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穢れた獣たち

 2日目の夜は札幌のシティホテルに泊まることになった。特に何かあるわけでもなく、それぞれ男女の部屋で休み、3日目の朝。班ごとに札幌と小樽を自由に行き来できる一日。

 風巻と土端、山本、成田、徳原も例外なく学校で決めてきた道順で散策していた。成田はどこか元気がなく、山本は変わらず徳原に目を輝かせてついて歩いている。徳原はというと、土端を見ながら時折、風巻を睨むときがある。山本は気づかず、風巻はその視線をものともせず、わざと土端に話しかけたりして牽制していた。


 昼食も終わり、一向は狸小路という商店街に入り、各々が好きな店を回っている。


「お、山本じゃん」


「あ!中山に隅田、なんだよぉ。お前達もここなの?」


 山本に話しかけてきたのは同じ野球部の面々だ。たまたま班行動が同じ場所になって楽しげに話し始めた。そして、お互いの班がお土産を買うためにさほどかっちりと班行動をしていないことに気づくと「部活の土産探してくる」と山本は離れていってしまった。


「土端さん」


「なに?」


「あの、その……」


「いいわ。どこのお店に行きたいの?」


 中山達と来たナツ達が目に入ると成田は小さく震え、土端の服を掴むと軽く引っ張って呼んだ。土端はすぐに成田の気持ちを汲み取ると、ナツ達を顧みず成田の手を掴むと、成田の行きたい店を聞いて早々にその場から離れた。

 残されたのは睨み合いをしていた風巻と徳原。2人は買い物をするつもりはなく、近くにあったベンチに腰を下ろした。離れて座ればいいものの、徳原は風巻の横に座り、店の中で何やら話している土端をじっと見つめている。


「本当に付き合ってるの?」


 徳原は風巻を見ることなく、ぽつりと呟き尋ねた。風巻はちらりと視線を向けるだけで、同じように見向きもせず、深くベンチに体を預けた。


「だったら何だよ」


「あの子が何なのか分かってて付き合ってるの?」


「は?」


「もし知らないで付き合ってるなら、やめておいた方がいい」


「……」


「分かってると思うけど、俺とキミって同じような生き物だろ?この世界ってさ、妙に澄んでて俺たちにとってとても生きづらい。そうでしょ?」


 風巻は答えなかった。行き交う人々と、時折聞こえる山本の嬉しそうな声、店の中で少しばかり笑みが溢れ始める成田、そしてちらりと土端と視線が合った。徳原はそれに気づかず更に話を続ける。


「……まあ、キミって出来損ないだから何も感じないのかもしれないけど。土端さんて、俺たちとは真逆の存在なんだよ。この世界がとても汚くて生きづらい。でも、それを澄んだものにすることで自分の生きやすい環境を作れる。もうわかるだろ?あの子といると、俺もキミも浄化されてしまうんじゃない?」


 徳原は言葉巧みに風巻と土端を引き離そうと話し続けた。思った以上にうまい具合に話せたことで自然と嫌な笑みを浮かべた。そして風巻にゆっくりと視線を向けた。おそらく驚き、自分を脅かすものだという事実に土端に嫌悪さえ覚えるかもしれない。だが、その期待とは裏腹に、風巻は表情を変えることなく黙って店の方に視線を向けている。

 徳原は苛立ちを覚えた。だが、張り付けた笑みを浮かべながら顔を覗き込んだ。


「聞いてる?」


「聞いてる」


「ね、聞いてたらわかるだろ?土端さんといても……」


「お前さ」


 苛立ちから自然と貧乏ゆすりをする徳原に、風巻はふと勝ち誇った笑みを浮かべながらようやく視線を向けた。その表情に徳原はギリっと奥歯を噛み締め、なんとか笑みをこしらえた。


「うぜぇよ」


 風巻は一言告げると、丁度店から出てきた土端と成田の元に向かった。それを追いかけるように土産をたくさん買った山本が風巻の背中にくっついた。

 徳原は今まで向けられたことのない屈辱的な応対に苛立ちを覚え、座ったまま俯いた。拳にぎゅっと力が入り、睨みを効かせながら背を向けている風巻を睨みつけた。


「出来損ないが、俺に。……みてろよ」


徳原はベンチを殴ると、皆の元には向かわず1人その場を後にした。土端は徳原がいなくなるのを見たが誰に伝えるわけでもなく、皆の話に戻った。



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