1 始まりの記憶
この星は、もとはただの石だった。
冷たく、重く、孤独に漂う、ひとつのかけら。
けれど、
永い時の果てに、星はひとつの宝を得た。
――それは、熱。
星の奥底に火がともり、
溶けた岩は脈を打ち、ゆっくりと星の内を巡った。
その鼓動は、やがて大地を押し上げ、ひとつの山を生み出した。
その山は高く、高く、空を突き刺すようにそびえ、
地上からは、その頂さえ見えなかった。
どれほどの時が過ぎただろう。
ある日、星の深奥――誰の目にも触れぬ場所で、
マグマがふるりと揺れた。
また、長い時が流れた。
マグマはゆらゆらと揺れ続け、
まるでまだ見ぬ命をあやすかのように、
星の中心で静かに踊っていた。
そして――
そこからひとつの芽が生まれた。
透明な光をまとうその芽は、
マグマから星の力を吸い、
気の遠くなる年月を経て、黄金の大樹へと育った。
その葉は虹色に輝き、
朝には露をため、いっそう鮮やかに光を放った。
根もとに溜まった朝露はやがて湖となり、
澄んだ水の底を覗くと、マグマがぐつぐつと息づいているのが見える。
そして運命の刻。
山の頂で炎が噴き上がり、空を焦がした。
そのとき、樹は歓喜した。枝を広げ、葉を震わせ、生命の歓びを謳うように星空へと手を伸ばした。
湖は沸き立ち、
水は天へと昇り、初めて雲が生まれた。
それは星が初めて身にまとう、白く柔らかな衣だった。
やがて湖の水はあふれ、山頂から地へと流れ落ちる。
積もり積もった時の雫が、
いま、奔流となって大地を駆け下りる。
水は谷を削り、河を生み、
やがて、そこから新たな生命が芽吹いた。
それは、この星が自ら産んだ、初めての子らだった。
さらに、湖の下で冷やされたマグマは、
やがて星の力を宿す石へと変わった。
石は波に押されて岸辺に集まり、
ぶつかり、砕け、きらきらと輝く砂となった。
こうして、湖のほとりには虹色の浜が生まれた。
そして――ある日。
天よりひとすじの雷が落ち、
湖辺に眠っていた石を打った。
その瞬間、石は眩い光を放ち、
空も大地も震えた。
ここから、
この星の新しい歴史が始まった。




