108.本腰いれて動きますかね
「さて、レッツトライといきますか」
心の安定剤のリューナットさんが帰った翌日、私とラジとノア&コワニ、あとマート君と護衛二人が地下へと続く階段の前に集まっていた。
「おいっ前回と大違いじゃないか?」
マート君、そういう事は気づいちゃうのよね。前回、私は確かに邪魔になりそうだからマート君は付いてこないでと言ったが今回は違う。
「第三の選択に君が必要だから」
「発言をお許し下さい」
マート君の護衛というか執事のほうが似合っていそうな粘着質、いやナーバスさんが珍しく前に出てきた。お許下さいって私に?
なんか一度くらい言ってみてもいい?
「申せ」
くうっ〜偉そう! 上から過ぎる! 時代劇みたい。人生で申せなんてこれ逃したらないわ。
「はい、マトリ」
えっ、そこはイラッとするか、何かツッコミ欲しいんだけど!
「ちょっ、冗談だからね? ちょっと言ってみたかっただけだから! 私、そんなに態度大きくないし!」
「どの口が言っているんだか」
「マート君、地下に捨てるわよ?」
私への態度が酷い。しかもマート君だけではなく皆も格段に扱いが適当過ぎよ。まぁ全て終わった暁には私の良さも少しは伝わるはず。今はスルーしてあげようじゃないか。
「で、ナーバスさん続きをお願いします」
脱線しそうになりながら、話をと伝えれば彼は咳払いしながら姿勢を正した。この短期間で彼が私に対する態度に変化があったなと感じるのは私だけではないだろう。一番は、話し方だろうか。
「我々はこの国の者ではございません。ましてこの方は、王位継承者でもあります」
続けてと目で促せば胡散臭い咳払いの後、薄い唇
は開いた。
「踏み込みすぎではないでしょうか?また、この道の先に危険はないと言い切れますか?」
そうきたか。
「危険が全くないとは言えないかな。命を落とす事はないとは思うけど、何事も最後までわからないもの」
「ならば殿下は行かせられません」
お目付け役として正しい判断よね。
「ただ、利点はあるかも」
利用させてもらうからには、得るものがなければフェアではない。
「砂漠化、進んでいるのよね?」
「なぁ、遠回しに言い合ってないで分かるように説明しろよ! それにナーバス」
痺れを切らしたマート君は、私とナーバスさんの間に半歩体を進めてきて。
「出しゃばり過ぎだ。お前の主は誰だ?」
──へぇ、やるじゃない。
剣気に近いだろうか。まだ線の細いマート君からゆらりと圧がターゲットではない私にまで押し寄せてくる。さぁ、神経質、ナーバスさんはどうするか?
「ユラ様、具体的にお願い致します。マトリュナス殿下。最終的には殿下の判断に従います。だだし我々の職務は殿下の安全が第一優先です」
うーん、ひよっ子の見守り隊だわね。
「具体的にねぇ。地の国、緑化したくない?」
ラジまでキョトンとしている。 緑化って珍しい言葉なのかしら?




