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3.女性に囲まれる程の…

「辺境伯様、こちらにお手紙が届いております」


アンセルム・オークランス辺境伯は王家の紋章が書かれた封書だったためすぐに開封し読み始めたが、そこに記載された名前に違和感を覚えた。


「ん?あいつはくたばったのか?」


とりあえず手紙の内容から息子スヴェンを呼び出した。


「陛下から王宮への招待を受けた。お前もだ。王配殿下が亡くなられてからこの領地は放置されていたし、次の王配が決まるまでは関わることがないと思っていたが…。宰相の名前が変わっている。お前は何か聞いているか?」


アンセルムがスヴェンに手紙を渡し確認させると、スヴェンは首を横に振った。


「いえ、何も。確かにお名前がカールグレーン侯爵令息のルーカスですね。彼とは時々やり取りしてますが、後を継ぐような話はまだ聞いておりませんが?」


「そうか。何にせよ王命だ。王宮に向かう支度をしよう。ついでに王都も堪能しようではないか。お前はヴァランデル地方から出たことがないからな。休暇も取って10日間は滞在するか」


こうしてアンセルムは夫人エメリとスヴェンと共に王都へ向かった。



◇◇◇


道中、スヴェンは自分への視線の多さに悩んでいた。それも女性のものだ。中には話しかけてくるものまでいた。しかし、スヴェンはスマートに対応できなかった。彼には年頃の女性との交流経験がほとんどなかったからだ。


何故かわからないが囲まれた女性たちから受け取った花束を抱えながら馬車に揺られていると、アンセルムとエメリが囃し立てた。


「よっ、色男」


「もう、この朴念仁!もっと愛想良くできないの!?これから会いに行く陛下も女性ですのよ!?」


「まあまあ、そう言うなエメリ。女性とはいえ一国の王だよ。そこら辺の令嬢とは違う」


「それはそうですけど…」


「それに、スヴェンをヴァランデルから出さなかった私たちも悪い。とはいっても今が値打ちといったところか?せっかくだ。王都で探すか?エメリ。10日と言わず1ヶ月くらい滞在するか?」


「まあ。それは良い考えですわね」


スヴェンそっちのけで二人の話は進んでいった。


(結局、この花束は一体何だったんだ?)


スヴェンはただ首を傾げるのだった。



王都は領地とは比べ物にならないくらい街も人も華やかだった。しかし、この男はそれ以上に華を持っていた。騎士の制服に身を包み、背が高いだけではなく体格も良く、陽に煌めくプラチナブロンドの髪にサファイアのような瞳を持つ男は、兎に角注目を浴びていた。


「こら、スヴェン。早く馬車に戻らんか。街へは後で来るとしよう。…これは想像以上だな」


「ねぇ、あなた?これでは逆に見つからないのでは?」


「全くだ。短期間で決められるものでは無さそうだな」


「先程からお二人して何の話ですか?」


「何のって、貴方の婚約者のお話ですわよ」


「婚約者!?」


全く頭に無かったのだろう。スヴェンはその単語に驚いた。


「お前はオークランス辺境伯の嫡男だぞ?妻を娶り後を継いでいかなければならない。だが、オークランス辺境伯領は特殊な環境だ。ヴァランデル地方に存在するため貴族女性が圧倒的に少ない。そんな中で婚約者を探すことは厳しい」


「…でしたら、私をヴァランデルの外に出せば良かったのではないですか?」


「…では、実際出てみてどうだ?」


「…これが毎日なのでしたら、勘弁願いたいです」


オークランス領から王都まで馬車を使うと移動に3日ほどかかるが、街に立ち寄る度にスヴェンは女性に囲まれた。女性に免疫のないスヴェンは、言葉数の多い令嬢のアピールに疲れてしまった。


「お前が成長するにつれ、そんな予感がしてな。エメリと相談して時がくるまでヴァランデルから出さないようにしようと。しかしもう25歳だ。結婚の適齢だろう。婚約者もいない状態では焦るべき年齢でもある。同い年では婚約者もいない貴族令嬢はもうほとんどいないかもしれん。だから、身分や家格が程よく、オークランス領という特殊な環境に嫁いでも良いと考える令嬢を見つけたら捕まえるつもりだ」


「いらっしゃるのですか?そんな稀有な令嬢は」


「親馬鹿ながらその見目だ。お前の愛があれば喜んでついてくるのでは?」


「もう、だから愛想良くしなさいって言ったのです!この朴念仁!」


アンセルムもエメリも自分の見目を武器にしろとスヴェンに諭した。


(ええぇぇ…。女性に愛想良く?そもそも女性とどう接したら良いのかわからないのだが…)


スヴェンは嫡男だからと教育を受けたが領地運営と軍を率いることだけしか頭に無かった。爵位の維持も必要だが婚約者に関しても親が勝手に連れてきて、勝手に決まるものと思っていたのだ。


こうして3人は馬車に揺られ、目の前には王宮が見えてくるのであった。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


作者のモチベーションに繋がりますので、よろしかったら、評価していただけると嬉しく思います。



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