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(中身アラフィフ、外見15歳)
ミレーヌの記録も断罪も、ぜ〜んぶ終わった。
学園の空気も静まり返り、ようやく“日常”が戻ってきた。
(まあ、私の日常って“雷を容器に詰める”研究だから、世間の定義とはズレてるけどね)
放課後、私はいつものようにリュシアンの家へ。
雷を電池のような器に入れる実験を再開した。
(雷って、暴れるし気まぐれだし、まるで前世の上司みたい。 器に収めるのが至難だわ)
ある日の実験中、リュシアンがぽつりと語り始めた。
「セレナさん、覚えていますか? 僕が前に何度か話した、 僕は……成長が遅いという話」
「うん、覚えてる。 ていうか、むしろ同年代よりも成熟してる?と思ってるけど……」
(妙に落ち着いてるし、アドバイスのタイミングも絶妙だし。 前世の私より“社会人力”高いわよ)
そして唐突に、彼は自分の生い立ちを語ってくれた。
魔法使いの家系では、魔力が胎児の成長に干渉するため、子供に恵まれにくい。
リュシアンは“奇跡の子”だった。
けれど、魔力が強すぎて母は何度も流産しかけた。
母は毎日語りかけた。
「大丈夫、大丈夫。ゆっくりでいいの。 私の中で、ゆっくり育って」
出産時、母は彼の魔力に飲み込まれて亡くなった。
魔法使いの家系では、胎児の魔力が強すぎると母が命を落とすこともある。
リュシアンの父は、母の愛情を語り聞かせながら、息子を慈しんで育てた。
そして、リュシアンの体の成長は異常に遅かった。
それに気づいたのが乳母だった。
リュシアンが2歳の頃、「坊ちゃまの成長が遅すぎませんか?」と進言。
病院でも原因不明。父の勤務先の魔法省で検査した結果――
「成長スピードが普通の子の半分、 もしくはそれ以下です」と言われた。
その原因が判明したのは、それから7年後。
彼が9歳になったころだった。
リュシアンの見た目は、まだ4歳だった。
呪いの原因は――母の言葉。
それが彼を守る殻になり、同時に閉じ込める檻にもなっていた。
(魔力って便利だけど、代わりに命がけの出産。 そして母親の言葉が愛情100%なのに、魔力的には“呪い”だったなんて)
10歳のとき、学園からリュシアンに入学申し込みが届いた。 でも見た目が5歳では、入学どころか“迷子”扱いされる。 彼は学園に通わず、家で過ごす日々を選択した。
私が初めて参加したお茶会――彼は本来の参加者ではなかった。 魔法省での定期健康診断帰り、見た目が子供だったため、参加者が迷子になっていると思われ、誤って連れてこられたそうだ。
話の続きで、彼の実年齢を聞いてみたところ――
「見た目は15歳だけど、現在の年齢は……35歳です……」
「え? むしろ前世の私と年齢近いじゃない!! まだ、それでも一回り以上離れているけど……」
(そりゃ話が合うわけよ。 中身アラフィフと中身35歳、会話のテンポが“健康番組”並みに落ち着いてる)
「でも、まだ……セレナさんの前世の年齢より若いですよね……」
そう言って笑った彼の顔は、どこか寂しげだった。
同年代の子供たちとは話が合わず、 大人たちからは子供扱いされ、 話せる相手がいなかった彼にとって――私との交流は、初めての“対等な会話”。
初めの頃にリュシアンが私に言ってくれた。
「セレナさんと話すと、楽しいです。 ……初めて、誰かとこんなにも、長く、楽しい時間を過ごせています」
(あれはきっと本心だったんだろう。 その言葉、前世で“誰にも見てもらえなかった私”に刺さる)
あと個人的に、不思議に思ったので、彼の遅い成長が外に漏れていない理由を尋ねた。
――使用人たちは、魔法秘密保持契約を結ばされている。 待遇は高待遇。 辞める人はほとんどいない。
(この家は、彼の安心できる世界。 そして、私の前世みたいに閉じられ、行き場がない世界でもあった)
【あと2話で完結予定です。】
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