第九十五話
ルイスは懐からいくつもの試験管を取り出し、封をしているコルク面をふとももに装着している薄い板に向けて強く擦ったあと私の周囲を浮遊する鏡に向かって投げた。
試験管は導火線に火が付いたようにコルクの辺りが燃え始めていて今すぐにでも中に詰まっている液体に引火しそうだ。
それが私の周囲に投げ込まれたということは巻き込まれるのではないだろうか?
「サイレント殿、身を低くして!爆発しますぞ!」
やっぱり爆発もするし私も巻き込まれるのかい!
すかさず身を低くした途端、上空で小規模な爆発が何度も発生した。
いくつもの鏡は粉々に砕け散り残っているのはハルの周囲に漂う鏡だけとなっているので、サポートのために投げナイフを取り出してスキル『投擲』で確実に命中させて落としていく。
鏡のHPはほんとうに低いらしく、ただ当たるだけでは微々たるダメージしか与えることができないのにそれだけで落とせるのはめんどうではなくてよかった。
だけど、デコピンで落ちる雑魚敵ならば恐らくだけど一定数を倒すとまた補充されるのではないだろうか?
それとも時間経過でじわじわと増えていくのか。
あとあと考えればいいだろう、今はモンスターのHPを減らしていくことが先決だ。
そしてようやくハルがあと数歩で神鏡に辿り着くまで接敵できた。
「火の魔石、蓄積一段階。『フレイムフィスト』」
ハルはメニューから取り出した淡く緋色に輝く石を取り出してガントレットで打ち壊した。
壊した石から炎が噴き出し彼のガントレットに吸い込まれるようにまとわり始めてガントレットは朱色に輝き始めた。
「キィ……リ、リ……ワレ……アツ……」
初めて神鏡から鳴き声らしい声を聞いた。
だが、声が高すぎて不快な感じしかしないが何かハルに向けて攻撃でも仕掛けようとしているのではないだろうか?
そう考えていると神鏡はまたも背後から小さな鏡をいくつも出現させこちらにまた展開するのかと思いきや、鏡の面をハルに向けて周囲を囲みこんだ。
そして、浮かんでいる全ての鏡から光線が放たれた。速度は光ということでかなり早く、またいくつも光線があり全てを避けることは不可能。
ハルもそれはわかっているので今の時点で避けることが不可能なものの中で致命傷もしくは大ダメージを負いそうな攻撃のみをガントレットと防具の堅い部分で受けきった。
「へぇあんな感じで耐久があるステータスだと確実な防御でダメージを減らす選択肢が取れるんだね。私も紙装甲ではないし最低限は防御があると思うから状況によったら出来るかも。」
「サイレント殿なら出来るとは思いますぞ防具だけなら....ですが、その防具が破壊される可能性は高いですぞ。その防具って装飾改造ですぞな?」
そう疑問をぶつけてくるので思い出してみる。
店でナイフを防具に装着できるようにしたいと訪れてみた際に改造すればいいのでは?という答えをもらいその場で即決して改造してもらったのは覚えている。
改造としか聞いていないから装飾というのは初めて聞いたが、どこかで装飾とかを見たような気がする。
確か防具の改造費を出すためにダイアログを開いたときに改造というボタンを押したときに『威力』『属性』『装飾』などと見たね。
「あ~うん、装飾だったと思うよ。それが防具破壊されることとどう繋がるの?」
「装飾改造を施したものは最大耐久値が最低でも10%以上減ってしまうんですぞ。その分見栄えがよくなったりサイレント殿のようにナイフなどを収納など改造する前にはないシステム外の効果などを生み出すことがありますぞ。」
「聞いてると派手だったり色々と付けたり取ったりとかすると最大耐久値がゴリゴリ減ってしまうと。私のはそこまで思い切った改造ではないからそこまで多くは減らないけど、ハルみたいに防具で受けるのは向かないようになったということね。」
ルイスはコクコクと頷きながら再度アイテムを取り出してハルに攻撃していた鏡がこちらに向かってきたのを撃墜させていく。
ユニークモンスターに被弾なしなどは無理だから参考にしようと思ったけど、まだまだ相手の体力を削れていない状況では実践はしたくないな。
残念に思っているとハルは上手く相手を誘導していたので神鏡は反対を向いていて攻撃のチャンスが到来した。
ルイスとの会話の途中だがスキル『疾走』で地を払うような低い姿勢で、一直線に敵へと踏み込んだ。
最近は速度も鍛えているのでハルに夢中の神鏡はこちらの接近にすぐには反応できていない。
「……カエセ……カエセ……カエセ……」
「アサシンアタックからの進化。『影討ち・一刃』」
黄金の面にアサシンアタックのような背後の攻撃に補正が入りつつ軽くノックバックを発生させる進化スキルを使用する。
ユニークモンスターだろうとノックバックは発生したらしく攻撃直前に何やら喋っていたのだがキャンセルさせることに成功した。
それに合わせてハルは朱色のガントレットで何やら正拳突きのようなスキルを発動させ私も彼も初めて攻撃を当てることができた。
「ダメージがあんまり入った感じがしなかったぞ。お前はどうだった?」
「私の方も背後へのクリティカルだけどそこらのモンスターの半分ぐらいしか与えれてないかも。」
お互いにダメージの通り具合を報告していると、神鏡は金色の光を放った。
「ヒビ……ヒビ……ヒビ……」
「ワレ……ワレ……ワレ……」
「セカイ……セカイ……セカイ……」
突如として超高速で鳴き声を出し始めた。
本当にこれは鳴き声なのだろうか?
「それ!止めるんですぞ!アプデ後に導入された一部モンスターの詠唱ですぞ!しかも、スキルで超高速詠唱まで発動してますぞ!」
「「はぁ!??」」
声が揃ってしまった。
だけど、驚いてはいるものの反射的にノックバック系のスキルなどを発動させて詠唱を止めようとしたのだが遅かった。
金色に光ったスキルは詠唱速度をただ早くするだけではなく詠唱が進めば進むほど詠唱の速度が上がるという頭のおかしいものだった。
「ツドエ……キョウゾウノセカイヘ」
神鏡の濁った黒い鏡面から突如として暗黒の雲が私とハルに伸び鷲掴み引き込んでいった。
私はあの暗黒の雲を見た途端全身が動かなくなったことで、これは強制的に受ける攻撃と認識して諦めてしまった。
鳴き声とはなんでしょうか?
作者もよくわかりません。
感じてください。




