コピ・ルアク・アンタリクシャ
ここまで読んでくれてありがとうございました。年内の更新はこれで終わります。来年からは不定期な更新になってしまうかもしれませんが、ごゆるりとお付き合いください~
「かまど、できた?」
「まだだよ。お湯も沸いてないし」
「むぅ。待ちきれなーい」
「せっかちなんだから。あんた、ゾンビもつまみ食いしてたじゃん」
「美味しそうな熟成肉が目の前にあったんだよ?」
「生じゃ食べないって」
「かまど細かい」
「あんたが大雑把なの。もう、料理のしがいが無いったら」
「そんなことないよ。あたし一人だったらあんなに美味しく河童食べれなかったもん!」
「はいはい。それで、これどこで拾ってきたの」
「分かんない。忘れた」
「……はぁ。もはや驚く気にもならない」
「えへへー」
「褒めてないわ。何て書いてあんの、これ。こぴ……るわく……」
「コピ・ルアク・アンタリクシャ」
「え?」
「宇宙猫コーヒー、だって」
「ペコって変な特技あるよね。メキシコでも言葉ペラペラだったし」
「えへへー」
「うむ、今度は褒めてるよ」
「でもさ、かまど。宇宙猫コーヒーって何?」
「字は読めるのにそこは分からないの……」
「えへへー」
「天丼やめい」
「天丼好き。美味しいよね」
「オイシさも過ぎると胸焼けするよ。……で、コピ・ルアクね」
「知ってる?」
「宇宙猫は知らないけど、猫コーヒーなら。インドネシアの有名なコーヒーだね」
「猫? 猫を挽くの?」
「グロすぎでしょ。虐待反対」
「じゃあ何?」
「コーヒーの実を食べる猫の糞から豆を洗い出して、それで淹れたコーヒーのこと」
「ふぅん」
「……絶対ツッコまないからね……」
「それって美味しいの?」
「腸の中で熟成されたり、消化酵素で化学変化するから、独特の味わいがあるんだって」
「へぇ。人間ってすごいね、何でも食べちゃう」
「謎のくねくね物体を食いちぎってたあんたに言われたくないと思う」
「えへ」「言わせないよ?」
「かまど、お湯沸いてる」
「あっ、いけない。ペコ、カップどっちが良い?」
「赤ー。コーヒーにはふぃるたー? 使うんだっけ?」
「うーん、今日は要らなそう」
「そうなの?」
「ほら、これ見て。粉がすごく細かいでしょ?」
「あー。確かに? 小麦粉みたい」
「この細かい粉をカップにそのまま入れて、上澄みを飲むのがインドネシア流なの」
「そうなんだ。いただきまー」「待ち待ち」
「ほぇ?」
「まだ粉が舞ってるから沈むまで待つの」
「うー、まだ待つの……」
「石の上にも三年。和尚さんも言ってたでしょ。達磨大師の有り難い教えだよ」
「じゃあその間何か話してよ」
「おう、唐突な無茶振り」
「宇宙猫って何?」
「あたしが聞きたいんだけど」
「教えて。教えて! おーしーえーてー」
「暴れるな。こぼれるでしょうが、もう……。宇宙猫、宇宙に居る猫じゃない?」
「宇宙に猫が居るの?」
「さぁ? でも火星には蛸がいるし」
「知らなかった……。今度食べに行こうね! たこ焼き!」
「片道いくらかかるんだろう……」
「宇宙猫は何食べるの?」
「何食べてるんだろう。宇宙って何も無さそうだしなぁ」
「……星! 宇宙には星があるよ! きっと星食べてるんだよ!」
「それはまたファンタジック……それともSF?」
「で、その糞から取ったのがきっとこれ! どう?」
「星の命がこんな粉に……複雑すぎる」
「もう飲めるかな?」
「ん。そろそろだね」
「よーし。いただきますっ」
「いただきます」
「…………にがいっ!」
「そりゃそうだ。あんた苦いの苦手でしょ」
「忘れてた……。かまどのいじわるぅ」
「今日はブラックで行くんだと思った」
「お砂糖無い? ミルクも」
「ミルクは無いけど、妖精の砂糖が残ってるよ」
「やった! あれ美味しいんだよねー」
「無駄遣いはダメだからね」
「はーい。……わぁ、ねぇ、見てかまど」
「ん? どしたの」
「ほら。真っ黒なコーヒーに、キラキラの砂糖がぐるぐる解けていって……」
「……確かに、きれいだね」
「銀河みたいだよね」
「ペコ、銀河知ってたんだ」
「むぅ。そのくらい知ってますー」
「あんたの知識が読めなすぎるの。……あ、そうそう」
「なに?」
「混ぜちゃったからまた粉が沈むまで待ちだよ」
「あーーーっ!!」
「愚かな奴……」
「かまどの鬼! 悪魔! 凄腕料理人!」
「何をぅ。この胃袋ブラックホール」
「えへへー」
「褒めて……んん……あー。もう褒め言葉でいいや」
「待ってる間、またあたしと話してください! それがかまどの義務です!」
「へいへい。何の話するの?」
「えっ、えっと……うーん…………、あっ、そうだっ!」
「かまど、次は何食べる?」
ありがとうございました!




