勧誘 side土端
「僕がなった暁にはキミを生徒会にと思って」
会ったこともないダサい男が、変な勧誘をしてきた。最近では私を恐れて話しかけてくる人はかなり減っていたから少し驚いた。周りの噂も知っている。私のことを「魔女」とか呼んで。魔女だって。
とにかくこんな男の話を聞くメリットは何もないので私は早々に階段を降りた。すると背後から聞きなれた名前が聞こえ、足を止めてしまった。
「待って待って!ね、ダメかな。風巻くんにも頼んだんだけど」
すぐに男は回り込んで私の前に立ちはだかった。
足が止まってしまった理由はわかっている。動揺したところを見られるわけにはいかないと思い、私はさらに睨みを効かせ凄んでみせた。
「私と風巻くんと何か関係あるんですか?」
「え?あ、……ごめん」
「では」
男は今までの勢いをすっかりなくしている。私は関わりたくなくて逃げるようにその場から離れるしかなかった。
靴を履き替え、迎えの車が来ている方角に自然と足速になる。
バレたくない気持ちがあった。それがたとえ知らない人であっても。
今まで1人で抱えていた誰にも言えない孤独を共有できそうだと思っていること。似たような境遇の風巻ともっと話してもっとわかってもらいたいと思う気持ちにうっすら気付いているからだ。
足が止まる。
顔を隠しその場にしゃがみ込んだ。
何よそれ。すごく恥ずかしいし、みっともない。
「百華様」
聞きなれた声。低く優しいその声に導かれるように顔を上げると、執事兼運転手の立花が片膝をつき私の方に白手袋をした手を差し伸べていた。
「大丈夫ですか?」
「何ともないわ」
その手を取ることなく立ち上がる。さっさと車の方へ歩き始めると、立花はそれ以上何も聞かず、後部座席のドアを開けた。私は何も言わず乗り込んだ。
車はゆっくり走り始める。立花はミラー越しにこちらをチラリと見たが、その後は見ることなく家へ走らせた。
鉄格子の門はナンバーを認識し、自動で開くと車を招き入れるシステムだ。少し遠くの家の前に着くと立花は降りて、私のドアを開けたので、私は何も言わず待っていたメイドにカバンを渡して家の中に入った。
「おかえりなさいませ、百華様」
メイドや執事たちが頭を下げる中、私は返事をすることなく足速に自室へと向かった。ドアを開け、カバンを受け取ると誰にも入らないように伝えて中に入り鍵を閉めた。扉に背を預けるとそのまま崩れるように座り込んだ。
「……生徒会、か」
自分の気持ちに少し素直になるのも悪くないのかもしれない。




