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青春未成熟  作者: 宮城 優火
2/2

親友

今回は親友がでますが真上パイセンは出ませんでした。

壁から背中を離した俺は、正直こういう時何と言っていいのかわからないけれど、とりあえず口を開いた。

「練習、戻りませんか?」

その発言が意外だったのか、真上さんも含めた先輩たちがこちらを見つめた。

「俺、全然気にしてないです」

「木江・・・!」

「・・・俺は先輩方に何もされてません」

何もされていないというのは嘘だが、別に殴られたわけでもない。

他意は無い、という思いを込めて真上さんを見ると、少しの間俯いた後、一つ頷いた。

「分かった、練習に戻るぞ。・・・お前らも」

その声に同意するように、先輩たちは校舎裏から出て行った。

俺もそれに続こうとしたら、真上さんに呼び止められた。

「お前は本当に、何もされて無いんだな?」

「はい」

「・・・よし、じゃあ練習戻れ。休憩前と同じペアでピッチングと、ノルマの球数投げたらダッシュ10本な」

「はい」

その日の練習は、それ以降何も起こることなく終わった。


部室の鍵当番に当たった俺は、親友の飯沼良哉(いいぬまりょうや)とともに、全員が部室から出るのを待っていた。

「なあ煌ちゃん、どうした?」

急に問うてきた良哉に首を傾げると、くすくすと笑われた。

「・・・何だよ」

「いや、分かりやすいなと」

昼間のことを考えていたのだが、表情に出にくいとよく言われるのだが、こいつは何故か、微妙な表情の変化に気が付く。

察しのいい良哉は、中学時代、転校初日から俺に声をかけてくれたやつだ。

常に明るく前向き思考で、それゆえ学校での人気も高い。

「昼休憩のときに、何かあったんだろ。お前急にどっか行くんだもん」

「先輩に呼ばれただけだ」

良哉はわざとらしく「ふ~ん?そうなんだー」と言って目を細めている。

こうなるとこいつはしつこい。

しかしここで話す内容ではないから、寮に帰ってからでもいいだろうと、とりあえず当たり障りないことを少し話すことにした。相談みたいなものだが。

「選考20人に残れなかった先輩たちに、俺たちが出来ることってなんだろうな」

「あー・・・なんかだいたい察した。てか、今現在進行形でやってんじゃんよ」

部室の鍵をいじりながら続ける。

「確かに、貴重な20人の内2枠に俺たちが入っちゃったことに、少しは罪悪感はあるけどさ。だからって悲観的になって、先輩たちに譲ろうとか考えて手を抜く方が、かえって先輩たちに対する侮辱だと思うぜ。だから俺、選ばれたときに、絶対全力でレギュラー取りに行くって、決めたんだ。・・・煌ちゃんだってそう思ったんじゃねえの?」

小さく頷きを返す。

そうだ。

俺だってそう思って練習をやってきた。

でも先輩たちには俺の姿は、心を決め、全力で取り組んでいるように映らなかったのだろう。

それに、今日の昼間、先輩たちの気持ちに触れて。

何か言いようのない、複雑な気持ちになった。

だから、俺が何をすべきかを考えていた。

「あんま深く考えんなって!もっと単純に答えだせばいいんだよ」

それにしても先輩たち遅いなーと言いつつ背中を叩いてくる。地味にいたい。

いい加減やめさせようと良哉の顔面をわしづかみにした所で、三年の更衣室の扉が開いた。

ぞろぞろと出てきた中に、今日の件の人もいた。

その人は俺を見るなり目を見開いて一時停止して、事情を把握しているらしいレギュラーの人たちは、その人の肩を叩いて一階に降りる階段に歩いて行った。

隣にいた良哉が訝しげに先輩を見上げる。

「悪かった」

急に頭を下げたその人――――甲斐(かい) 竜己(たつみ)さんはその体勢のまま言う。

「あの時もし、お前に手ェ出してたらと思うと、俺はっ」

「先輩、頭上げてください。俺、ホントに気にして無いんです」

「煌ちゃん・・・」

「俺、まじめに練習やってるように見えなかったんですよね」

自嘲気味に笑えば、甲斐さんははっとしたように顔を上げた。

「小さい頃から感情表現が乏しいと言われてましたし、こういうのは慣れてるんです。でも俺、選考20人に選ばれたとき、決めたんです。必ず、夏の大会で、チームを優勝させるって」

「!」

「だから、」

続けようとしたら、それは甲斐さんによって遮られた。

「やっぱ、慎司の言うとおりだな、お前」

「?」

「ホント何考えてっかわかんなかったけど、意外と芯がしっかりしてんだな。もっと早くにお前と話してたら、な」

俺の肩を叩いて、じゃあ、と階段の方に歩いて行く。

もっと早く話していたらなんだと言うのか。

「今からでも」

その背中に、声が届くように。

「俺、もっと先輩と話したいです」

一度止めた足を振り返ることなく進めて行ってしまう。

声は、届いたのだろうか。

俺は先輩のことを良くは知らないけれど。

それでもそれはお互い様だし、このまま終わってしまうのは、どうしてか嫌だった。

「煌ちゃん、だいじょーぶ。明日、また話しかけてみようぜ」

俺も一緒に行くから。

親友のその一言が、すごくありがたかった。






お読みいただきありがとうございました!

前回より短めですが、きりが良かったもので・・・。

次回は寮の話と、主人公が「人と付き合うこと」について考えます。

今度こそ真上パイセン出します。

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