カモミール堂での宝探し
「いらっしゃいませ!」
『ボタニカ雑貨店』を後にした一行が暖簾をくぐったのは、温かみのある木製家具と様々な洋服が並ぶ『カモミール堂』。店奥から声をかけてきたのは、50代ほどの穏やかな雰囲気を纏った店主のアルドだった。
「何かお探しですか?」
「あの~、運動するときに着る楽な上下の服ってありますか?出来れば伸縮性のあるのがいいのですが」
凛が店内を見回しながら尋ねると、アルドは少し首をひねりながら奥の棚から一揃いの衣類を取り出してきた。
「それでしたら、こんなのがありますが……。これは実はあまり人気のない商品でしてね。女性でも荷物運びなどの体を使う仕事をする職人向けに作られたものなんですよ」
差し出された服を手にとった瞬間、4人の目が輝いた。
「あ~これこれ!スウェットのような生地でちゃんと上下がある!」
「こっちのはジャージのようだわ!百合さん、これなら部屋着や筋トレのときにも着れそうじゃないですか?」
「本当、いいわね~!」
「丈が長いのは私が直すから問題ないわね。じゃあこれ、4人分……着替えもいるから8着買いましょう!」
葵の素早い決断に、アルドは驚きつつも嬉しそうに頷く。
広々とした店内をさらに見て回っていると、百合がある一着の前で足を止めた。
「あ~、これいいな……」
百合が見つめていたのは、すとんと下に落ちるシンプルなロング丈のチュニックだった。
「これにレギンスを合わせて着たいな」
「あら、百合ちゃんはナチュラル系が好きなのね」
「うん。私の姉がいつもこういう格好をしていたの。私は学生だったからあまり洋服にお金をかけられなかったでしょう? だからこの服を見たら、日本の姉を思い出しちゃって……」
「そう……とっても百合ちゃんに似合うと思うわ! このストールやスカーフを巻いてもおしゃれよ」
「そうね~! 普段着ならこれくらいシンプルで動きやすいのが最高よね」
百合の少し切なくも優しい表情にほっこりしていると、今度は葵が声を弾ませた。
「あ! 私はこれ!」
葵が見つけたのは、カットやシルエットが絶妙なおしゃれなワンピース。
「ほんと素敵ね! 色もデザインも色々あるわ」
「これなら素敵なブローチやネックレス、ストールを付けたら、とっても上品なお出かけ着になるわね」
さらに美咲も、実用的なアイテムの棚からお気に入りを発見する。
「私はこのシンプルなブラウスと、いろんな形のスカートがいいな。これも普段着にすごく良さそう! 色もデザインもたくさんあるわ」
結局、どの服も魅力的で捨てがたいということになり、4人は満場一致でワンピース、ブラウス、スカート、チュニック、そしてレギンスまで勢揃いで購入することに決定した。
さらに雑貨コーナーでは、素朴でナチュラルなカゴバッグや麦わら風の帽子、手作りの可愛らしいアクセサリーが目に入り、すっかりテンションが上がった4人はそれらもまとめて買い揃える。
大量の「庶民の服と雑貨」を抱え込む彼女たちを、後ろで見守っていたジェイドとフェリクスが呆れ顔で覗き込んだ。
「……本当に、その服や雑貨を買うのか?」
「「「「もちろんです!」」」」
4人は声を揃えて即答。買い物を終えてカモミール堂を出ると、晴れやかな顔で笑い合った。
「あ~! いいものがたくさん見つかったわね~!」
「ここならまた来たいわね! 貴族街のガチガチした店より断然こっちの店のほうが好みだわ」
たくさん歩き回り、すっかりお腹が減って疲れてしまった4人。百合が護衛のジェイドに視線を送る。
「ジェイドさん、この近くにちょっとお茶ができるようなカフェってありませんか?」
「カフェ……? いや、平民街にそんなハイカラなものはないぞ。あるのは男たちが酒を飲む食堂か、小腹を満たす屋台くらいだ」
「「「「えっ……」」」」
カフェでおしゃれに一休み、を期待していた4人は一気に肩を落とす。
「がっくり……それじゃあ、お腹もすいたことだし、買ってきた食材もあるから離宮に戻りましょうか!」
買い込んだ和食の調味料、コスメの材料、そして大量の楽ちんウェアを抱え、4人は大満足の成果を手に離宮への帰路につくのだった。




