1.陛下、そろそろ結婚を!
久しぶりの連載(長編)です。
「女王陛下。差し出がましいようですが、そろそろご結婚をお考えになられませんか?」
宰相のアーロン・カールグレーン侯爵が提案した。
「そのことは考えておりますわよ」
「とは言いましても、いつもそのお答えから進展がございません。女王陛下のお歳を考えましても適齢でございますし、お世継ぎを考えますとこの数年でどなたかにお決めになりませんと」
月一回は二人の間でこの会話が行われている。子どもを授かれる期間は有限だ。月日が流れるにつれ周囲は焦るばかりだった。
「でしたら、貴方の息子よりも優秀であるものを連れてきて頂戴」
その言葉にアーロンは冷や汗を流し、答えた。
「申し訳ございません。そのような者は思い浮かびません」
はあ、と女王であるアリシアが大きく息を吐くと、いつものようにアーロンを説き始めた。
「いつも申しておりますが、結婚相手は女王である私の伴侶となりますから王配という立場になるのですよ。それらしく相応しい方を望みます。しかし、誰もが認める優秀な男子は現時点で貴方の息子ルーカスしか思い浮かびません。そしてそのルーカスを私の伴侶に勧めない理由は貴方の都合でしょう?とはいえ、それはまあ理解できます。ですから、私に結婚を勧めるというのであれば、ルーカスより優秀な者を連れてきなさいということなのです」
ルーカスに何か問題があるのだろうか。そういう訳ではない。この国の王家はなぜか女子しか生まれない。その為、国王は女性なのだ。一国を治めるため少々気が強い傾向にある。しかし、この国自体は男尊女卑の貴族社会であり、プライドも高く尻に敷かれたくない貴族男子らは女王の伴侶になることを望まなかった。さらに言えば、優秀な令息を跡継ぎにしたい当主らは、家門からの排出を望まなかった。これが逆であれば挙って我が娘を嫁にと群がるのだろうが、王配を排出した家門となる名誉よりも令息らが爵位を継ぎ当主となることを望んだ。男とは上に立ちたい生き物なのだ。ここに矛盾が生じてしまっていた。
「このやり取りをもう何十回程してるでしょうね。連れてこれない貴方は優秀ではないということ。ルーカスを跡継ぎとして次期宰相としたい貴方の意向通り世代交代をしなさい。もう貴方は引退して、ルーカスを宰相にしましょう」
「そ、そんな、お待ちください、陛下!」
「いえ、この国で優秀な男子であるルーカスですわよ?恐らく優秀な男子を探して連れてきてくれることでしょうね」
「しかし、陛下!」
「安心なさい。宰相の座を息子にというだけですわ。貴方はカールグレーン侯爵としてお務めになったらよろしいです」
こうなっては女王の命令だ。アーロンは言われるがまま王宮を後にし、ルーカスを送り込んだ。
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