門、騒動、要注意。
王都の周囲を囲む石造りの防壁。東西南北四ヶ所に王都へ出入りする為の門が有り、其処では日々、都会で夢を掴もうとする者や物見遊山に訪れる者、働き口を探しに来た冒険者、そして何か悪事を企む者が詰めかけている。
そうした様々な思惑を持った人々の中に僕達三人は並んでいた。
「全然進まないわね!」彼女は周囲の人達を観察する事に飽きたのか口を開いた。
「これが何時もの事なのよ。日が落ちる前に入れれば良い方ね。」セラは王都の行列には慣れている様で、差程気にしていなかった。
それから暫くして、牛歩を続けていた行列の終わりが見えてきた頃、前方から何やら騒ぎが聞こえてきた。
「良いから早く通せや!冒険者証だって出してんだろ!」騒ぎの聞こえる方へ目を向けると、何処か危険な感じがする白髪の男が門番と憲兵に取り囲まれていた。
まさに一触即発と云う空気の中、騒動を見守っていたセラが近付き声を上げた。
「……いい加減にしなさい。一体、何の騒ぎなの?」セラの言葉にその場の全員が注目し、門番が答えた。
「セラ殿でしたか!危険人物が王都に入ろうとした為、警戒をしている所であります。」門番は丁寧に騎士の礼を取ると、セラに現状の説明をした。どうやら男は素行の悪い冒険者で有名である様だった。
「……おう。剛剣じゃねぇか。風爆の野郎のお守りは良いのかよ。」白髪の冒険者はセラを二つ名で呼んだ。セラは嫌悪感を表情に出すこと無く言葉を返す。
「……カイルはもう死んだわ。それより何を揉めてるのよ。灼火。」セラは簡潔にカイルの事を伝え、灼火と呼んだ男に対し騒動の原因を聞く。さりげなく腰に挿した剣を抜ける様に身構えているのを見るとかなりの要注意な人物と云う事が窺えた。
「……そうか。風爆は死んだか。こんな良い女を遺してくたばるとは情けねぇ野郎だ。そんで揉めてるのは俺のせいじゃねぇ、手続きに冒険者証出したらコイツ等が騒ぎだしただけだ。」そう言って男は己の周りを取り囲む兵達を見渡し睨み付けた。
「このまま騒ぐなら全員殺すぞ。さっさと通せ。ギルドに報告したら直ぐに出る。それで良いだろう。」男の言葉にその場に居た全員の間に緊張が走る。ハッタリ等では断じて無いと、セラを始め皆が背中に嫌な汗を掻いた。
「……よしなさい。此処で暴れたら、どれだけの人々が犠牲になるか分からない訳じゃ無いでしょう。」セラはより一層警戒を強め、男を牽制する。右手は既に剣に掛かり、一触即発の様相を呈していた。
「なんだぁ?やんのかよ、剛剣。出来損ないの旦那の元へそんなに送って欲しいのかよ!」男は声を荒げ、セラへ向け右手を翳した。セラの顔が強張り、遅れて剣を抜こうとした時だった。
セラの眼前を閃光が瞬く。男の顔面を目掛け、この場の誰よりも早く躍りかかったのは彼女だった。




