↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
16/42

はじめての稽古と、お姉ちゃんたちへの想い

翌朝の朝食後、長男のレオニダスハートと次男のガブリエルに連れられ、凛は館の壮大な図書館を訪れた。


「剣を習う前に、まずはこの国の歴史や騎士の心得も少しずつ学んでいこうね」


ガブリエルに促され、凛はおそるおそる本棚から一冊の書物を抜き取った。ページをめくった瞬間、凛は「あ……!」と声を上げた。


(読める……! 見たこともない文字なのに、日本語みたいにスラスラ頭に入ってくる!)


文字が読める感動に瞳を輝かせた凛だったが、難しい政治や歴史の本には「うぐっ……頭が痛くなりそう」と苦笑い。しかし、身体の構造やトレーニング法、騎士の戦術が書かれた本を見つけると一転、元陸上部の本領を発揮して夢中でページをめくり始めた。


「すごい……! 筋肉の使い方や重心の移動、陸上と通じるところがたくさんある!」


真剣な目つきで知識を吸収する凛の姿に、様子を見守っていたレオニダスたちは「根はすごく努力家なんだな」と感心し、愛おしそうに目を細めた。



午後になると、待ちに終えた初めての剣術稽古が始まった。


小さな手に木剣を握り締め、教えられた通りの素振りを繰り返す凛。

元陸上部で鍛え上げられた体幹の強さと足さばきの良さ、そして午前中に本で学んだ重心の意識が見事に噛み合い、凛は予想を遥かに超える筋の良さを見せた。


「素晴らしい筋筋すじだ! 身体の軸がまったくブレていないぞ!」


「ははっ、本当に初めてかい? レオ兄さん、僕たちの弟子は将来とんでもない剣士になるかもしれないよ!」


二人から頭をなで回され、凛は「えへへ、陸上で体幹だけは鍛えてましたから!」と汗を拭いながら誇らしげに笑った。



しかし、厳しい稽古を終え、豪華な客室で一人きりの夜を迎えると——明るかった凛の表情は静かに陰っていった。


ベッドにぽつんと座り込み、小さな膝を抱え込む。


(みんな、どうしてるかな……)


脳裏に浮かぶのは、元の世界で待っている大好きな家族の姿だ。


いつも優しく見守ってくれた両親。

そして、何でも相談に乗ってくれて、末っ子の自分をたくさん可愛がってくれた頼もしい3人のお姉ちゃんたち。


一番下だからと甘やかされ、賑やかな家で笑い合っていた日々がたまらなく恋しい。


(私がいなくなって、お姉ちゃんたちすごく心配してるだろうな……。百合お姉ちゃんたちも、遠いところで一人で寂しがってないかな……)


16歳という若さで一人異世界に取り残された不安と、家族への溢れる愛おしさに、凛の瞳から大きな涙粒がポロポロとこぼれ落ちた。


「……お姉ちゃん……会いたいよ……」


声を殺して涙を拭いながら、凛は静かに夜を過ごすのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。