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 夏休みが終わり、二学期が始まった。

学生たちは再び冬服に変わり、学校の木々もほんのり色付いてきた頃。


「生徒会、ですか」


「そう、次期副会長を是非キミに任せたくて」


放課後、帰る支度を済ませて下駄箱で靴を履き替えていた風巻かざまきは一つ上の黒田義光くろだよしみつに話しかけられていた。

 黒田は漫画に出てきそうなザ・生徒会の風貌だ。分厚いメガネに、短く切り揃えられた黒髪、2年の証である青いバッチをつけている。周りからは少しばかり気持ち悪がられてしまいそうな出立ちだ。


 黒田の問いにきょとんとした風巻だったが、すぐに困ったように頭をかいた。


「すみません。俺、そういうの得意ではなくて」


「いいや!得意なはずだ。新入生の挨拶もとても素晴らしかった。悪漢あっかんも倒したんだろ?キミはいずれ人の上に立つ人間だよ」


鼻息を荒くして興奮する黒田とは裏腹に、風巻はつらつらと並べられた言葉にどう断ろうか口をつぐんでしまった。


 人の上に立つ、ということがどういうことかをわかっている。やろうと思えば簡単に人を支配できることも。


 風巻の悩みをかき消すように、黒田は期待の眼差しを向けキラキラと輝いていて、今この場で断ることも叶わなさそうだった。風巻は黒田を見ると軽く頭を下げた。


「考えておきます。少し時間をください」


「おお!いい返事待ってるよ!あのね、進学でも就職でも、生徒会に入ってて無駄なことは絶対ないからさ!ね!」


ぱぁっと黒田の表情が明るくなった。嬉しさから小さくぴょんと跳ね、手を振るとその場から走っていなくなった。









「まず、あなたは誰ですか」


「手厳しい!そうだよね。僕は黒田義光。2年3組で現生徒会副会長。でね、次の会長選挙立候補しようと思っていて。僕がなったあかつきにはキミを生徒会にと思って」


 次の日、黒田は帰ろうとする土端つちはしの元へかけて行った。土端は教室を出て階段を降りるところだった。

 風巻とは違いあからさまに不機嫌な様子で土端は黒田を見つめていた。だが黒田は恐れることもなく自分の言いたいことをまっすぐに伝える。案の定、土端の反応は薄くそれ以上聞くつもりはないため黒田を避けて階段を降り始めた。


「待って待って!ね、ダメかな。風巻くんにも頼んだんだけど」


ぴたりと土端の足が止まった。

 この話なら聞いてくれるのかと、黒田は階段を駆け降りて再び土端の前に立ちはだかった。だが予想は外れ、さらに機嫌を損ねた土端が睨みをきかせ、黒田を見た。


「私と風巻くんと何か関係あるんですか?」


今までにない冷たい目と言葉に黒田はたじろいだ。


「え?あ、……ごめん」


「では」


今までの勢いをすっかりなくした黒田を残して土端は階段を降りてその場から去っていった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 生徒会か~。 成る程、風巻くんと土端さんを一緒にする シチュエーションには持ってこいの舞台装置ですね。 しかし二人とも全然興味なさそう、さてどうなるやら!
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