化に近い。


あの神器達は、彼女の怒りを悲しみをそのま外に出す事に迷いなどない事は、神々を呼び出した力で証明済みだ。


『──私は、死にたくない。絶対に生きて帰る』


死への恐怖、帰れないかもしれないという不安。それでも諦めない姿。


「抜け殻では意味がない」


生きている、今のユラが欲しい。

手に入らないならば、彼女が望む元の世界へ帰すまでだが。


「意味深だな。強く信じろとは何をだ?」


去った後、再び一人になったラジウスは、ぼんやりとリアンヌの言葉を考える。


「……いつか、彼女にとって俺が枷になる?」


まさか。


俺は、まだそこまで踏み込めていない。


「誰? ラジじゃない。いたの?」

「ああ」

 

消していた気配を緩めれば、ドアから出てきたユラは直ぐに気づいた。明るい表情からナウルと話がついたのか。


「ちょうど良かった。ナウル君も食堂連れて行くから一緒に食べましょ!」

「歩けるか? 掴まれ」

「いえ! 大丈夫です! あっ」


まだふらついているナウルの腕を掴み自分の肩に回させる。


「お〜! いいね〜! 上司と部下の絆!」


ユラ、いったい何が面白いんだ?


こいつは阿呆なのか。俺は、こんな奴に惹かれているのか? たまに、急にはしゃぐ彼女が理解できない。異世界人だからか、それともユラの性格なのか。


「……行くぞ」


丁度目があったナウルとため息をつきながら食堂へと足を向けた。



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