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104.私の意志は

場所を変えての話し合いは、王子達はタイミングよく国から伝達が来たので自室に戻っていき、現在この部屋にいるのは、リューさん、ラジとナウルくん。そしてお茶を淹れてくれているリアンヌさんだ。


久しぶりのメンバー集合である。


「ゆったり出来る環境だと茶も一層美味いねぇ」

「貴方もよい歳なのですから人前ではもう少しちゃんとなさい」


リューさん、貴方がどんな生活を送ってきのか知らないけれど苦労人には間違いない気がする。リアンヌさんに叱られている姿を視界に入れながら自分もお茶で喉を潤おす。


「ふう」


自然に口から声が出ていた。


「な、美味いよな」

「そう…ですね」


リューさんがすかさず嬉しそうに言ってきた。今日出されたストレートの紅茶は渋みが少ないけど悪くない。完璧に調節された温度で身体が中から温まる。


力が少し抜けたかな。


薄くだけど顔半分、腕にもひび割れた跡が残るリューさんは、見目がよいとは言えないのかもしれない。けれど以前よりずっと柔らかい雰囲気を醸し出す姿に人は、本当は内面が大事なんだと気付かされる。


「私は、反省すべき箇所ばかりか」


カップの紅茶に映る私の顔はぼやけている。最近の自分は、感情的で我儘な面が多い。


「何、しけたつらしてんだ? 嬢ちゃんは、ただ進め。だよな副団長」

「あまり突き進まれても不安だが」

「キュ!」


ラジさんや。君は私の敵なのか? しかもノアまで同感みたいに鳴かないでよ。


「確かに!」

「言葉は考えてから口にするものですよ」


ナウル君、頷きが大きいよ。リアンヌさんはフォローになってないですよ。


「嬢ちゃん」

「何?」


リューさんが真剣な顔になって私を見た。


「帰るんだろ? 自分を信じろ。努力は裏切らねぇ」


彼は、子供のように笑った。


この世界に来てから、文字を入力しマウスを動かし、ボールペンを握っていた手は、いまや剣を掴み抱えて眠る。


なんの為に剣だこ作ったのよ。


「──私は、死にたくない。絶対に生きて帰る」


正面からリューさんを見返した。


「そうこなくっちゃな。それでこそ嬢ちゃん」


満足そうに言うと立ち上がり斜めに掛けていた袋から細長い紙を出すとテーブルに広げた。


「さぁ、作戦会議といこうじゃないか」

「指揮官は俺なんだが」


ラジのツッコミを耳にしながらも目は地図に釘付けになった。そこには、かつての光の国と情報が極めて少ない闇の国について地図の横に事細かに記載されていた。


「…リューさんって何者?」


思わず聞いた。


「おっ、見直したか? だてに生きてないんでね」

「詰めが甘いデカイ部下だ」

「いつまでたっても子供のようだこと」

「う、うーん。キレると怖い人」


なんだろうか。同期と馬鹿騒ぎしている空気感。


「ねぇ、前に私が海に投げ出された時にダッガーとリース君が変な場所にいたのよ。どれくらいの縮図なのか分からないけど、この辺りなのかな」


忘れる前に話しておこうと別紙にある世界地図らしきものある箇所を指差した。


あの時はあまり気にならなかったけど、後から考えると。


「彼らは何かを探していたか、または人数が少なかったから調査が目的だったのかも」


無駄を嫌うであろうダッガーがあんな森の中で何をしていたのか?


「おそらくは、ソレだな」


リューさんは、私を指差している。


「私って事?」

「いや、嬢ちゃんが何人もいたら困るだろ」


なんで嫌そうに言うのよ。ホント失礼だわ。


「その首にかかってるヤツ、指のもだが」


ラピスラズリの様な石が目的なの?


「その石は、風の国そのものだからな。あ、まてよ。利用出来るかもしれねぇな。だがなぁ」

「リュー、言葉を選べ」


リューさんに向けたラジの顔は決してよいとは言えない。


「嬢ちゃんは、帰るためなら闇の国を滅ぼせるか?」


滅ぼすとは皆殺しという意味かしら。リューさんは、私を試しているのだろうか?


私の帰るという意志の強さを。


潤ったはずの口の中はいまや一気にカラカラだ。無理に唾液つくり飲みこめば喉がなった。


「確実に帰れるなら出来るわ」


彼には上辺だけの気持ちは通用しない。



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