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見かけは子供、心は女

 隣町の仲間からの連絡は、すぐに来た。

 電話番号も書かれていないチラシをどのように渡したのかは知らない。

 だが、待ち合わせの場所と時間はきっちりセッティングされていた。

 ポストに入っていた、名前を聞いたこともないピザ屋の投げ込みチラシがそれを告げていた。

 指定された休日の喫茶店の隅には、同じチラシをテーブルに置いた真面目そうな若者が座っていた。

 私を見るなり、若者は訝しんだ。

「ええと、君は……」

 当然だ。

 消費者金融に借金しに来たのに、目の前に座ったのは10代の少女なのだから。

 一応、「化生」術で変装はしているが、若く見えるのも困りものだ。

 不審を買わないように、敢えて胸元を強調する服を着てきたのだが、視線はそっちに釘付けだった。

 逆効果だったか……。

 唯一の救いは、若者が私の顔を見ていないことだ。 

 そこですかさず、手にしたカバンを開いてみせる。

「はい、ここであなたの話を聞くようにと」

 若者は、中にぎっしり詰まった札束を見て目を丸くした。

 やっと私の営業スマイルを見てくれた若者は、おずおずと口を開いた。

「話って……きちんと返しますから、まず現金を」

 私は笑顔を崩すことなく、きっぱりと言い切る。

「お話次第では応じるな、ということでした」

 うろたえる若者の言葉は、焦りのせいか初対面の金貸しへの礼儀を忘れた。

「でしたって……貸す貸さないは君が決めるんだろう?」

 引っかかった。

 これで、何が何でも私の言うことを聞くはずだ。

 ここは、冷ややかに切り返す。

「嫌なら結構です。担保も保証人も要りませんが、むやみやたらと貸さないというのがウチの方針です」

 現金を手に帰ろうとすると、案の定、若者は追いすがってきた。

「ちょっと待ってくれ」

 声を荒らげられたのはまずかった。

 他の客の注意が一斉に向けられる。

 だが、全ての状況を利用するのが忍者だ。

 私はいそいそと席にもどって囁いた。

「声が大きいです。こういう取引は、目立つとちょっと」

 もちろん、嘘だ。

 吉祥蓮としての隠密行動が人目については困る。

 その気持ちを抑えることなく、私は真剣なまなざしで言った。

「会社員と女子高生の別れ話のふりをしてください」

 きょとんとする若者に、居住まいを正す。

 好都合だ。

 意外な話を切り出された交際相手を説得するかのように、私は切々と訴える。

「話ぐらいは聞くわ。でも、私……」

 たどたどしいながら、若者もこの芝居を受けてくれた。

「深いわけがあるんだ、これには」

 金がかかっているせいか、声が切羽詰まっている。

 この調子だ。

 私は冷ややかに問い質した。

「で?」

 周囲の注意がそれていく。

 近くの席の客が、次々に席を立った。

 痴話喧嘩など、そうそう聞きたくはないものだ。

 辺りが静かになったところで「実は」と話しだした若者の事情は、こうだった。

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