101.キレた私は叫ぶ
「ユラ!」
「笑える。まさかの結末だわ」
気づけば異世界に飛ばされていた。最初こそ私の態度は無知なお子様だっただろう。
「だから考えてきた」
軽口を叩いていたけれど、一つを決める為に仕事の時の何倍も慎重になった。
無駄な犠牲を出さないように。
「なのにコレか。ラジにしては乱暴ね」
腕に痛みが走り原因の元の顔を見た。
「いい加減にしないか」
真面目くさった顔も心配しているから強く掴まれた腕も、今の私には響かない。
「痛いから」
すぐに緩められた手から腕を抜き、人の部屋だという認識が既にない私は、叫んだ。
「光っ! 出てきなさいよ! 他の皆も!」
確かに帰る為に条件を承諾した。だけどさ。
「ユラっ! 力を抑えろ!」
バルコニーへ出た私の心は怒りしかない。
「──光、剣になれ」
切っ先に集める。
風、水、火、地の力を全て。
「残念、まだ一つ足りてないわね」
だけど、いい。
「ラナール! エレール!」
「ユラっ止めろ!」
ラジの制止を無視し、ありったけの力を込め空へ剣を振り上げた。
──来い。
放った力により雲が千切れていく。
希望の光とはほど遠い、まるでこの世の終わりのような光。
「おいっ! 爆発音と揺れがって、やっぱりお前か!って神器か? なんでそんなズラッといんだよ!」
「ユラ様! 何事ですか?!」
振り返れば、半壊した部屋の先に皆の顔。
「あ、ゴメン。今更だけど怪我ない?」
少しスッキリし冷静になった私は、彼らに怪我の有無を聞いたけど、皆は険しい顔のみなので気まずくなり空を見上げた。
「ま、そんなもんよね」
たかだか人間一人にトップが来るわけ──。
『来られましたよ』
光の諦めた声と同時に皮膚が粟立ち、銀の粉雪と強い花の香りが鼻を刺激する。
『私達を呼びつけるなんて驚きだわ。まぁ来ちゃう私達もどうなのかしら? ねぇ、ラナール』
冬の神と春の神、二人が壊れたバルコニーの縁に立っていた。
「ひぃ!」
後ろで悲鳴と誰かが倒れたであろう音がした。