滅びの淵と神託
「このままでは国が滅びてしまう——」
女性が生まれなくなった異世界に、神託によって召喚された4人の乙女たち。
その中の1人、高校生の百合は、黒髪ロング・巨乳・スタイル抜群な18歳。実はこの国で15歳になると配られる『性教育教本』に描かれた憧れの女神「ユーリー」と全く同じ容姿だ
「本物の女神様だ……!」
一妻多夫の国で、最高の愛と包容力に包まれる、甘々に愛され尽くす異世界ロマンス!
「……また、女児の誕生はゼロか」
王宮の最上階にある執務室。豪奢な机に肘をつき、国王ヴェルナーは重い溜め息を吐き出した。
その顔には深い疲労の色が刻まれている。
この国——アルザール王国は、いま静かな滅びの淵に立たされていた。
いつの頃からか、この世界では女の赤子が生まれる確率が極端に減少し、ここ数年はついにゼロ。街を歩けば男ばかり。女性は希少な存在として過剰なまでに奉られ、我がまま放題に育ち、もはや国としての存続すら危ぶまれる事態に陥っていた。
「父上、本日の婚姻届出数もゼロです。女性側の求める結納金や条件があまりに跳ね上がり、婚約すら破談になるケースが後を絶ちません」
眉をひそめながら書類を差し出したのは、第2王子のレオンハルトだ。185センチを超えるしなやかで鍛え上げられた体躯に、知的な青い瞳。文武両道で民からの信頼も厚い青年だが、その表情は暗い。
この世界では、希少な女性を支えるために「一妻多夫制」が取られている。一人の女性に対し、最低でも3人、多い者では10人もの夫がつき、彼女を生涯かけて養い、守るのだ。しかし、そもそも肝心の女性自体が圧倒的に不足している現状では、どれほど制度を整えたところで限界があった。
「このままでは、我が国はあと一世代で滅びる……。神よ、我らにお見捨てになられたか……」
国王が苦痛に目を閉じた、その時だった。
バンッ!と音を立てて執務室の重厚な扉が開かれた。
「こ、国王陛下っ! 神託にございます!!」
息を切らせて飛び込んできたのは、大神殿を預かる筆頭神官だった。普段の厳かな態度を完全に忘れ、なりふり構わず叫ぶ。
「神託……だと!?」
国王とレオンハルトが弾かれたように立ち上がる。
「はい! 毎日欠かさず続けていた祈りに、ついに神がお答えになられました!『明日、神殿の森にこの国を救う4人の乙女を遣わす。身体は小柄にして、豊かな命を宿す者たちである。国家の未来として、最上の敬意をもって迎えよ』と!」
「4人の乙女……! 異世界から、新たな女性が降臨されるというのか!?」
国王の手に力がこもる。レオンハルトもまた、驚きに目を見開いた。
「ただちに最精鋭の捜索隊を結成せよ! 混乱を避けるため極秘裏にだ。レオンハルト、お前が指揮を執れ。騎士団長ギルバートと副団長ジェイドを伴い、明日早朝、神殿の森へ向かうのだ!」
「はっ! 必ずや乙女たちを無事にお護りし、お連れいたします」
レオンハルトは力強く胸に手を当て、深く礼をした。
執務室をあとにしたレオンハルトは、すぐに近衛騎士団の訓練場へと足を向けた。
そこにいたのは、190センチを誇る圧倒的な体躯と凶暴なまでの剣技を持つ騎士団長・ギルバートと、鋭い観察眼と軽妙な物腰で部下をまとめる副団長・ジェイドだった。
「——というわけだ。明日早朝、神殿の森へ向かう」
レオンハルトの説明を聞いた二人の巨漢は、一瞬ぽかんと口を開けたあと、互いに顔を見合わせた。
「……神託の乙女、ですか。小柄な女性……」
ギルバートが低く太い声で呟き、自分の大きな拳を見つめる。
この世界の女性は、平均身長170センチ。スレンダーで一重まぶたの凛とした容姿が多い。だが、神託の乙女は「小柄」だという。
「おいおい、俺たちみたいなゴツい男が行って、脅えさせたりしないだろうな? 壊さないように気をつけねえと」
ジェイドが苦笑しながら肩をすくめる。しかし、その瞳には隠しきれない期待と熱が宿っていた。
15歳になったすべての男子に配られる『教本』。
そこには、子作りや女性の愛し方とともに、この世界には存在しない「架空の理想の女性像」が描かれている。
黒髪黒目の長い髪、パッチリとした二重、豊満な胸と柔らかそうな身体——神話に登場する愛の女神『ユーリー』の姿だ。
男なら誰しもが一度は憧れ、現実に存在しないと知りながらも密かに心奪われた、あの挿絵。
(神託の乙女とは、一体どんな方々なのだろうか……)
180センチを超える男たちは、胸の中に秘めた幼い頃からの憧れと、国を救う使命感を抱きながら、静かに夜明けを待つのだった。




