05:饅頭怖い
その日の深夜、目が覚めた。
理由はいたって単純、トイレで目が覚めたからだ。
起き上がろうとするが、体が動かない。
金縛りか――。
シオリの話では、以前この部屋を使っていた異世界人はたいそうな饅頭恐怖症だったらしい。
それを面白がった三人は夜な夜な饅頭を差し入れした結果……その異世界人は喉に饅頭を詰まらせて死んでいたとのことだった。
だがそれなら、俺ではなくシオリたち三人が金縛りにあうべきだろう。
そして、もう一つおかしなこと……部屋の灯りがついている。消して寝たはずなのに。
ふと、灯りの前を誰か通り過ぎたのか一瞬暗くなった。そこには、銀白色の長い髪をした女性が立っていた。
白と紺を組み合わせた上品な衣装に身を包み、豊かな胸元が目を引く。整った顔立ちには、どこか余裕を感じさせる微笑が浮かんでいた。そして、手にしたレイピアを俺に向けて言った――
「発情した異世界人が、ここはお前の家畜小屋ではないぞ」
と。もしやと思ったが、間違いないはずだ。この女がセレナだろう。
「待てセレナ! 俺は今日からここに住むことになった『ツヅキ』だ! ……そう、シオリたちに聞けば誤解はとけるはずだ」
体を見ると、俺は縄でベッドごと縛られている。くそ、どうやったらベッドごと縄でグルグル巻きにできるんだ。いや、よく考えたらここは異世界、拷問術か何かで縄をどうにかしたのだろう。
「ふっ、発情した異世界人にしては頭が回るものだ。そこの小さなテントが動かぬ何よりの証拠!」
女はレイピアを俺の下半身に向け、顎をしゃくった。
何を言い出すんだこの女。俺のは数年前から……。
「チョモランマああああああああ!」
唯一まともに動かせた首から上、目に映ったのは縄が意図的に巻かれていない俺の一筆が柱となるテントだった。
そうか、俺は若返ったんだった。
「何を訳のわからないことを叫んでいる。お前の母国では小さなテントをチョモランマと呼ぶのか?」
「ち、ちげぇし……!」
言った自分が恥ずかしくなった。
もしやこれが、セレナの拷問のやり方なのかもしれない。拘束し、辱め……次はなんだ?!
そんなことを考えている時だった。
「ツヅキー、近所迷惑でしょー」
寝ぼけた濁声はシオリだった。
助かった……これで誤解は解け、晴れてトイレに向かえるというものだ。
だが――
「さらに発情しおったか!このゲス異世界人めが!」
「……」
俺は悪くない。シオリのネグリジェが悪い。
レースで縁取りした紫のシースルーなんて反則だろ?
なあ、あんたもそう思うよな?
俺は、喉に饅頭を詰まらせて死んでしまったという饅頭先輩に思いを馳せた。
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