昨日の敵は明日の side親衛隊
ここに修学旅行の報告書をまとめます。
1日目、悠馬様はご学友の山本くんと楽しそうにしてられた。
2日目、悠馬様は山本くんと時々徳原くんと一緒にいた。
以下日程もほぼ同じ。
だが、最終日とんでもないことがありました。それは新千歳空港でのことです。
悠馬様の横に突如、魔女土端が座りました。おそらく私たちを牽制するためかと思われます。いつもなら、悠馬様は魔女を退けるんですが、今回は違いました。
いつになく、2人の距離は近く、そして、嗚呼。認めたくありませんが。
悠馬様から魔女に触れたのです。
何故!?何故にホワイ!?
私たちは走り去ろうとする魔女を捕らえました。魔女こと土端は、見たこともないほど動揺しています。顔も真っ赤です。悠馬様がひっそり何かを告げて、土端は逃げたので何かを聞き出す必要があると思い、我々は土端を囲みました。
「魔女!」
「あー、もう。何よ」
「ゆ、ゆ、悠馬様と何を話されたの!?それに、何故あんな親しく!親衛隊規範に違反してるわ!」
「「そうよそうよ!」」
「うるさいバカ!知らないわよ!」
取り乱す土端を見たのがこれが初めてです。私たちは大きな声で罵声を浴びせる土端に驚き怯んでしまいました。しかし、しかし!何かを聞き出さなければならない。
「悠馬様は何をおっしゃられたの?あなたはいつもいつも私たちの邪魔ばかりして。もしかして、あなた、悠馬様のこと好きなの!?」
私たちも怒りのままに質問してしまいました。よくない、わかっていたのにド直球に聞いてしまいました。すると土端はぴたりと動きを止めました。そしてじっと虚空を見ると、ぶわっと頬を赤らめました。
なんですか?その反応。
間も無くして土端は首を横に振り、地団駄を踏むと私たちを押しのけて走り出しました。
「待ちなさい!」
私たちは慌てて追いかけましたが、足の速い土端に追いつけることはなく、見失ってしまいました。
◇
「以上が報告です」
旅行を終えた親衛隊の2年生は、他の学年の親衛隊たちの前で発表し終えた。隊長である河山は、資料をパタリと閉じると2年生を睨みつけた。
「それで?」
「うっ」
「悠馬様はどうして魔女と話していたの?何を話していたかも、何故魔女が取り乱したかもわからないではありませんか」
「「すみません!」」
「まぁ、いいですわ。本人に聞いた方が早いですもの。ね、土端さん」
いつものようにタイマーを持って座っている土端に、河山はニヤリと笑いながら尋ねた。土端はというと、取り乱す様子もなくまっすぐ河山を見据えた。
「何が?」
「きぃ!わかっていらっしゃるでしょう!?悠馬様と何があったか話しなさい」
土端はタイマーを机に置くと親衛隊の面々を一陣し、そして小馬鹿にしたように笑った。
「話す必要があるかしら?」
「「は?」」
「あなたたちが思っているようなことは何もないわ。それに、そんなに気になるから風巻くん本人に聞いたらどうかしら?」
「っ……」
「私のこと恨んでばかりいないで自分たちで近づかないと、気づいてすらもらえないわよ」
ピピピピと調度良くタイマーが鳴った。親衛隊の面々は苦虫を噛み潰したように土端を睨みながら、部屋を片付け始めた。そしていつものように利用報告書を出すと皆おとなしく帰っていった。土端の言うことは間違っていない。皆何も言い返せなかった。




