病弱軍師 ~桜の花のように美しく散ることを彼が望まないのなら~
散りゆくことを知りながらも 桜は咲いています
たった数日を咲き誇る為に 一年を架けるのですね
儚くも美しい 桜はそんな印象を私に与えてくれます
そしてその感情は 開き直るには十分でした
どうせこの体で 長生きなんてできないのでしょう
だったら短い生を 精一杯 楽しめば良いのです
大切な人にも出会いました 迷わず一生を捧げられるほど
彼はこの乱世を 自らの手で鎮めようとしていました
彼は理想の国を 夢の国の姿を 語ろうとはしません
そんな態度に 私はきっと惹かれていたのでしょう
悪と呼ばれることがあっても 彼は少しも変わりません
優しさが誤解されていても 皆の為ならと笑いました
努力家な彼ですから 努力が報われているとは言えません
それでも満足気に微笑む 彼の目は上を目指していました
きっと私が連れて行きましょう 彼が望む場所へと
日に日に体力は衰えていっているのがわかります
病に体を蝕まれ もうこの先 長くはないでしょう
彼がいつも眺めている 庭の大きな桜の木
その蕾が花となり 散る頃には私の命も散るのでしょう
共に散ってしまうのなら 私は一人で散れそうですね
彼が桜の花を眺めている隙に 私は散ってしまいましょう
本当は最期まで彼の隣りにいたいと思っています
しかし覚悟が鈍ってしまいそうですから 駄目なんです
そうして避け始めていた 私も彼はお見通しでした
殿に読まれてしまう軍師なんて 必要ないじゃないか
軽く自嘲しながらも 私は喜んでいました……はぁ
唯一 全てを捧げることさえできるくらい信頼していた
そんな彼が私の心配をしてくれたことは 嬉しかったんです
彼は心から不安そうな顔をして 傍で私の手を握っていて
私が恐れていた通り 潔く散る覚悟が鈍ってしまいました
桜の花のように美しく散りたいと思っていましたのに
彼の優しさに 密かに感じていた彼への愛しさに
まだもう少しだけここにいたいと 悪足掻きしてしまいます
望む場所へと連れていく約束も果たせていませんしね
散りゆくことを知りながらも 花は咲いています
それは散る覚悟で咲くからと 私は思っていました
「俺の為に花は咲く。飽きたらもう散っていく」
確かに彼は言ってくれました 私に言ってくれました
まだ散らせはしないと 私を抱いてくれました
……だけど…………ごめん……なさい……お別れの時間です
愛しい彼の命令 逆らうことは初めてになりますね
彼の腕の中で眠りたい 彼を傷付けてでも……




