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二年目の学校祭

公演は難なく無事終えた。子供っぽいお話だと観客である生徒たちは始めこそ言っていた。だが、終わる頃には泣いているもの、スタンディングオベーションしているもの、など様々だった。


「おつかれー!」


今までほぼキレているところしか見せなかった佐藤は、あり得ないほどにこやかだ。次のクラスのために舞台上を空けなければならないため、片付けながら皆に声をかけて歩いている。山本は衣装をほどきながら風巻の元へ走ってきた。


「なあなあ、どうだった?俺。頑張ったよな!?」


「あ?あ、あぁ。よかったよ」


「っしゃー!風巻のおかげだよ。ほんと、ありがとーな」


山本はガッツポーズをすると、子犬のようにはしゃいでいる。その様子に周りの同級生も駆け寄ってきて山本の頭を撫でていた。

風巻はというと、リハーサルの日から土端とのこともあって複雑な心境だった。本番が終わったことで、今まで気を引き締めていた分、ぼうっとしているため山本にも簡単な返事しかできなかった。

土端は手伝う気などさらさらなく、舞台袖で壁に寄りかかりながら舞台上を眺めている。

ふと2人の視線が交わった。何を思ったか小さく笑う土端とは裏腹に、風巻はチッと舌打ちをすると、すぐに視線を逸らして片付けに戻った。







「じゃ、あとは楽しむのみね。ほんとーに皆お疲れ様でした!」


「「おつかれー!」」


佐藤の号令で皆散り散りになった。山本は他の仲間たちではなく、すぐに風巻の元へやってきた。


「風巻、一年の店、見に行こうぜ」


ニコニコ笑いながら話しかけてきた山本に風巻は優しく微笑むと、ポンポンと頭を撫でた。


「悪い、すこし土端と話したいことあるから、他の奴と行ってくれ」


「えー!?去年も一緒に歩けてねえのに?」


「すぐ行くから。な?」


ぷーっと頬を膨らませる山本に対して、風巻は苦笑まじりに言うと土端の元へ向かった。土端は話しかけてきた成田に応えようとしたところで、近づいてきた風巻に気づきそちらに視線を向けた。


「なに?」


「話がある」


「え?え?えー?もしかして付き合っ……ご!」


横に立っていた成田があらぬことで騒ぎ出したのを見て、土端は慣れた手つきで成田の口を手で塞いだ。わたわたしていた成田だったが土端に背を押されて引き離される。解放された成田はキャーキャー言いながら友達の元へ走っていった。

土端は「いいわよ」とだけ告げると、風巻と2人で体育館を後にした。








「黙ってちゃわからないわ。なに?」


2人はいつか座ったグラウンド横のベンチに座っている。座ろうと促したっきり、風巻は口を開くことはない。痺れを切らした土端が苛立ちながら尋ねると、風巻は土端に向き直り真っ直ぐ見つめた。その視線に、土端は怪訝そうに見つめ返した。


「なによ」


「平気なのか?」


「何の話?」


「その、こないだの……」


「あぁ」


「もう、ああいうことはしないでくれ。返せる借りじゃねえから、その……」


「返してもらおうなんて思ってないわ」


「そうじゃなくて。俺は……」


「やーーー!いたいた!こんなとこに2人でぼさっとしてんじゃねえよ!」


2人の前に突然、大人が3人やってきた。1人はパーカーの帽子を深く被り、下っ端感満載のおじさん。1人は薄茶色の長い髪を一本にまとめ、スーツを着たどこかの王子様みたいな男。そして話しかけてきた女。長髪の黒髪を束ねることなくおろしていて、黒のワンピースを着ている。

2人はきょとんと3人を見上げ、顔を見合わせた。どちらの知り合いでもないことがわかると風巻と土端はぷいっと大人3人から視線を逸らした。


「おいおーい。こんにちは!くらい言おうぜ」


「ふふっ、やめておきなよヘレン。彼らは思春期で色々あるんだから」


王子様みたいな方が女を諌めているが、どこか棘のある物言いに2人は眉間に皺を寄せた。


「だいま、あ、ヘレン様」


フードを被ったおじさんが女にヘコヘコしながら話しかけた。女は頷き、風巻の前に仁王立ちした。偉そうな態度の女に風巻はあからさまに機嫌を損ねたと言わんばかりに睨みを利かせてまっすぐ女を見据えた。


「なんですか」


「先にこれだけは言っておくぞ。お前、と、お前も。対処できないことをガキの頭だけで解決しようとするな」


女は風巻を指差し、すぐに土端も指差した。2人ともこのよくわからない状況と苛立ちから自然と機嫌が悪くなり睨みつける。女は怯むことなく指していた手を広げ風巻の額の前にかざした。


「魔力の取り方ぐらい覚えろ、馬鹿息子」


「は?」


口の悪さとは反対に女はどこか優しい笑みを浮かべた。風巻は女の言葉に思い当たる節があった。尋ね返そうと口を開いた瞬間、体の中に何かが勢いよく注がれるのを感じるとそのまま気を失ってしまった。倒れそうになるのをおじさんが後ろに周り支えると、どうしようかとキョロキョロしている。すると横に座っていた土端に風巻を渡した。土端は目の前で起こったこと、気を失った風巻を渡されたことに動揺している。


「は?え、何?」


「まあまあ、あとは任せたよ。君も自分を大切に」


王子様みたいな方の男はクスクス笑いながらそっと土端の頭を撫でて、3人はその場を後にした。土端はどうしたらいいかわからず、とりあえず風巻が呼吸をしていることだけ確認すると自分の膝に風巻の頭を乗せ、視線を向けた。


「ん?」


ここ最近ずっとモヤモヤとしていた何かがスッと風巻の周りから消えていた。




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