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最終話 本能寺の変
夜が、明ける前だった。
京。
本能寺。
静寂を裂くように、
足音が響く。
「敵は――本能寺にあり」
その声とともに、
軍勢が動く。
明智光秀。
長く、仕えてきた主へ向けて、
刃を向けた男。
火が放たれる。
一瞬で、
闇が赤く染まる。
炎は、迷いがない。
燃え広がり、
逃げ場を奪い、
すべてを包み込んでいく。
その中で――
織田信長は、目を覚ます。
「……来たか」
驚きは、ない。
ただ、静かだった。
外はすでに戦の音。
叫び声。
鉄のぶつかる音。
家臣が駆け込む。
「敵襲にございます!」
信長は、立ち上がる。
「相手は」
その問いに、
一瞬の沈黙。
やがて、答えが落ちる。
「……明智光秀」
わずかな間。
だが――
信長は、笑った。
「是非もなし」
それだけだった。
怒りも、
嘆きもない。
ただ、受け入れる。
炎が迫る。
もはや、逃げ場はない。
信長は、静かに奥へと進む。
振り返らない。
すべてを理解した者の歩み。
やがて――
一室。
火が、すぐそこまで来ている。
信長は、刀を取る。
その姿は、
最後まで、変わらない。
「人は……ここまでか」
誰に聞かせるでもなく、
言葉が落ちる。
そして――
炎の中へ。
音が、消える。
すべてを飲み込むように、
火は燃え続ける。
やがて、
本能寺は崩れ落ちる。
煙が、空へ昇る。
一つの時代が、
終わった。
天下に最も近かった男は――
炎の中で、消えた。
それが、
本能寺の変。




