交代、忠告、襲撃。
振動が、交代の時間だと告げる。エリを起こさない様に立ち上がり、夜番をしているセラの元へ向かった。セラは寝るときには無かった焚火の傍で周囲を油断なく警戒している様だった。
「セラさん交代しましょう。休んでください。」セラに声を掛けると、森の方へ向いていた目が此方に向けられる。
「まだ少しは早いんじゃない?マコト君が貸してくれた時計とやらはまだ二周してないわよ?」彼女に正確な時間が計れるだろうと渡しておいた手製の時計がそのままセラに渡っていた。
「少し早めに目が覚めましたので。気にせず休んで貰っていいですよ。」そう伝えるもセラは時計を見つめ、定められた刻限までは警戒を続けると堅持されてしまった。それなら少し雑談でもしましょうと、他愛もない会話をしていると、森の方向に違和感を感じた。
「……うん?」ふと、森に目を向けるとそこには薄い赤色の魂が漂っていた。魂はそのままゆっくりと此方へ近づいてくる。
「どうしたの?何かあった?」此方の様子にセラが警戒を強めながら真剣に聞いてくる。どうやら見えてはいないみたいだ。
「少し待ってください。調べます。」そう言って近くへ漂ってきた魂に意識を集中し、伝えたい事を感じ取っていく。ジョブの習熟度が少し上がったせいか、魂から多少ではあるが情報を受け取れるようになっていた。
「……危険、注意。それから……接近!?セラさんっ!」その一言でセラは瞬時に立ち上がり、手元の剣を抜き構えた。暗闇から巨大な影が飛び出し、剣を構えたセラに突進するも、セラは横っ飛びで巨体を躱す。躱した際に多少ではあるが剣で切り傷も付けていた。流石の身のこなしである。
「エリ!敵襲!戦闘開始!」テントに向かって大きな声で指示を出す。彼女は起きていたとも思える速度でテントから飛び出してきた。
「敵ね!任せなさい!あれは……大きい熊……?可愛いわね……。」言うてる場合か!と、窘め油断なく巨体を観察する。
「マッドネスベア!Aクラス相当!マコト君は下がってなさい!エリちゃんはマコト君の間に入って護衛!気合い入れないと死ぬわよ!」その言葉に彼女の顔が真剣な物に変わる。指示通りに僕は下がり、彼女が護衛に就く。
熊もといマッドネスベアはセラによってつけられた傷を嘗めとりながら、憤怒の雄たけびを上げた。かなり執念深い性質の様でセラに向かって一直線に向かっていく。これも考慮して一撃入れたのかと感心しつつ、出来ることは無いかと思考を巡らせる。
錬金術で足場を崩すか……否、足を引っ張る可能性が高い……。どうするかと横目で生命の書を開いて出来ることの確認をする。開放……吸収した魂のスキルを一時的に使用できるようにするスキルだけど現状ここから出来る事が無い。
何も出来ない無力感に焦りを感じていると、前方の彼女が声を上げた。
「私がやるわ!」宣言した彼女は自信満々に胸を張った。




