第9話
敵の首領が現れた!!
(今度は二ヵ月も遅れてしまった……)
突然現れた隻眼の騎士。
辺りには蛮族の群れに老魔道士……。
騎士の名前はガニス。
どうやらこの男は中立都市を我が物にすると声高らかにそう発言した。
「何言ってんだお前。頭おかしいんじゃねえのか」
ガニスの言葉に対して軽口を叩くフリング。
「言ってろ。今もお前らが守っているあの都市に大量の蛮族が向かってるところだぜ」
「ふーん……だから?」
「……随分余裕じゃねえか。なあ、聖王国騎士の教会所属の騎士、フリングさんよぉ」
「おや、僕の事をご存じで?」
「まあな。俺も元は聖王国の騎士でな。あんたは聖王国内では結構な有名な騎士だったんだぜ。突然行方不明になった時は大騒ぎだったぜ。まさかこんなところにいたとはな」
「そういうお前は騎士のくせにこんな連中といるなんて、あの国も落ちたもんだな」
「けっ、俺には騎士なんざ初めから向いてなかったんだよ。なのにバカ兄貴が勝手に病に臥せやがって。そんでクソ親父が家のためとなんだとほざいて騎士にしやがったんだよ。正直バカらしくてやってられなかったから、戦闘中に敵を追撃するふりしてそのままとんずらさせてもらったわけさ。で、その後は追いはぎ、強盗とかやってるうちにああいう連中がいつの間にか集まってな」
「それで蛮族の軍団が出来上がってたわけか。騎士よりそっちが向いてたわけね」
「おかげで好きにやりたい放題できて最高な人生送れてるわけさ。そしてあの都市を手に入れれば俺達の楽園になるわけさ」
「そいつは御大層なことで。だがな……」
フリングは剣先を前に向け不敵な笑みを浮かべこう言った。
「僕達治安部隊と冒険者……いや、中立都市なめんなよ」
その言葉にサイカも剣を構え、藍染も銃を構える。
「へっ、言ってろ。どちらにせよ……そろそろ時間だな」
「なに?」
ガニスの言葉に怪訝に思うフリング。
「おい、爺さん」
「ふむ、そろそろ彼らが都市の中へ入った頃じゃろ。これで都市へ潜入できそうじゃ」
「おいおい、何を言って――」
「……気をつけろ、あの老魔道士、転移魔法で次々と仲間を呼び出しやがるぞ」
女獣剣士は老魔道士を睨みつけて言う。
「おいおい、そんなことできるわけ――」
「ところができるのじゃよ。わしの転移魔法はわしの魔力を付与させた者を呼び出すこともできれば、付与させた者の近くに移動することも可能での」
「つまり、仲間の誰かが中立都市にたどり着けば……」
「わしはすぐにその都市に飛ぶことができ、そこから仲間を送り事ができるわけじゃ」
藍染の言葉に老魔道士はそう答えた。
「なんてこったい……」
「今頃、あの戦いのどさくさに紛れて都市に侵入してるはずだぜ」
一方、中立都市入り口前にて。
「あーはっはっはっはっは!!! 最っっっ高に楽しいぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
敵陣の中心に切り込み、蛇腹剣を鞭のようにしならせ、敵を切り刻み、狂戦士の如く大暴れするエーレイル。
「オラオラオラァァァァァァ!!! 全部バラバラに切り刻んでやるよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
狂気な笑みを浮かべ、敵をことごとく切り刻む。
「はっはっはっは!! 相変わらず激しい女だな、エーレイル」
「流石は治安部隊屈指の最凶。敵なんか全部ミンチじゃん」
そんなエーレイルの暴れっぷりを見ながら戦うルーカスとエルデナ。
「(ぜ、絶対近づかないように気をつけよう……)」
交戦中の他の冒険者達は苦笑しながらそう思った。
「ひゅー、相変わらずだな、エーレイル姐さん」
「敵だったら実に恐ろしい人だ……くわばらくわばら」
「少なくとも暴れ始めたらあの人には近づきたくねえわな……」
「だな。ちょっとでも近づいたら俺達も挽肉にされちまうぜ」
と、援護射撃をしているフレンや治安部隊も彼女の活躍っぷりを見て苦笑いをしながら引き金を引く彼ら。
そんな時、フレン達のいる部隊の背後で何かが蠢いていた。
そしてそれは……中立都市へ向かっていた。
「ヨシ、キヅカレテナイ」
「ソノママナカニハイルゾ」
「ユックリ、ジンソクニ……」
冒険者と治安部隊が戦っているどさくさに紛れて、黒いローブを纏い、闇に紛れて中立都市に忍び込もうとする蛮族がいた。
彼らは蛮族に加担している老魔道士の命で中立都市に忍び込み、老魔道士をそこに転移させるために動いていた。
冒険者達や治安部隊達は全員気づいていない。
蛮族達は中立都市の中を覗き込む。
辺りは暗く、誰もいなかった。
「……ダレモ……イナイ」
「アカリモナイナ……」
「ヨシ、ハイルゾ」
蛮族達は素早く中立都市の中に入る。
「ナントカハイレタナ。ソコノエルフ。アノマドウシ二シネンヲ――」
その時だった。
「!!??」
突如、建物の屋根から急に光が蛮族達に当てられた。
「ナ、ナンダ!?」
蛮族達の前には銃火器を構えた治安部隊が待ち構えていた。
「コ、コレハ!?」
「おやおや、こんなところに野蛮なネズミが入り込んできましたね」
声と共に、正面からも光が照らされる。
「グオ!? マブシイ!!」
そこにいるのは眼鏡をかけ、綺麗な羽が生えた妖精族の青年がいた。
そして彼が乗っているのはなんとジープである。しかもM2重機関銃付き。
青年の名前はエリオット。フリングの補佐官である。
「フリングさんの思った通りだ。どさくさに紛れて忍び込む奴もいるかもしれんと言うから、仕掛けてみたら案の定だ」
フリングの指示であらかじめ出入り口に治安部隊を配置し、敵が入ったらサーチライトで敵を照らす。
普通ならこんな暗闇で普通なら敵が入ってくるところなんて見えないが、暗視スコープをつけた者なら暗闇でも見えるのであった。
「マ、マズイ――」
「撃て。ただし……」
「……はっ!」
「!?」
「……はっ、おめでたい奴だ」
フリングはぼそりと呟いた。
「あ? 今なんつった?」
「別に」
ガニスの問いに不敵な笑みでごまかすフリング。
「……貴様のその魔力にその転移魔法の技術とやら……まさか魔族か?」
サイカが老魔道士に問う。
「ほっほっほっ……よくわかったのう、魔族の騎士よ」
「…………」
「え、お前、魔族だったのか!?」
驚く藍染。
「……ま、まあな……」
何故か目が泳いでいるサイカ。
「僕は知ってたよ」
フリングはどうやら知っていたようだった。
「しかもお主……サキュバスじゃろ」
と、老魔道士が指を指してそう言った。
「!!!!」
老魔道士の言葉にギクりと言わんばかりにビクっとするサイカ。
『え!? そうなの!?』
藍染はともかくフリングまでも驚いた。
「サキュバスってあの……」
「え、マジなの? マジなの?」
「意外過ぎる……」
藍染とフリングは驚愕のあまり目を見開き、女獣剣士は目を細めた。
「うるさい!! 悪いか!?」
サイカは大声で叫んだ。
「ぎゃははは!! 女騎士がサキュバスとか随分滑稽じゃねえか!!」
「う、うるさい!!」
「くくくく……中々いい女だし、今から俺の女にしてやりてえぜ」
「……やれるものならやってみろ。切り落とすぞ」
サイカはガニスを強く睨みながら剣を握りしめる。
「おお、怖え怖え」
「……さて、そろそろかのう。わしは先に行くぞ」
「ああ、待ってるぜ」
老魔道士がそう言うと呪文を唱えて転移魔法によってどこかへ消えた。
「あ、おい!? フリング、マズいんじゃねえか、これ!?」
「くっ、このままだと都市が!!」
藍染とサイカは都市の方へ顔を向ける。
「心配ないよ。たとえ中立都市がそう簡単に落ちないよ。それにあの老魔道士は今頃……」
老魔道士は転移魔法で中立都市へ降り立った。
「ふむ、無事に入ることが……!?」
老魔道士はあるものを見て驚愕した。
老魔道士の足元には潜入した蛮族達の死体。
全員銃痕がたくさん残っていた。
そして、周りは銃火器で武装した治安部隊が構えていた。
「こ、これは……!?」
「おやおや、こんな所に知らないぼけ老人が一人現れるとは……」
先ほどの妖精族の青年エリオットが腕を組んで待ち構えていた。
「なるほど、あれがフリングさん達と対峙していた例の老魔道士か」
エリオットが何故老魔道士の存在を知っていたか。
それはフリングには小型のインカムに小型のマイクを他人には見えないように細工付きで着けてあり、エリオットも同じものを着けて、常に情報を共有していた。
普通なら魔法による念話があるが、フリングがあまり得意ではないため、このような物を使っているのであった。
「ま、マズい――」
「やれ」
老魔道士は慌てて呪文を唱えようとするも、治安部隊の一斉銃撃であっさりハチの巣にされてしまった……。
「これで増援は止まりますね」
「そうですね……フリングさん。例の老魔道士をはじめ、侵入した敵は排除しました」
エリオットは小型マイクでフリングに報告するのであった。
「さて……老魔道士がここに転移すると思って一人生かしておいてよかったです」
エリオットはそう言ってすでに虫の息の状態の蛮族に近づき、銃口を向ける。
「ク……クソ……」
「これで街の安全は守られましたね」
エリオットはそう言って引き金を引いた。
「……ああ、ご苦労。引き続き頼みますよ」
フリングは連絡相手のエリオットにそう返答した。
「ああ? てめえ何言ってやがんだ?」
「ああ、残念。中立都市に潜入したお仲間達と転移した老いぼれ魔道士はみんな死んだようですよ」
「おいおい、そんなハッタリ通用するわけ――」
だが、少ししてガニスは気づく。
「(おかしい、もうそろそろここいらの奴らが転移されるはず……まさか!?)」
ガニスは仲間の蛮族達が転移されないことに気づき、フリングに振り向く。
「……やってくれるじゃねえか」
「さあ、どうする? ここで手を引くなら今のうちですけど?」
「ほざけ。どうせ生きて帰すつもりねえだろうが」
「……まあね。君達諦め悪そうだから」
「……へっ、わかってるじゃねえか」
そうしてガニスとフリングは剣を構える。
「いいぜ、こうなったらここで決着をつけてやる。てめえら、あいつらをブッ殺すぞ!!」
ガニスの言葉に対し、蛮族達は大声を上げる。
「総力戦か……相手は大量、こっちは四人……そこの獣人ちゃん、怪我治りたてだけど行ける?」
「なんとかな」
「やれやれ、しかし多勢に無勢だぞこれは……」
「あはは……なんてこったい」
そうして藍染達も武器を構える。
「さあ、行くぞ!!」
『おお!!』
フリングの言葉と共に藍染達も大声を上げる。
そして四人とガニス達は同時に駆け出し、激突した!!
次回、決着なるか!?




