第二話
真っ白な光が収まって視界が捉えたのは土の道にレンガで建てられた建物が立ち並んでいる大きな広場だ。
「ここが、始まりの街の中央広場なんだ。思ったよりもたくさん人がいてびっくりした。これ、みんな私と同じゲームをしている人達なんだね。」
今いる広場にはいろいろな容姿や装備をした人たちが何人もその辺りでうろついたり、会話していたりしている。
「世界で一番プレイヤーが多いとは聞いていたけど、始まりの街だけでこんなにも人がいるなんてびっくりだよ。あ、光の中から人が出てきた。あんな感じで人がこの世界に来るんだ。」
自分が光に包まれてから現れるのは見えないので人がやってきたのを見るしかないが、想像通りの登場であまり面白くはない。
「とりあえず、約束の時間が来るまではこのアバターに慣れておいて2人に置いていかれないようにしておかないとね。最初に行くべき場所は武器屋だったよね。」
友人からは、まず武器屋に行くことを忘れないようにと言われている。目印は建物から武器のマークをした看板が取り付けられているところにあるらしい。
この広場の中央に4方向を指す看板があるのでどこにいけばいいのかを確認する。
「ええと、北が第二の街、東がマーケット、西が宿場、南が港なのね。なら武器屋は東に行けばいいってことなら早速向かおう!」
看板が指し示す東の方に向かっていくことに。色々なプレイヤーが北に向かったり西に向かったりなどと動いているのを見ると新鮮な感じがする。
「ゲームの世界ってNPC?しかいなくて動きも決まったことしかしないらしいけど、オンラインゲームって本物の人間が一緒の世界で活動しているからすごい現実感があるね。けど、たまにぎこちない動きをしている人もいるけど。」
この広場の中で歩き方がおかしい人がいたり、よろめいている人が数人いる。これが、友人の言っていた現実の体とアバターとで違いが多いと歩くことさえ難しくなるのがまさにそれだろう。
「ゲームの世界で動きずらくなってしまうし、現実世界でも歩行に支障が出るってニュースでも一時期話題になっていたかな。」
自分は少しだけ胴体と足の比率を気にならない程度に変えたけど、動きに関して全く支障がないので走っても問題がなさそうだ。
「広場よりもこっちは人が少ない。武器屋の看板が複数あるけどどこに入ればいいのかわからないや。どこにいけばいいのかまでは話してはいなかったな。」
武器屋の看板をつけている建物が複数あり、どこも同じ見た目をしているので違いがわからない。
「適当に直感で決めてみたらいいか、気に入らなかったら別の店に行けばいい話だし。」
そう思ったので、一番奥にある人が多く訪れなさそうな立地の店に決めた。
店の扉に手をかけて勢いよく入る。
「いらっしゃーい。お、新人プレイヤーちゃんじゃん。お安くしておくよ。」
「ええと、ここは武器屋であってるの?NPCしては流暢に喋っているけど。」
店主は目を丸にしたかと思うと急に笑い始めた。
「君、オンラインゲームするの初めてでしょ。ほら、私の頭の上の文字とマークが見えるでしょ。」
「はい、緑色のひし形のマークに、カインって文字が。ああこれが、プレイヤーを示しているんですね。」
「そう正解~。改めまして、この始まりの街で武器屋を営んでいる生産職のカインって言うんだ。初心者からベテランプレイヤー向けの武器や防具を取り扱っているよ。よろしくね。」
カインという女性は色黒で美人な職人の見た目をしている女性プレイヤーだ。髪色がこげ茶色をしていて昔絵本で見たドワーフの女性にそっくりの外見をしている。
「私は、サイレント。このオンラインゲームは今日が初日で友人からまずは武器屋に行けと言われて来たの。」
「そうかそうか、初日ならまずは武器が必要だからな。初心者用の武器はそこの棚に立てかけているのから選びな。全て一律500Gだからな。」
「500G。安いのかな?」
「500Gは初心者用装備としてはNPCが売っているのと変わらないから高くも安くもないぞ。ただし、うちで初心者装備を買ったら別の初心者装備と交換してあげるぜ。武器も種類があるから剣が合わなかったら槍やナックルとか自分に合う武器が見つかるまでサポートしてあげるぜ。NPCの店ではそんなサービスはないけどな。」
カインは笑顔で売り込みを始めだしたけど、あまり人が来てなくて困っているのかな。人がいないからゆっくりと選べるからここで武器を決めていこうかな。
「それじゃあ、ここで武器を選んでみるよ。何がいいんだろう?」
「何も決まっていないならフィーリングで決める人が多いぞ。」
「なるほど、それじゃ武器選びも適当に...」
さっと見た中で決めた武器を手に取ってカインの元に向かう。
「お支払いお願いします。」
「はいよ、表示された画面のOKボタンを押しな。それで購入完了だ。」
言われた通り、武器とお金をトレードする画面が出てきたのでOKボタンを押すと武器の所有権が移りましたと表示された。
「そのままフィールドに出るなら街を北に行けばすぐだよ。敵も出てくるけどまぁ頑張れ。」
「ありがとうございます。行ってきます。」
初めて武器を手にしたらテンションが上がってきたので武器屋をついつい飛び出してしまった。
さっきの広場を北に行けばフィールドでモンスターと戦うことが出来るので楽しみだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あの見た目でアクセサリーはかなりの強キャラに見えたのに新規勢なのは驚いたな。」
女性としては少し身長が高くて、インナーカラーだろうが結構色が派手なので普通に見えていたし、スタイルがかなりいい。さらには素顔が見えないように闇に飲み込まれそうな黒色と赤の装飾を施した仮面を身に着けている。
「あの子、このゲームにはまったらここのお得意さんになってくれないかな。あの見た目の人がこの店をよく出入りしたら儲かりそうなのに。」
普段は生産職として素材を生成して武器とかを作ってるけどあまり売れないから、副業の素材の販売の方が資金稼ぎとしては儲かっている状況だ。
「次はいつ来るんだろうな~。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
他の作品のURL
・Dear Labyrinth_親愛なる迷宮_漆黒の影と神の使徒
https://ncode.syosetu.com/n8193fh/
・少女は魔法を夢見る
https://ncode.syosetu.com/n9741iq/