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お兄ちゃん最初の恋

 顔やスタイルだけみれば、まあ、悪くないかな、あたしのお兄ちゃんは。

 16歳にしては背が高い。

 パッと見には、清潔感あふれる勉学少年だ。

 頭も悪くない。

 だから割と名門と言われる倫堂学園に入学できたのである。

 え? あたし? まあ、なんとか受験頑張ったかな。

 母さん、その時だけはオニだったけど。

 1学期の成績は……う~ん。

 一方でお兄ちゃんはというと、成績もいい。

 中等部では、300人ほどいる同級生の中で上位5位から落ちたことがない。

 でも、問題あり。

 多すぎ。

 とにかく、ドジで単細胞。

 単細胞のほうは、まだいい。

 「人を疑うことを知らない純朴な少年」で通るから。

 でも、ドジはごまかしようがない。

 体力はないわ、動作は鈍いわ。

 そのうえ、物忘れが激しい。

 弁当を走って届けるのは、毎朝のセレモニーと化している。

 母さんのが再婚した次の日から、ずっと。

 そりゃ、母さんからは「冬彦君をお願いね」と頼まれちゃいるけど……。

 でも、あたしとしては断言していることがある。

「これでお兄ちゃんに私利私欲があったら、あたし20歳で家を出るからね」

 今すぐにでも、と言えないあたしは、甘いんだろうか。


 でも、お兄ちゃんには、その間抜けさに輪をかけた欠点があった。

 とにかく、惚れっぽい。

 まず、父親となった菅藤さんと母さんの再婚が、お兄ちゃん12歳の時。

 何でも6歳で亡くなった実の母は、そりゃあ美人だったらしい。

 母さんにすぐなついたのは、その面影を忘れられないからか。

 それ分かってるのかどうか、母さんは。

 単純に喜んだけど、あたしは次の年からお兄ちゃんの悪い癖に悩まされることになった。

 菅藤冬彦くん、中学1年生の春。


 体力もないくせに陸上部に入部したお兄ちゃん。

 間もなくして長距離走で倒れ、救急車で運ばれた。

 その頃、あたしは地元の小学校に通っていた。

 担任の先生から知らされて、慌てて母さんと共に病院へ駆けつけた。

 命に別状はないと医者から聞かされて、ほっとしたところで病室で見たもの。

 それは、やけに歯切れよく話す威勢のいい女子生徒だった。

 礼儀正しく挨拶したのは、女子陸上部のかわいらしい主将だった。

 無理をして倒れるまでの詳しい事情を聞いたあたしは、小学4年生の身で、お兄ちゃんが身の程を知らない無理をした理由を察した。

 そんなことが中学校の間ずっと続いて、高校1年生の現在に至るんだけど。

 惚れっぽくてお姉さま系が好みという性癖は、全く改まっていない。

 そんなわけで。

 お兄ちゃんが高校生になって経験する最初の恋。

 あたしのスタンスは決まった。

 静観。

 ひたすら見守るしかない。

 確かに、母さんの言う通り、縁を結ぶのも吉祥蓮の使命だ。

 でも、何が何でも恋を叶えてやらなければならないわけではない。

 守る相手のためになる女性が現れたら、その間を取り持ってやればいい。

 今の段階では、葛城センパイがそんな相手かどうかなんて分からない。

 だいたい、お兄ちゃんまだ16歳だし。

 母さんに相談するのは……。

 やめとこう。

 好きな相手を母親に知られてるっていうのは、男の子にはたぶん、嫌なことだ。

 今までは何でも母さんに相談してきたけど、最近は言わないことも増えてきた。

 たとえば、玉三郎のこと。

 入学してすぐに鳩摩羅衆と接触したことも。

 名前が白堂玉三郎(自称・獣志郎)だってことも。

 何でかは、自分でもよく分かんないけど。

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