勧誘 side風巻
古びた一軒家の引き戸を開けた。
「ただいま」
「おかえりなさい!悠馬にいちゃん!」
「おかえりー!」
俺の家は普通とは違う。いわゆる、孤児院。世話係の大人が数人、交代制で家のことをやってくれる。未就学児から高校を卒業するまでの子どもが住んでいる。その年で人数は上下するが今この家には俺を含めて5人いる。
小さいのは4歳の双子、卓也と由美。系列の保育園に通っている。卓也は俺を兄として慕ってくれていていつも出迎えてくれる。卓也の後ろにくっついて由美も出迎えてくれた。
歳が近い中学2年の利麻。今ここにはいないので多分部屋にでもいるのだろう。
同じ部屋の小学6年生の正平はやんちゃでいつも世話係の大人に怒られている。リビングの方からテレビに向かってはしゃぐ声が聞こえるから多分そこにいるのだろう。
出迎えてくれた人がもう1人。世話係の田所さん。彼女は60代で家族はいないらしい。よく夕方から朝までの住み込みで家にいてくれる気のいいおばさんだ。
「悠馬くん、今日はどうだった?」
「……うーん。まあまあ」
田所さんはそれ以上深掘りをしようとせず優しく微笑んでくれた。田所さんには失礼だが、祖母がいたら多分こんな感じなのかな、と思ったりする。
「おつかれさま。夕飯はテーブルにあるから適当に食べて」
「ありがとうございます」
自室に行ってカバンを置き、制服を脱いで部屋着のスエットに着替えるとリビングに行った。子供らがテレビの前に座り、バラエティ番組を見ながらカラカラと笑っている。俺は用意されていた、野菜炒めと冷奴、ご飯と味噌汁を食べながらその様子を眺めていた。
「悠馬」
「ん?」
さっきまでいなかった利麻がリビングにやってきた。彼女は斜め向かいに座るとしばらく俺の顔を見ていた。
「なんかあったでしょ」
「なんだよ、突然」
「見たらわかる。なに?また厄介ごと?」
俺がここにきて数ヶ月もしないうちに利麻がやってきたので1番長い付き合い。利麻はあまり口数の多い方ではないが、俺と話す時だけハキハキしている。
俺が悩んでいることに気づいて、声をかけてくれたのだろう。根が優しいやつなのはよく知っている。
「厄介、て言うより。生徒会入ってくれって言われただけだ」
「厄介じゃん」
「ふふっ、まあ、そうだな」
「入るの?」
「うーん」
正直、やってみたい気持ちはあった。断念した部活動も、山本の姿を見ていれば素直に羨ましいと思っている。
ただ、生徒会というものも言わば部活動と同じだ。学校祭の時は緊急だったとはいえ、力を使ってしまった。また何もないとは限らない。
俺は人とは違うことが誰かにバレるのが、怖い。
黙り込んだ俺を見て利麻はしばらくテレビに視線を向けていたが、数分もしないうちに利麻が口を開いた。
「悠馬がやりたきゃ、やればいいんじゃない」
ぽつりと利麻は呟くと俺の顔を見ることなく自室に戻った。




