102手目 4回戦 馬下〔駒桜市立〕vsポーン〔藤花〕(1)
※ここからはポーンさん視点です。
Hmm...das ist ein Spiel, aber ein Kampf auch.
藤花女学園vs駒桜市立高校……テンノウザンというやつですわ。男子のほうは清心で決まりかと思いますが、女子はまだチャンスがありますことよ。
「1年の馬下よもぎです。よろしくお願いします」
わたくしのお相手は、1年生ですのね。初手合い。
神社の巫女さんという、謎の多い女性です。
「準備のととのっていないところはありませんね?」
Herrミノベの司会……いつも思うのですが、団体戦に出られないHerrミノベに任せきりなのは、やや気が咎めますわね。今回のようにFrauハヤマが抜けると、ワンマン経営。もうすこし人員を増やしたほうが、よろしいのではなくて? 過労は禁物です。
「……では始めてください」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
一礼しまして……Frauコマサゲの先手、わたくしの後手。
さて、いかが戦いませう……Hmm、2六歩ですか。
Frauコマサゲは居飛車党。
わたくしが居飛車党なのはバレていますから、相掛かりのお誘いでしょう。
「受けて立ちますわ。8四歩です」
2五歩、8五歩、7八金、3二金、2四歩、同歩、同飛、2三歩、2八飛。
深く引かれました……以前、後輩と一緒に考えた構想を採用しましょう。
「7二銀です」
「2八飛にもかかわらず、飛車先を交換しないのですか」
いたしません。Frauコマサゲは、ここで小考。
「……3八銀」
8三銀、7六歩。
「ここで7四銀が、mein Programmですのよ」
飛車先を通しつつ、攻勢ですわ。
8六歩と6五銀を、同時に防ぐことはできません。
「なるほど……では、7七角です」
8六歩の防ぎを優先しましたか。わたくしは、6五銀。
以下、2六飛、3四歩、5八玉、4四歩、3六飛、4三金。
「これは、手将棋ですか」
ですわね。部室で研究したとき、3六飛とは寄られませんでした。
この時点で、予定を離れてしまいましたわ。Frauカスガカワと一緒に、もっと詰めておいたほうが良かったかもしれません。全部はできなくとも。
Aber……Frauコマサゲにとっても、初めての局面のはずです。
情報がないという点では、完全に五分。
「こちらは、陣形の差を利用させてもらいます。8八銀」
4二玉(4一玉のほうが、良かったですかしら?)、5九角、3二玉、4六歩。
「王様に近いほうを攻めて来ましたわね」
「常道です」
7六銀と出るのは、4五歩でギャフンとなりますわ。
ここはひとつ……銀をさがっておきましょう。
「5四銀」
Frauコマサゲは、満足げに2六飛。少々、ポイントを稼がれてしまいましたかしら。
3三角、4七銀、2二銀、1六歩、1四歩、3六歩。
どんどん圧迫してきますわね。見た目と違って、ドSとみました。
「全部受けて立ちますわ。2四歩です」
Frauコマサゲは、7七銀のような手は指さずに、3七桂。
壁銀でもOKということですか。あとで泣きを見ますわよ。
「2三銀」
Frauコマサゲは、ちょっと小考。
「さすがに、こちらのほうが狭過ぎますか……7七銀」
「ひよりましたわねッ! 5二金ですッ!」
「鼻息を荒くして指すような手でしょうか……2九飛」
さすがに、速攻はありませんでしたか……ここから、どう指すか……とりあえず、3三の角が使えていませんから、7四歩〜5一角〜7三角としたいですわね。そこで、先手がどうしてくるかですが……一例として考えられるのは、5六銀でしょうか。腰掛け銀風味に指しまして、5一角、6六銀、7三角……次に4六角と出られますから……4七銀?
しかし、それでは一手パス。べつの手を指すか、あるいは5六銀自体しませんわね。となると、まず6六銀、5一角、4八金or3八金、7三角、7七角……いえ、そこで7五歩の速攻ですかしら? 8四飛と浮くのは、9五角、9四飛、7三角成、同桂、6一角。
(※図はポーンさんの脳内イメージです。)
これは、わたくしの負けですわね。飛車の打ち込みに弱過ぎます。
6六銀の速攻が、意外と厄介のようです。ただ、それが成立するのは、7三角と上がったときだけの気がいたしますわ。単純な7五歩は、7二飛で受かっていますので。
「……7四歩」
ともかく、ここだけは突いておきましょう。攻めがなくなります。
Frauコマサゲは、また少し考えて、右の銀に指を伸ばしました。
「5六銀」
5六銀……最初に切った順なのですけれど……5一角以下を読み直します。
5一角、6六銀、7三角、4七銀、9四歩。これで7五歩には8四飛ですわ。まさかそこから、9五歩、同歩、同香、同香、同角……なわけないですわよね。9四飛がありますし、これはさすがにやってこないでしょう。王様は、Frauコマサゲのほうが不安定。
なにかあると思うのですが……すこし様子見で指しませう。
「5一角」
「6六銀」
「7三角」
ここでFrauコマサゲは、銀ではなく金に手を伸ばしました。
「4八金」
Was ist das???
歩を見捨てるということですか? 4六角で? 4七金?
……いえ、それは甘いですわね。引かれて意味がありませんわ。長考。
……………………
……………………
…………………
………………
あやしい筋を思いつきました。
4六角、7七角ですわ。
(※図はポーンさんの脳内イメージです。)
ここで7三に角を引くと、7五歩で、さきほどの変化に近くなります。
これをイヤがって6四角と引くのは、5五銀左、同銀、同銀。このとき角を逃げると、4四銀の突っ込みがあって、わたくしの陣形が崩壊してしまいます。
Sehr schlau……Frauコマサゲも、なかなかやりますわね。
しかし、カラクリが分かった以上は、こちらとしても対策のしようがあります。まず、7三角と引いてから、7五歩、3五歩の反撃。以下、7四歩……8四角ですかしら? これはちょっと消極的というか、狙いがあいまいですわね……6四角は、さきほどの変化に合流してしまいますし……Hmm?
そうでもないですかしら? 7五歩、3五歩、7四歩に6四角と誘って、5五銀左ならば同銀ではなく7五角が成立するような……。
(※図はポーンさんの脳内イメージです。)
一見、8四角と同じにみえるのですが、5五の銀を拾えそうなので、違います。
5四銀、同歩……Hmm……そこで7三歩成がありますか……同桂、7四歩は終わっていますし……もちろん、やりませんが。かと言って5四同金は、5五銀からのぶつけで、一気に崩壊しそうです……5五銀、6五金、4四銀……もう一度、考えなおしましょう。
……………………
……………………
…………………
………………
あ、簡単でした。一回、駒損覚悟で、おさめればよいのです。
6四角、5五銀左、同銀、同銀、同角、同角、6四銀。
(※図はポーンさんの脳内イメージです。)
これで、どこに引いても、次は3六歩ですわ。銀桂と角の交換で、駒損回復です。
気になるのは、6四同角、同歩、7三歩成、同桂、7四歩くらいでしょうか。6五桂と逃げまして、7三歩成……8一飛? 7二角(3六歩の防止です)、3一飛、6三と、4二金寄、5二銀……意外とあやしいですわ。同金、同とはお手伝いですから、ここで3六歩、4三銀銀成……いえ、それとも、一回逃げますかしら? 3三金寄……いかにもかたちが悪いですわね。これはやめておきましょう。
3六歩が、遅いのかもしれません。となると……7七歩、4三銀成、同金、7七桂、同桂成、同金として、そこで4六桂か5五桂をみたほうが、よろしいかもしれません。先手は角がぼやけていますし、なんとかなるかと。
「4六角ですわ、ドンど来いです」
「読み切りというふうには見えませんが……7七角」
7三角、7五歩、3五歩、7四歩。
「6四角といたします」
「では、4七銀と引かせていただきます」
Ups!! いきなり読みを外されました。持ち時間が……まだ16分ありますわね。
Frauコマサゲは18分残しで、やや指し慣れている感が否めません。
もう少し、市立の棋風を分析しておけばよかったやも。
さて、これは……さきほどの2枚換えの変化をきらったものですわね。
一目、3六歩、同銀、3五歩ですが……その次は……。
「3六歩」
「同銀」
3五歩とたたきまして……まあ、4七銀ですわよね。
わたくしは7六歩、6八角と下がらせてから、4五歩、5六歩、3四金。
圧迫戦術です。
「2六飛」
He? これはいったい……。
「その飛車浮きは、なにか意味がありまして?」
「ノーコメントです」
さすがに、教えていただけませんか……2五歩。
以下、2九飛、3三桂。
「どんどん前に出ますわよ」
「さすがに、伸び過ぎだと思うのですが……」
ちょっと右玉っぽくなりましたわね。2六飛と浮いたのは、このかたちを誘発してきたのかもしれません。ただ、わたくしとしても、悪い展開ではないと思います。
無意識のうちに、Herrサエキから影響を受けているのやも……はわわ。
「咎めたくなりますが、いまいちスキがありせんね……3八歩です」
Hmm……sehr negativ……手待ち……いえ、5七金の準備ですか。歩を打っておかないと、5七金に3七角成があります。
わたくしのほうで、動けということですか……動く手としては……さすがに、4二金はやり過ぎですわね。邪魔な7四の歩を取り除きましょう。そのまえに、味付けして……。
「8六歩」
「同歩」
「7二飛ですわ」
寄って、露骨に取ります。
「5七金」
ここで7四飛と……あら?
「Entschuldigung」
ちょっと、変な感じがしましたわね。直感は大事です。
先手から、なにか手があるような……5七金が、守りの手ではないのかもしれません。だとすると、7四飛、4六歩、同歩、同銀、4五歩、5五銀右、同銀、同銀、8二角……これは、べつに怖くありませんわね……4六歩、同歩、同金ですかしら?
そこで4五歩は、3五金、同金、同角で、わたくしの歩損……Aha!! 分かりました。5五歩、4三銀、6五銀が両取りですわ。
(※図はポーンさんの脳内イメージです。)
Hmm……いかがいたしましょう?




