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こちら、駒桜高校将棋部Outsiders  作者: 稲葉孝太郎
第10局 熱血!春の団体戦(2日目・2015年5月17日日曜)
114/682

102手目 4回戦 馬下〔駒桜市立〕vsポーン〔藤花〕(1)

※ここからはポーンさん視点です。

 Hmm...das ist ein Spiel, aber ein Kampf auch.

 藤花(ふじはな)女学園vs駒桜(こまざくら)市立(いちりつ)高校……テンノウザンというやつですわ。男子のほうは清心(せいしん)で決まりかと思いますが、女子はまだチャンスがありますことよ。

 

挿絵(By みてみん)


「1年の馬下(こまさげ)よもぎです。よろしくお願いします」

 わたくしのお相手は、1年生ですのね。初手合い。

 神社の巫女さん(シャーマン)という、謎の多い女性です。

「準備のととのっていないところはありませんね?」

 Herrミノベの司会……いつも思うのですが、団体戦に出られないHerrミノベに任せきりなのは、やや気が咎めますわね。今回のようにFrauハヤマが抜けると、ワンマン経営。もうすこし人員を増やしたほうが、よろしいのではなくて? 過労は禁物です。

「……では始めてください」

「よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 一礼しまして……Frauコマサゲの先手、わたくしの後手。

 さて、いかが戦いませう……Hmm、2六歩ですか。

 Frauコマサゲは居飛車党。

 わたくしが居飛車党なのはバレていますから、相掛かりのお誘いでしょう。

「受けて立ちますわ。8四歩です」

 2五歩、8五歩、7八金、3二金、2四歩、同歩、同飛、2三歩、2八飛。

 深く引かれました……以前、後輩と一緒に考えた構想を採用しましょう。

「7二銀です」


挿絵(By みてみん)


「2八飛にもかかわらず、飛車先を交換しないのですか」

 いたしません。Frauコマサゲは、ここで小考。

「……3八銀」

 8三銀、7六歩。

「ここで7四銀が、mein Programmですのよ」

 飛車先を通しつつ、攻勢ですわ。

 8六歩と6五銀を、同時に防ぐことはできません。

「なるほど……では、7七角です」

 8六歩の防ぎを優先しましたか。わたくしは、6五銀。

 以下、2六飛、3四歩、5八玉、4四歩、3六飛、4三金。


挿絵(By みてみん)


「これは、手将棋ですか」

 ですわね。部室で研究したとき、3六飛とは寄られませんでした。

 この時点で、予定を離れてしまいましたわ。Frauカスガカワと一緒に、もっと詰めておいたほうが良かったかもしれません。全部はできなくとも。

 Aber……Frauコマサゲにとっても、初めての局面のはずです。

 情報がないという点では、完全に五分。

「こちらは、陣形の差を利用させてもらいます。8八銀」

 4二玉(4一玉のほうが、良かったですかしら?)、5九角、3二玉、4六歩。


挿絵(By みてみん)


「王様に近いほうを攻めて来ましたわね」

常道(じょうどう)です」

 7六銀と出るのは、4五歩でギャフンとなりますわ。

 ここはひとつ……銀をさがっておきましょう。

「5四銀」

 Frauコマサゲは、満足げに2六飛。少々、ポイントを稼がれてしまいましたかしら。

 3三角、4七銀、2二銀、1六歩、1四歩、3六歩。


挿絵(By みてみん)


 どんどん圧迫してきますわね。見た目と違って、ドSとみました。

「全部受けて立ちますわ。2四歩です」

 Frauコマサゲは、7七銀のような手は指さずに、3七桂。

 壁銀でもOKということですか。あとで泣きを見ますわよ。

「2三銀」

 Frauコマサゲは、ちょっと小考。

「さすがに、こちらのほうが狭過ぎますか……7七銀」

「ひよりましたわねッ! 5二金ですッ!」

「鼻息を荒くして指すような手でしょうか……2九飛」


挿絵(By みてみん)


 さすがに、速攻はありませんでしたか……ここから、どう指すか……とりあえず、3三の角が使えていませんから、7四歩〜5一角〜7三角としたいですわね。そこで、先手がどうしてくるかですが……一例として考えられるのは、5六銀でしょうか。腰掛け銀風味に指しまして、5一角、6六銀、7三角……次に4六角と出られますから……4七銀?

 しかし、それでは一手パス。べつの手を指すか、あるいは5六銀自体しませんわね。となると、まず6六銀、5一角、4八金or3八金、7三角、7七角……いえ、そこで7五歩の速攻ですかしら? 8四飛と浮くのは、9五角、9四飛、7三角成、同桂、6一角。

 

挿絵(By みてみん)


 (※図はポーンさんの脳内イメージです。)

 

 これは、わたくしの負けですわね。飛車の打ち込みに弱過ぎます。

 6六銀の速攻が、意外と厄介のようです。ただ、それが成立するのは、7三角と上がったときだけの気がいたしますわ。単純な7五歩は、7二飛で受かっていますので。

「……7四歩」

 ともかく、ここだけは突いておきましょう。攻めがなくなります。

 Frauコマサゲは、また少し考えて、右の銀に指を伸ばしました。

「5六銀」

 5六銀……最初に切った順なのですけれど……5一角以下を読み直します。

 5一角、6六銀、7三角、4七銀、9四歩。これで7五歩には8四飛ですわ。まさかそこから、9五歩、同歩、同香、同香、同角……なわけないですわよね。9四飛がありますし、これはさすがにやってこないでしょう。王様は、Frauコマサゲのほうが不安定。

 なにかあると思うのですが……すこし様子見で指しませう。

「5一角」

「6六銀」

「7三角」

 ここでFrauコマサゲは、銀ではなく金に手を伸ばしました。

「4八金」


挿絵(By みてみん)


 Was ist das???

 歩を見捨てるということですか? 4六角で? 4七金?

 ……いえ、それは甘いですわね。引かれて意味がありませんわ。長考。

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

 あやしい筋を思いつきました。

 4六角、7七角ですわ。


挿絵(By みてみん)


 (※図はポーンさんの脳内イメージです。)

 

 ここで7三に角を引くと、7五歩で、さきほどの変化に近くなります。

 これをイヤがって6四角と引くのは、5五銀左、同銀、同銀。このとき角を逃げると、4四銀の突っ込みがあって、わたくしの陣形が崩壊してしまいます。

 Sehr schlau……Frauコマサゲも、なかなかやりますわね。

 しかし、カラクリが分かった以上は、こちらとしても対策のしようがあります。まず、7三角と引いてから、7五歩、3五歩の反撃。以下、7四歩……8四角ですかしら? これはちょっと消極的というか、狙いがあいまいですわね……6四角は、さきほどの変化に合流してしまいますし……Hmm?

 そうでもないですかしら? 7五歩、3五歩、7四歩に6四角と誘って、5五銀左ならば同銀ではなく7五角が成立するような……。

 

挿絵(By みてみん)


 (※図はポーンさんの脳内イメージです。)

 

 一見、8四角と同じにみえるのですが、5五の銀を拾えそうなので、違います。

 5四銀、同歩……Hmm……そこで7三歩成がありますか……同桂、7四歩は終わっていますし……もちろん、やりませんが。かと言って5四同金は、5五銀からのぶつけで、一気に崩壊しそうです……5五銀、6五金、4四銀……もう一度、考えなおしましょう。

 ……………………

 ……………………

 …………………

 ………………

 あ、簡単でした。一回、駒損覚悟で、おさめればよいのです。

 6四角、5五銀左、同銀、同銀、同角、同角、6四銀。


挿絵(By みてみん)


 (※図はポーンさんの脳内イメージです。)

 

 これで、どこに引いても、次は3六歩ですわ。銀桂と角の交換で、駒損回復です。

 気になるのは、6四同角、同歩、7三歩成、同桂、7四歩くらいでしょうか。6五桂と逃げまして、7三歩成……8一飛? 7二角(3六歩の防止です)、3一飛、6三と、4二金寄、5二銀……意外とあやしいですわ。同金、同とはお手伝いですから、ここで3六歩、4三銀銀成……いえ、それとも、一回逃げますかしら? 3三金寄……いかにもかたちが悪いですわね。これはやめておきましょう。

 3六歩が、遅いのかもしれません。となると……7七歩、4三銀成、同金、7七桂、同桂成、同金として、そこで4六桂か5五桂をみたほうが、よろしいかもしれません。先手は角がぼやけていますし、なんとかなるかと。

「4六角ですわ、ドンど来いです」

「読み切りというふうには見えませんが……7七角」

 7三角、7五歩、3五歩、7四歩。

「6四角といたします」

「では、4七銀と引かせていただきます」


挿絵(By みてみん)


 Ups!! いきなり読みを外されました。持ち時間が……まだ16分ありますわね。

 Frauコマサゲは18分残しで、やや指し慣れている感が否めません。

 もう少し、市立(いちりつ)の棋風を分析しておけばよかったやも。


 さて、これは……さきほどの2枚換えの変化をきらったものですわね。

 一目、3六歩、同銀、3五歩ですが……その次は……。

「3六歩」

「同銀」

 3五歩とたたきまして……まあ、4七銀ですわよね。

 わたくしは7六歩、6八角と下がらせてから、4五歩、5六歩、3四金。


挿絵(By みてみん)


 圧迫戦術です。

「2六飛」

 He? これはいったい……。

「その飛車浮きは、なにか意味がありまして?」

「ノーコメントです」

 さすがに、教えていただけませんか……2五歩。

 以下、2九飛、3三桂。

「どんどん前に出ますわよ」

「さすがに、伸び過ぎだと思うのですが……」

 ちょっと右玉っぽくなりましたわね。2六飛と浮いたのは、このかたちを誘発してきたのかもしれません。ただ、わたくしとしても、悪い展開ではないと思います。

 無意識のうちに、Herrサエキから影響を受けているのやも……はわわ。

「咎めたくなりますが、いまいちスキがありせんね……3八歩です」

 Hmm……sehr negativ……手待ち……いえ、5七金の準備ですか。歩を打っておかないと、5七金に3七角成があります。

 わたくしのほうで、動けということですか……動く手としては……さすがに、4二金はやり過ぎですわね。邪魔な7四の歩を取り除きましょう。そのまえに、味付けして……。

「8六歩」

「同歩」

「7二飛ですわ」


挿絵(By みてみん)


 寄って、露骨に取ります。

「5七金」

 ここで7四飛と……あら?

「Entschuldigung」

 ちょっと、変な感じがしましたわね。直感は大事です。

 先手から、なにか手があるような……5七金が、守りの手ではないのかもしれません。だとすると、7四飛、4六歩、同歩、同銀、4五歩、5五銀右、同銀、同銀、8二角……これは、べつに怖くありませんわね……4六歩、同歩、同金ですかしら?

 そこで4五歩は、3五金、同金、同角で、わたくしの歩損……Aha!! 分かりました。5五歩、4三銀、6五銀が両取りですわ。


挿絵(By みてみん)


 (※図はポーンさんの脳内イメージです。)

 

 Hmm……いかがいたしましょう?

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